目の前に居るから

天西 照実

目の前に居るから


「同じ夢を見るの。始まりはいつも同じ。この歌から始まる。歌っている人は、毎回違うんだけど」



 正しいことは正しいままが真実だよね。

 気持ちを上手に表現できない事もあるけど、事実をもっているのは自分だけ。

 それが当たり前。誠意はどこかな。

 時間がたっても事実は変化しない。

 都合が悪くても過去は変化しない。

 口先が真実を作る世界なら、

 ポジティブにいくよ。さようなら。



 彼女はリズムに合わせるように、体を左右に揺らして見せる。


「こんな歌をうたってからね。マンションから飛び降りたり、電車に飛び込んだり。死んじゃうの。初めは全く知らない子たちでさ。でも、どこかで見たことある人になってきて、それは感覚的にわかるの。だんだん、身近な人になっていく。次はもっと近しい人になるのか、いつか自分の番が来るのか。すごく怖い夢なんだよ」



 そういって苦笑いを見せる彼女は、もう幽霊なんだ。


 幽霊は怖くない。悲しい存在なんだよ。

 世の中は、そんな悲しい存在を生み出し続けるんだね。

 世の中なんて人は居ないけどさ。


 さて僕は、なにが出来るだろう。



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目の前に居るから 天西 照実 @amanishi

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