第14話 教頭の趣味
ルイス、セレスティア、マーナガルムは校長室に連れてこられた上、アリアも呼び出されてしまった。
「ごめんなさいアリア姉様……」
「いや、いいんだ。ルイスに制服を着せて学校を体験させようというのは私が発案したんだから。教頭先生、全ての責任は私にあります」
教頭、とアリアが言ったように、今ルイスたちの前にいるのは校長ではなく教頭であるらしい。
校長は気まぐれな人で、あまり学校に来てくれない。だから教頭が校長室の椅子に座って職務を代行しているんだとか。
ようは一番偉い人にサボり癖があるので、下の人にしわ寄せが来ているのだ。
「アリアくん。反省しているようだから、今回のことは厳重注意で済まそう。しかし次は停学も覚悟したまえ。それにしても、噂のルイス王子とお目にかかれるとは光栄だ。本気で入学するつもりなら、いつでも編入試験を受けてくれ。男性なのに、あの老師を倒すほどの魔力……しかも精霊剣とマーナガルムを従えている。実に興味深い」
教頭は三十歳ほどの理知的な女性だ。
気苦労が絶えなそうな厳格な雰囲気をまとっている。
「編入試験ってのを受けたら、すぐに通ってもいいんですか? 四月からとか、そういう区切りは?」
「ああ。我が校は、実力さえあれば、いつでも誰でも入学できる。飛び級だってできる。……学校の雰囲気を気に入ったのか、実力があるのに飛び級したがらない生徒ばかりだがね」
と、校長はアリアを睨んだ。しかしアリアは怯むことなく涼しい顔である。
「ドラゴンの幻影を倒せたのだから、実技試験は無用だろう。あとは簡単な筆記試験だけだな。早速、今からやるか? 普通はこんなに手続きを省略しないのだが、君の才能は得がたいものだからな。正直、逃したくない」
「お願いします!」
「元気でいい返事だ。ところで問題なのは制服だな……このフェイザリオン魔法学園は、女子校ではない。が、男子の入学を想定していなかった。ゆえにスカートタイプしかないのだ。それで我慢してくれるか?」
「別にいいですよ」
「そうか、助かるよ。美少年の女装……くく……目の保養だ。仕事の疲れが吹っ飛ぶ……この仕事続けてよかった……!」
教頭はニヤニヤ笑いながら呟いている。
アリアは満足そうに「うんうん」と頷く。
セレスティアは頬に手を当て「この学校はギルドと違って、ルイス様を正当に評価してくれるので好きです」と笑顔。
ルイスは誰かに喜んでもらうのが好きだ。
だからゲームでも、頼まれたら可能な範囲で協力プレイをしていた。
自分がスカートを履く程度のことでみんなが笑顔になるなら、お安いご用である。
マーナガルムだけは「男に女の恰好をさせて喜ぶなんて変わった趣味もあるのだなぁ」と不思議そうな顔をしていた。
そしてルイスは別室で筆記試験を受けた。
魔法理論の初歩の問題ばかりだったので、スラスラと解ける。
採点した教頭は「満点だ」と頭を撫でてくれた。
「ありがとうございます!」
「なんと屈託のない笑顔か……心が洗われる……こんな純真な少年に女装させる背徳感がたまらん……はあ、はあ……」
「教頭先生。あまり私の弟を性的な目で見ないでくれ。しかし言いたいことは分かる」
「不可抗力というやつですね。ルイス様が可愛らしすぎるので、まあ仕方ないでしょう」
そして次の日、ルイスは正式な生徒として登校した。
なにやら、王子が編入したとすでに噂が広まっていたらしく、すれ違う生徒が視線を向けてくる。
「ねえねえ、アリア様と一緒にいる子……あれがルイス王子ね。隣にいる修道女風の美人がセレスティア、黒いモフモフはきっとマーナガルムよ」
「え、あの可愛い子が王子なの!? よかったぁ……男子が編入したって聞いて、この学校辞めなきゃって悩んだけど、私好みの可愛い子……じゅるり」
「いや。いくら可愛くても王子だから男子だって」
「あ、そっか! 可愛すぎて脳が混乱する……」
ルイスが可愛いと言われると、なぜかセレスティアとアリアが誇らしげに鼻息を荒くした。
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