三
初恋だった、僕の幼馴染。
赤ちゃんのころから、僕たちは本物の兄妹のようにずっと一緒だったらしい。
何をするにも必ず二人セットで行動し、幼稚園も、小学校も、家に帰ってからも、ずっと二人だけで過ごしてきた。
ここまで時間をともにすると、もはや恋愛感情すら湧かなくなるんじゃないかと思うかもしれないが、少なくとも僕たちは違った。
中学校に入って、身長も伸び始めた僕は、りんごが重力のままに木から落ちるように、当たり前にその幼馴染に恋をした。初恋だった。
ただの幼馴染だった女の子を、徐々に異性として意識し始める感覚というのは、それまでの僕からは考えられないもので、初めは後ろめたさに苛まれ、僕は必死に本能に抗っていた。僕はひどく罪悪感を感じて、図らずも少し距離を置いてしまうこともあった。
しかし、そんな感覚も、お互いの気持ちが同じだということに薄々気づき始めたあたりから、心地のよいものに変わっていった。
なんとなく甘くて、むず痒くて、考えるだけで走り出したくなるような、そんな心地よい関係になる。
僕たちは、遠足に出かけた。
春は山にハイキングに出かけ、頂上の展望台で夜空を見上げた。
夏は一緒に花火大会に行った。あの子が口をつけたラムネを、ドキドキしながら一口もらった。
海にも行った。夏の照りつける太陽はあの子ととても相性が良くて、海の青に浮かぶ白い肌には、心を揺さぶられた。
秋はとくに何もなかった。互いの家に押しかけては、一日中レコードを聴きながら好きな曲について語り合う、なんてことをした。
冬は雪合戦をした。頬を赤らめながら白い息を吐くあの子は、抱きしめたくなるほどかわいらしくて、思わずいじわるもしてしまった。雪の冷たさも忘れるくらい、僕は無邪気なあの子に見惚れていた。
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