遭遇

それはゴム製の車輪が四つの、手押しカートくらいの大きさのドローンだった。こいつも高性能な監視カメラを持ったやつで、それに地雷や爆発物を検知する金属探知機や対爆薬用のセンサーを備えている。銃弾やグレネードを持っているだけで見つかっちまう。


「さっきみたいに銃撃するか?」


いやいや、それはダメだ。空中のドローンは軽量化のため装甲はされていないから簡単に撃ち落とせた。だがこいつは装甲板で覆われた嫌味なドローンだ。対戦車ロケット弾かなんかじゃないと破壊できない。


そんなことを考えているうちに、ドローンは俺のそばまで来てしまっていた。


「よう、元気か、兄弟シ・イェ、ヴェラ


俺はカメラに向かってそう言ってやった。もう観念したよ。殺すなら殺せ。ドローンはカメラを近づけてきた。なにか不思議なものを見るように、それは細かく動いていた。


「なんだよ。言葉がわかんなかったか?悪いな、俺はド田舎出身で、仲間にも笑われるほどひどいなまりなんだ」



まあドローンがしゃべるはずはない。もうすぐロケットだかミサイルだかが飛んでくるだけだな。ああ、あと何分、いや何秒生きられるんだろう?


「あ、そうだ。死ぬ前に、おまえにいいもの見せてやるよ」


俺は上着のポケットから革の手帳を取り出した。ドローンは注意深くそれをカメラで追っている。


「ほら、こいつは俺の恋人だ。ミシェーレって言うんだぜ。同じ軍にいるんだ。通信兵ってやつをしてんだぜ。かわいいだろ?」


革の手帳にはさんだ写真をドローンのカメラに向けた。ちょっと恥ずかしかったが、でもいい女なので自慢もしたかった。仲間に見せると、すっごくうらやましそうな顔をいつもされた。


ドローンのカメラが頻繁に小さな音をたてている。写真と俺の顔を交互に見ているようだ。あいにく俺の顔は泥と煤で真っ黒だろうから、そんなに見たって意味ないんだがな。


だが驚くべきことが起こった。ドローンがその場でクルクルと回りだしたのだ。一体どういうことか、俺にはさっぱりわからなかった。

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