幼馴染(?)

 さぁ、長めの回想が終わったところで、現在に戻るとしよう。

俺は市立七王子高校に入学した。この高校にはとても厳しい校則一つだけがある。

それは「恋愛禁止」 共学の学校なのにもかかわらず、恋愛禁止なのである。

この恋愛禁止の校則は、俺がこの学校を選ぶ決め手となった理由の一つだ。

恋愛なんてするだけ無駄。時間の無駄なのである。


お花畑な妄想をしたって、結局は高校を卒業すれば忘れてしまう。

いつかは黒歴史になる思い出とも言えない無駄な行為なのだ。

俺が過去に犯した過ちの経験などが、そう語っていた。


しかし、七王子高校にはこんなに厳しい校則があるのに髪色等は自由だ。

いやいや、おかしいだろ。そう思った自分もいたが、髪色を金色にしたりピアスをしたりしている俺にとっては、絶好の高校だった。

決して進学校とは言い難いけど、ここならいざこざがなく過ごせそうだな。

なんて思ってこの学校に入学した。教室に入った瞬間クラスメイトたち全員にざわざわ騒がれてしまった。まぁいきなり教室に金髪、ピアスの目付きが悪い男が入ってくれば、困惑するのも当然だ。


机の上に自分の名前が書かれた付箋が貼ってあってので、その席につく。

隣の女子は、ちらっとこちらを一瞥して、少し離れた女子グループの方へ行ってしまった。引かれたのだろうか……

あの人何処かで見たことがあるような……そんな気もした。その子をずっと眺めてると、いつのまにか俺の机にいた男子が話しかけてきた。

髪色は俺と対象的な黒。制服のカーディガンに青色ネクタイと、制服をおしゃれに着こなしている。ザ・イケメンだった。

「やあ、ヤンキー君。あの子に興味があるのかい?」

「……何?」

俺は威圧的な感じで声を返す。これもイジメにあわないための対策だ。

これで友達がいなくなってしまうかもしれないけど、イジメられるよりかマシだ。

きっとこいつも、関わらないでおこう、と思うに違いな――

「ごめんごめん、驚かせちゃった? キミに敵意はないよ。」

と思っていたのだが……コイツはあまりにも優しい態度を取ってきた。

さわやかスマイルを俺なんかに向けながら喋っているのをみて、俺は少しだけ嫌悪感を覚える。どうせ誰にでもそうやって、モテようと必死なのか? ダサいな。

まぁこんなひねくれた考えをしてしまう自分にも嫌悪感を抱いてるんだけど。

「あんたは誰だ?」

「俺は、キミの同級生さ。」

「へー。そうかい。」

「これから1年間よろしく。」

無駄に抑揚のある声と、眉毛を上下させる絶妙に変な行為をして挨拶をする。

俺はその挨拶に答えなかった。悪いね。

高校の入学式では、校長の話が長かったり、ヤバい生徒がいたりということはなかった。ごく普通の入学式だった。2時間目は教材の配布や自己紹介などがあった。


「出席番号1番……2番……3番……」

はぁ……長い……

「出席番号7番、霜月尊!」

「はーい」

俺の名前が呼ばれた瞬間、隣にいた例の女子がとんでもなく驚いた表情でこっちを見てきた。俺の名前そんな変じゃないと思うんだけどなぁ、かっこいいと思うし。

なんなんだ?

「出席番号21番、御手洗華!」

「ハイ!」

威勢よく返事をしたのは、例の女子。みたらいはなというらしい……ん?

みたらい……はな……

御手洗……はな?

御手洗華!?

俺は驚いて御手洗華と呼ばれた女子を見る。

すると、あちらもこっちを見てきた。

御手洗華と呼ばれた……いや、顔をしっかりと見て確信した。

この女子は、御手洗華、小学4年生のとき以来の幼馴染だ。

華さんはすべてをわかったかのような顔をして俺を見てきた。

マジか……華さんには俺のこんな姿、できれば見てほしくなかったのだが……

これからの高校生活、どうなっちまうんだぁ!?




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