第15話 Kを殺すかもしれない②


 それにしても、くだらないイタズラを思いつくものだ。一体なにが面白いのか、僕にはまったく理解できない。これまでにも嫌がらせを受けてきたが、今回は明らかに度を越している。ただのイタズラだという言い訳は絶対に通らない。


 こんな目にあわされるのは二度とごめんである。Kの奴に思い知らせてやらねば、僕の気が済まない。かといって、担任教師に報告して、Kを締めあげてもらうことはできない。どうせKは、明確な証拠がないと主張して、言い逃れをするからである。


 僕は理路整然りろせいぜんと、Kから嫌がらせを受けていることを立証しなければならない。これは、かなり手間がかかる。おそらく担任教師から、僕の思い違いではないか、と追及されるからだ。学校側が事を荒立てることを嫌うことは、容易に想像がつく。


 そもそも担任教師を巻き込むことは、思春期の男子にとっては敷居が高い。Kだけでなく、クラスの全員からチクリ野郎と見なされる恐れがあるからだ。それは、僕のプライドが許さないので、どうしても避けたかった。


 ただ、このままでは、Kの嫌がらせがエスカレートする可能性がある。一体、どうすればいいのだろう? 例えば、Kの後頭部を金属バットで殴ることができれば気分爽快だと思うのだが、それをやってしまっては人生が終わってしまう。


 考えに考えた結果、Kとは関わり合いをもたないようにした。僕が怒ったり文句を言ったりするから、向こうは面白がって繰り返しイタズラを仕掛けてくるのだ。何をされても相手にせず、無視を決め込むことにした。


 Kの嫌がらせに腹を立てたり苛立ったりすること、答えの出ないことを考えたり悩んだりすることは、はっきり言って時間の無駄である。僕は自分の時間を守るため、Kが透明人間であるかのように、徹底的に無視した。


 その後にイタズラを受けた記憶がないから、おそらく効果があったのだろう。二年に進級すると、Kとは別のクラスになった。廊下やトイレで何度かKとすれちがうこともあったが、ずっと無視し続けた。それは卒業するまで変わらなかった。


 Kとの関わり合いがなくなっただけで、中学生活は明るく楽しいものに一変した。新たなクラスメイトから時々からかわれることはあっても、ひどい嫌がらせを受けることは皆無だ。


 当時は草野球に夢中だった。クラスでチームを結成して、中心人物として活躍していた。ポジションはファーストかキャッチャーで、打順は一番か五番だった。月に数回は近所のグラウンドを借りて、試合をしたりしていた。


 それがきっかけになり、あのKに復讐を果たすことになったのだから、人生は何が起こるかわからない。






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