第一章『乳揉技巧(ちちもみスキル)と四つの爆乳』
『附属物』律季と『教国』の使者 その1
おまけ:第一話ラストのボツシーン『十秒後にしばかれる律季』
NGの理由:第一話でやるには飛ばしすぎな上、律季が炎夏に殴られるオチにスムーズに移行できない。
「あ~~~、天道先輩のおっぱい、やっぱりでっけぇ……♥ やわらかぁ♥ 夢とはいえ最高に気持ちいい♥ 俺の想像力も捨てたもんじゃないんだな~♥」
「こ、こらぁ、水鏡くんっ! 違うよ、私は夢じゃなくて本物なの! だからそろそろ離れて……ちょ、ちょっと!? 何さらに顔うずめてるの!」
「あ~、そうそう♥ この優しく叱ってくれる感じだよなぁ、天道先輩は♥ ――あ~すっげ、顔いくらでも沈むっ……♥ 鼻全部包まれるっ……♥ 匂いもよすぎて頭おかしくなりそ……っ♥ すぅすぅ、はぁはぁっ……♥♥♥」
「ひゃあああ!? こ、このバカ、何匂い嗅いでんのよ!? 勢いとはいえいい加減……ひゃぁっ、ちょっとっ!? た、谷間舐めてっ……んぅっ♡ あぁぁっ♡」
◆
『満月の夢』から生還した翌朝。
なぜか天道炎夏の部屋で目を覚ました水鏡律季は、ベッドから降ろされ、絨毯の上で正座させられていた。左頬にビンタの痕があるのも含め、ついさっき夢の中で折檻された時の再現だった。
「――まず、ゆうべはありがとう。水鏡くんのおかげで助かったわ。君はまだ魔法使いに目覚めたばかりだから、魔法で私の部屋に侵入したわけじゃないのもわかる。でもそれはそれとして、パンツ見たことを謝ってください」
「申し訳ございませんでした。
「後半はいらない」
炎夏はベッドの上で、毛布をひざにかけてパンツを隠している。上はタンクトップを着ているのもの、寝巻きなので見られることを想定しておらず、ピンクのブラジャーのヒモがしっかり見えていた。律季は毛布の隙間からチラチラする太ももとブラヒモを、瞬き一つせず一緒に鑑賞しているが、それについてはもう止める気にもならない。
炎夏は夢の中で律季を幾度も救ったが、律季もまた『クリスタラー』に殺されかけて命の危機に陥ったせいか、土壇場で魔法の力を開花させて炎夏を救った。だからこうして二人で平和な朝に還れたのだ。いわば互いが互いの命の恩人なとなるため、それについて上下関係はなかった。
「とにかく、私は今から着替えをします。ブラもパンツも取り換えるので全裸にならないといけません」
「なんですって!? 是非見たいです!」
「……そう言うと思ったけど、私も家族に見つかったらびっくりされるから水鏡くんを部屋から出せないのよ。向こうを向いててくれるかしら」
「了解です」
いつもの元気のいい答え。律季は言葉通り壁の方を向いて沈黙した。
爆乳の前で腕をクロスさせて、タンクトップの裾をめくりあげる炎夏。寝巻きのためかなり緩いサイズなのだが、それでもおっぱいでつっかえた。
――ぐぐぐぐっ……ばっるぅぅん♡
「!!??」
持ち上げられたおっぱいの位置エネルギーが解放された瞬間、律季は自然界には存在しないはずの『おっぱいが弾む音』を確かに聞いた。
猫のように毛を逆立て、全身をはねさせる律季。己の真後ろ、わずか一、二メートルに、たった今天上の光景が広がったのだ。露骨に鼻息が荒くなったのが炎夏にも分かる。
「あの……先輩。これはこれで逆にやらしくないですか」
「み、水鏡くんがいやらしいだけよ」
手を後ろに回してブラのホックを外すと『ぷちっ……ぼよぉ~ん♡』と。パンツを脱ぐときは『しゅるしゅるしゅる……』と。
もとより窃視するつもりなどない。いつか炎夏の方から裸を見せてもらえる間柄になろう――そう考えるのが水鏡律季だ。しかし、この際は耳だけでも十分に炎夏の脱衣シーンを愉しむことができた。
「脱いだ奴だけでいいんで見せてくれませんか? どんだけデカブラなのか気になってしょうがないです……あ、もしくはかがせてくれるのでもいいですよ」
「絶対イヤです! まったく、どうしてそう次から次に変態的なアイデアが……あ、そうそう水鏡くん、そういえば後で
「――は? なんで文月先輩が?」
「言ってなかった?
「えー!? そ、そうなんですか!?」
「ふふっ……なんでショック受けてるのよ」
律季は黙ってしまうが、面白いほどに考えが分かりやすい彼の事だ。炎夏の秘密を自分だけのものにしたいという独占欲が見え見えだった。
「そ、それより先輩。約束忘れてないですよね? ――俺が敵倒したらおっぱい揉ませてくれるって!」
「ダメです」
「えー!?」
「だって、水鏡くんはあいつにとどめ刺してないでしょ? 第一、私はあの時返事しなかったから約束自体成立してないし」
「そ、そんなぁ……!?」
炎夏の声色は弾んでいた。律季のお願いをつっぱねるやりとりがお決まりになってきた節があって、それがなんだか楽しかった。
絶対に口には出さないが、律季の『おっぱい揉ませろ』攻撃と、それを拒否した時の彼の反応が、だんだん快感になってきていた。なにしろ、炎夏の命を救う報酬でさえ『それ』しか浮かばなかったのだ。一周回って純粋ではないだろうか。
「気を取り直して、今日も練習がんばってね。試合に勝ったらデートする方の約束は、私から言い出したんだしちゃんと守るからさ」
話している間に着替えは終わり、律季は姿勢を戻した。普段通りの制服に身を包んだ炎夏の姿を見て、律季はあの夢の中の冒険が終わったことを実感した。炎夏と二人きりで運命を共有したあの時間が、今になって名残惜しかった。
「うう……はい。わかりました。がんばります……」
すっかりしゅんとしながらも、拗ねずにそう宣言する律季。こっちは向いているが依然として正座のままだ。炎夏は彼の頭の上に、しょんぼりと下を向く犬の耳の幻覚を見た。
(え? ……意外だな。水鏡くんの性格からして、もうちょっと食い下がると思ったけど……)
そんな律季を見て、炎夏もなんだか冷静な気分になる。もちろん胸を揉ませろは無理な相談だが……しかし。
本当にこれでいいのか?
そんな懸念が芽生える。炎夏自身、それが不思議だった。だが一度よぎってしまった考えはもう止まらなかった。
(だって水鏡くんは夢の中で、私を助けるために必死で戦ってくれた。結果的になんとかなっただけで、もともとは魔法を使えなかったから、きっと自分が犠牲になる覚悟で……)
そして最終的には彼女一人ではどうにもならない敵を一緒に倒してくれた。いや、助けてくれたのはあの時だけではない。部活でもいつでも積極的な姿勢を示して空気をよくしてくれる、マネージャーとして頼りになる存在だった。
そうして部活で朝練と放課後練習をこなす裏で、さらに夜十時までバイト。自分に振り向いて欲しいからと、時間的にも金銭的にも余裕が無い中、内心必死で過密スケジュールに食らいついていたのだろう。もしかするとその熱意は寂しさから来ていたのかもしれない。なにせ彼は中学生の頃に両親を失って、祖父母の家も離れて一人暮らしだ。
大変な毎日を送る中、それでも律季は自分の前では明るい笑顔を絶やさなかった。……今は違う。
なにもかも炎夏のことが好きだから、必死で練習して、必死で戦って、必死で笑って。自分をそこまでひたむきに慕ってくれる後輩に、何もしてあげなくて良いのだろうか?
――きゅっ。炎夏は、胸の奥からそんな音が聞こえた気がした。
「ピーッ。水鏡くん、
「は、はいっ!?」
「――ぎゅーっ」
炎夏がおどけてそう号令すると、律季は染みついた癖で両手を腰にやり、直立不動になる。パジャマ姿のままの命の恩人を、炎夏は優しく抱きしめた。心の中の何かが彼女を駆り立てていた。
「……は……はぁっ!?」
「ごめんね、ちょっと冷たかったよね。でも、本当に感謝してるよ。私を助けてくれた時、すごくかっこよかった」
自分の肩ぐらいの高さに来た短髪の頭を、炎夏は軽く押し付けるようになでる。律季はあまりのことに大慌てだ。遠慮なく押し付けられる爆乳が、二人の胸の間で潰れる。圧倒的な感触が律季の思考を奪った。
炎夏は炎夏で内心はいっぱいいっぱいだ。恥ずかしい。緊張する。しかし、こうでもしなければ彼女の胸の疼きは止まらなかった。『優しいお姉さんでいてあげたい』と思った。
「い、いや……気を遣わなくてもいいんですよ!? 確かに約束は……」
「約束じゃないよ。私がしてあげたいだけだから、そんなものいらない。――こんなので命を助けたお礼になるなら、いくらでもしてあげるわよ。ほらほら、そんなこと言ってたらもっとむぎゅーってしちゃうぞ」
「あ、あわわわわ……♥!? お、おっぱい当たってますって……!!」
「わかってるわよ。『あててんのよ』っていうの、男の子は好きでしょ?」
「だ、大好きですぅ……♥!」
――『あててんのよ』か。
炎夏のほうもまた、右足のあたりに『熱い感触』が当たっているのを感じたがそこには触れない。性欲を直にぶつけられているのに慣れている分、率直な反応が可愛く感じるだけだった。
律季はバレないかと不安で足取りをなんとか調整しようとしたが、上半身を完全に固定しているためろくに動かない。何せ昨晩は、炎夏の言いつけを守って『処理』もせず早々に寝たものだから、いつもより大変なことになっている。下手に動いても不自然なだけだと結局何もできなかったが、炎夏には最初からモロバレであった。
「う゛う゛う゛っ、相変わらず匂いよすぎてっ……♥」
「私、いい匂いする? おっぱいしっかりくっつけてるから、心臓の動きわかるよ。本当にドキドキしてるんだね……」
「そ、それを言うなら先輩のも……!」
「うん。お互いこんなにうるさかったら、どっちがどっちかわかんないね」
「~~~~~っ♥! はぁ、はぁっ……♥♥!」
押しが強いが、押されると弱い。そんな律季の弱点がわかった。
――しかし、これ以上押すとどうなるかまでは分からない。律季の体がプルプルと震えだし、息遣いが荒くなって、炎夏の腕の中から見上げる目つきもどんどん据わってきている。
(先輩のハグ気持ちいいっ、幸せで何も考えられない……!)
(や、やばいかな? そろそろやめたほうがいいかな? あくまで私がしたいだけって言ったし……こっちのタイミングでやめたって構わないよね?)
「――せんぱいッ!」
「きゃっ!?」
おじけづく炎夏。しかし言い出すのが遅かった。
腰のまわりでうろうろしていただけの律季の手が、ばっと動いて炎夏の頭と肩を捕まえる。逃がさないためだ。全力で背伸びした律季の、歯を食いしばって睨みつける顔が、息のかかる近さにある。
「――ま、まってみかがみくん。や、やめよう? ね?」
力では負けないはずだが、炎夏は逃げられない。
このままではそれも昨日告白されたばかりの男に、それも二つも下の後輩にファーストキスを奪われてしまう。それは分かっているし、恐ろしくもあった。でもはらいのける気になれない。きっと律季も怖いのだから。
「もう、好きなの止まらないです。俺がせっかくあきらめようとしたのに、先輩が自分から……! も、もう知らないですよ!?」
「い、いや、まってよ――わたし、こんなのまだ……」
口ではそう言いながら、炎夏は無抵抗で目をつぶる。もう助からないことを悟ったのだ。他の男ならいざ知らず、助からないところを助けてくれた男の子だからこそ、彼女にはもう助かる道がなかった。百の魔物を恐れない天道炎夏といえど、うら若い乙女は
はじめてを奪われるのが恐ろしい。キスを許したらこの先どうなるのか。恐怖で唇がかさついていないだろうか。そして無情にも、律季の手が炎夏の頭を――
「――なにしてんの? お前ら……」
「「ぎゃあああぁぁああぁぁ!!!????」」
――インパクトまで実に2センチ。
ギリギリのところで踏みとどまった炎夏は、理解者たる文月螢視を迎え入れたのだった。
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