乳揉みというは生きる事と見つけたり その1
気が付くと、律季はプールにいた。
「……あれ?」
前にもこんなことがあったような……。既知感を覚えながらあたりを見回す。
太陽が燦燦と照りつける、開放的な屋外レジャープールだった。親子連れ、カップル、友達グループが行き来し、賑やかな雰囲気に包まれている。律季もまた、シンプルな黒の水着を身に着け、ゴーグルを頭に巻いた浮かれた姿だ。あの時のプールとは似ても似つかない。
自分は今まで何をしていたのだろう? なぜこんな所にいるのだろう? そんな考えがよぎるが――
「――おーい! 水鏡くーん!」
「あっ、先輩!」
振り向いた瞬間、違和感は吹き飛んだ。
律季の『彼女』の天道炎夏が、ドリンクを載せたお盆を持って手を振っている。ビキニは健康的な魅力を引き立てるオレンジ色、結った黒髪が白いうなじを見せていた。満面の笑みに呼ばれるように、律季は小走りで駆け寄る。
――そうだ、炎夏とプールデートに来ていたのだ。こんな幸せな時に寝ぼけている暇などない。
「ごめんね、オレンジ売り切れてたから、私と同じピーチにしちゃった」
「いいですよ、むしろ先輩と同じもの飲める方が嬉しいです」
「そっか、ありがと」
手はつながなくとも、並んで歩くだけでも幸せを感じる。申し訳なさそうに眉が下を向いたり、ほっとして顔を上げたり、表情豊かな炎夏を見るだけでも、あらゆるストレスが消える心地だ。
『こんな可愛くて素敵な人が俺の彼女だなんて……!』と、付き合い始めてそれなりに経つのに、いまだにその事実を受け止めきれない気分だった。
「――チッ、羨ましい……!」
「なんであんなガキが……」
周囲の男たちから向けられる嫉妬の視線も、律季にとって優越感の呼び水となる。
炎夏の豊かな胸や尻は、歩くたびに「ぼいんっ♡ ぶるんっ♡ むっちぃ♡ たっぱん♡」と音を立てて弾む。おっぱい二つ、尻たぶ二つ、ふともも二つが小楽団となってパレードを奏でるのだ。ただ移動しているだけでも男にとって興奮材料になってしまうわがままボディを、身長も年齢も明らかに炎夏より下の律季が独占している事実は、他の男たちにとっては不条理としか思えないだろう。
「――でも俺は、『こっちの桃』の方が好きです」
「ひゃあっ!?」
思春期の健全な独占欲に突き動かされ、律季は炎夏のビキニショーツの中に指を滑り込ませた。
ビキニ爆乳が『ぷるんっ♡』と揺れて彼女の驚きを表現する。かわいらしい小さな悲鳴が上がり、盆の上で揺れたグラスの音が喧騒に消えた。
「うっひょぉぉぉ~~~っ♥♥ 先輩の水着尻~~~~っ♥」
「こ、こらぁ! ジュース落としちゃうでしょ! あ……んぅっ♡」
歓喜のあまり気色の悪い声を上げながら、律季は甘美で瑞々しい
すりすり♥ もぎもぎ♥ 白い肌に指紋をべったりとなすりつける『それ』は、まさしくマーキングだった。周囲の男たちに見せつける為、ことさらねちっこい動きで尻肉を堪能する律季。手首まで侵入した律季の手の形が、オレンジのパンツにくっきりと浮かび上がって、通行人に『何が行われているか』を誇示する。
「も、もう! 行くよ水鏡くん!」
「いたたたっ! ご、ごめんなさいぃぃ!」
衆人環視の中熱烈なセクハラをかましてきた凶悪犯の右手を、思い切りつねりあげながら、炎夏はつかつかと歩みを早める。慌ててついていく律季は、謝りながらもなんだか嬉しそうだ。
手に残った天上の感触と、背中に感じる殺意と敗北感のみなぎった視線。なるほど、これがリア充の見る景色か――。律季がしみじみと幸せを噛みしめている間も、炎夏の歩みは止まらない。ついていくうちに、二人の足はなぜか屋内シャワールームへと進んでいた。
「って、あれ? プールはあっちですよ……? トイレですか?」
「……君のおかげで、水遊びどころじゃなくなっちゃったのよ。いいからついてきて」
「ひょ、ひょっとして怒ってます?」
「いいから、早くっ!」
縮こまる律季の手を、妙にいきり立った炎夏がぐいぐいと引く。プール周辺の混雑エリアほど賑わってはいないが、やはり好奇の目で見られた。
個室で区切られたシャワーのうち、ひとつだけ空いている部屋に、炎夏は律季を連れ込む。清潔だが一人用なので二人だと当然狭い。すわ、お説教か、でも先輩に怒られるのもそれはそれで楽しいな……。軽く期待する律季をよそに、炎夏は扉を後ろ手に閉めた。荒い息遣いと濡れた眼差し、蒸し暑い環境が、たちまち淫靡な雰囲気を醸し出す。
「せ、先輩?」
「水鏡くん……筋肉、けっこうあるね」
炎夏との距離が極端に近く、部屋も薄暗い。もともと長身で身長差のある炎夏が、いつもより大きく見えた。前かがみになった炎夏が、おずおずと手を伸ばして律季の腹筋を『すりすり♡ なでなで♡』と弄ぶと、律季は彼女に体全体で包み込まれてしまいそうな圧迫感を覚えた。二つの爆乳が釣鐘のように垂れ下がり、普段より少しだけ縦長になっている。
「今日の水着、どう? かわいい?」
「め、めちゃめちゃかわいいですよ! 先輩の明るい感じに似合ってるし、まとめた髪型も新鮮ですごくいいです!」
「……そっか♡ 水鏡くんも、とってもかっこいいよ♡」
至近距離での甘いささやきに、律季は脳天をぶん殴られる衝撃を味わった。
まっすぐ見つめる炎夏の瞳は、瞳孔が開き、ピンクの『♡』の模様が浮かんでいた。密閉空間で、ビキニ爆乳はもちろんのこと、ぷるぷるの唇も息の温かさを感じる距離にある。一秒ごとに脳内でブチブチとニューロンがちぎれて、理性が侵食されていく感覚がした。
「さっきお尻揉まれたおかげで、完全にスイッチ入っちゃったわよ♡ 水遊びの前に、ちょっとだけスッキリしちゃおうか♡」
「は……はっ!? スッキリってまさか……しかも、こんなところで!?」
「何言ってんのよ、先にセクハラしてきたのは水鏡くんじゃない♡ 『ムラつかせた責任取れ』って、君がいっつも言ってる事でしょ?」
律季の上半身にくっきりと刻まれた日焼け跡の境目を、『つつつ……♡』となぞる。律季の水着のウエスト部分に指を入れ、『ぐぐぐっ……ぺちっ♡』と広げてから離す。
淫靡な表情を浮かべ、先刻のセクハラの意趣返しとばかりに挑発してくる炎夏。
「エッチでかわいい先輩彼女と、こっそりイチャイチャ……しよ♡ ――ちゅっ♡」
「――ッ!! こ、このおっ!!」
「わぁっ♡ だいた~ん♡」
至近距離投げキスが最後のとどめとなり、遂に歯止めが利かなくなった律季は、無理やり炎夏の体を180度回転させ、背中から羽交い絞めにする。
もちろん、腕が捕らえるのは首ではなく胸だ。オレンジのビキニに彩られた爆乳を乱暴にわしづかみにした律季が、荒い息づかいで炎夏の首筋を嗅ぐ。
「すーっ♥ ふーっ♥ そっちがその気なら、手加減しませんから……!」
「おっけー♡ でも、あんまりうるさくしないでね? 隣に聞こえたらバレちゃう……♡」
「こんなとこで誘っといて、どの口が……! 聞かせてやりゃいいんですよ! 先輩にエロい目向ける悪い奴らに、先約済みだって分からせてやるっ……!」
「うわ~、独占欲だ♡ 水鏡くんかっこ悪~~~~い♡ きゃ~~~~~♡」
「……!! うるさいっ!! これ以上かわいいこと言うなっ! もっと好きになっちゃうだろっ……!♥」
――ぐんにゅうううっ♡ ぎゅむうううっ♡ むにゅっ♡ もみもみもみっ♡
ますますいきり立った律季が、むさぼるような乳揉みを早めた。相手のことを気遣う余裕もなく、まさに欲望の赴くままといった手つきで、指を乳肉に突き立ててもみくちゃにする。両隣からは絶えずシャワーの音が聞こえていたが、今の二人にとっては情事のスパイスでしかなかった。
「は♡ んっ……♡ ふ……ぅ♡」
「ううっ、くそっ、喘ぎ声かわいいっ♥ もっと声上げさせてやりますからね……!!」
律季に見えているのは、紅潮した耳と、後頭部にまとめたうつくしい黒髪と、露出したうなじ。
乳揉み快楽に震え、結んだ唇から嬌声を漏らす炎夏の我慢を効かせなくするべく、律季は舌を首筋にゆっくりと近づけた。
「――れろっ、じゅ~~~~っ♥」
「っ! うそっ、舐めてるぅ……!?♡」
「べろべろべろべろっ♥ ――うっま♥ 先輩のうなじ
「あ゛っっっ♡♡♡ 激しいっ♡ おっぱいと一緒にしたらっ♡♡ う゛う゛っ♡♡ ダ、ダメ、ちょっと止めてっ♡♡♡♡ こ、こら、もうやばいから……っ!
あ゛っ、い――っ、くぅぅぅぅぅぅぅっ♡♡♡♡♡♡♡♡ ――はぁっ♡ はぁっ……♡ もう……♡」
容赦ない責めの末、とうとう炎夏はノックアウトされてしまう。両手で口を抑えてなお、喘ぎ声はシャワールーム中に響き渡った。
炎夏は、肩で息をしながら、憎々しげな視線を彼氏に投げる。達成感と欲情のあまり、律季は生唾を大きく飲み込んだ。
「すみません先輩、我慢できないです。このまま、一回だけ……」
「あ……ダ、ダメだよぉ……♡♡」
その言葉とは裏腹に、態度はしおらしく、声色は弱々しい。
『これはいける』そう確信した瞬間、律季の方もヒューズが切れた。密室で互いに発情状態、もはやなるようにしかならない。炎夏に覚悟を決めさせるように、ことさら遅い動きで、律季はブラジャーのヒモに手をかけた。
そして、不思議な現象が起こった。
「――あっ、あれ? びくともしない?」
「……も、もう、何してるのよぉ♡ せっかく覚悟決めたのに、まだいじわるするの……?♡」
見たところはただの布でできている炎夏の水着だが、律季がどれだけ力を加えても、微動だにする気配がない。
『ふ、ふぐぐぐ……!』胸当ての部分をむしりとろうと全身の力を込めるが、ビキニにはシワすらもつかなかった。
「ふざけんな、取れろ……! もたついてたら先輩の気が変わっちゃうじゃねぇか……!」
「きゃ~♡ 水鏡くんこわぁ~い♡♡ 乱暴しないでぇ~っ♡♡」
しかも、この奇妙な状況に対してなぜか炎夏は余裕ありげな態度である。
そう、まるでブラが取れないとわかった上で必死な律季の姿を楽しんでいるような……。律季はオーシャンビューならぬバストビューへ至るため、
「くそっ、早く生おっぱい見せろぉっ! こっちはもう限界なんだよっ!」
「――いいや、それは無理だ。律季」
「――!?」
律季の後ろから知らない女の声がした。
密室のはずのシャワールーム。いや、そもそもここにはもうひとり入れるスペースなどない。ただでさえ一人用の部屋に二人で入って、体中密着している状態なのだ。
――むんにゅううううううう~~~~っ♡♡♡
「んおっほぉ♥♥!? お、おっぱい!?」
「お前はまだ、こいつのおっぱいを一度揉んだだけに過ぎない。こいつのおっぱいがどんな形をしているかは未知のままだ。
――さらに次に進みたいのなら、もう起きなくちゃ。これ以上あいつを待たせるな」
まごうこと無きおっぱいの感触が律季の背中じゅうにつぶれて広がった。炎夏にも勝るとも劣らないサイズだった。
――誰だろう? 背後だから顔は見えないし、耳元でぽしょぽしょと心地よく囁く声にも聞き覚えが無い。ただひとつわかるのは、めちゃくちゃ可愛くてえっちな爆乳美少女であることだ。顔は見えずとも気配で分かる。
「う、ううううっ、気持ちいい……♥♥ でも、……そうだ、俺、まだ先輩とは彼女になれてねぇ。確か神瀬さんと朝霧さんと戦って、それで……じゃあ、これも夢ってことか? 『満月の夢』じゃなさそうだが」
「うん。だから今はここまでが限界なんだ、ごめんね」
背中に乳をこすりつけられながらも、律季は状況を理解した。その瞬間、さっきまであれだけ喘いでいた炎夏が、突然シラフに戻る。
ブラジャーを脱がせられないのは、『中身』を知らないから……。当然といえば当然の道理だ。むしろ、たった一回炎夏のおっぱいに触れただけで、プールデートからの更衣室イチャイチャまで妄想を膨らませるとは、我ながら大したものだった。
「でも、夢なら余計にここで終わらせるのもったいねぇなぁ。『プールの夢』には前にひどい目にあわされたばっかりだし……」
「ああ、まあ……お前ならそう言うよな」
しかし、いまだ律季は腑に落ちない。自分の経験に夢の内容が縛られるのであればなおのこと、背後にいるこの女性は異物だ。心理学には詳しくないが、もしかすると彼自身の理性かなにかが、彼好みの爆乳美少女の姿を取って語り掛けてきているのだろうか?
――そういえばこの少女、律季がよく知るあの人にどことなく気配が似ているような……?
「――だから、満足させてから
「次は現実で、俺たちとこれができるようになるんだぞ♡」
「「――はいっ♡♡ むにゅ~~~っ♡♡ ぱふぱふ♡ ぱふぱふ♡」」
「んん~~~~~っ♥♥♥♥♥!!??」
思考は全て光年のかなたへすっ飛んだ。
おっぱいとおっぱいでサンドイッチ。顔面に炎夏おっぱい、後頭部に謎の美少女おっぱいの、ハーレムビキニぱふぱふ攻撃。
しかもただこすりつけているだけではなく、二人が互いを互いに抱きしめ、その間に律季を挟んで圧迫している。頭蓋骨をきしませるデカパイバイオレンスに、律季の視界がみるみるバラ色に染まる。
「モガモガ……!! オゴ、ゴゴ……!!」
「おっしくらまんじゅっ♡ おっされて、なっくなっ♡」
「おしくらまんじゅう♡ おされてなくなっ♡」
「「デ カ パ イ ま ん じ ゅ う ♡ ♡
お さ れ て な く な っ ♡ ♡」」
炎夏の弾んだSっ気のある掛け声と、『もう一人』のおとなしめで母性のある掛け声。
軽快なメロディにのせて、律季の脳みそと三半規管が揺らされる.。起きるどころか、天国へ召されてしまいそうな恐怖感。どんどん落ちていく意識の中で律季は、ふつふつ欲望が沸き上がるのを感じていた。
(がああああっ!! ――つ、つかんだぞ、『おっぱいおしくらまんじゅう』!! 絶対に、絶対に現実でこれをやってやるからな……!!)
その決意を最後に、律季は夢の中から現実へと強制送還されたのだった。
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