思春期の殺意

第10話 恥ずかしい記憶


 ほとんどの人は、中学生になると大きく変わる。子供から大人になるための過渡期であり、精神的・肉体的に変化するからだ。いわゆる、思春期というやつである。


 中学生になると、小学生の時と比べて、クラスメイトの個性が際立っていた。どこの学校でもそうだろうが、クラスには自然と複数のグループができあがる。運動部グループ、勉強家グループ、不良グループ、落ちこぼれグループ、子供っぽいグループなどである。


 僕は部活に所属しない帰宅部だったし、成績の中の上という中途半端な位置づけだった。客観的にみても、影が薄かったし、没個性的だったと思う。目立つタイプでは決してなかった。目立つタイプではなかったし、モブキャラ扱いをされても文句は言えなかった。


 人見知りだったので、当然のように、人間関係は苦手だった。クラスで浮いた存在だと自覚していたので、舐められないように虚勢を張ることがあったし、何とか自分の居場所をつくろうと必死にあがいていた。


 正直言って、僕には恥ずかしい記憶しかない。毎日のように劣等感にさいなまれていたし、自己顕示欲と羞恥心の間でゆれうごいていたと思う。自分でも自分を持て余していた。普段は引っ込み思案のくせに、時々、行動力を発揮するのだ。捉えどころがなく、我ながら変な奴だった。


 普段は大手書店や図書館に入り浸り、コミックや文庫本を読みふけっていた。サスペンスドラマやホラー映画にのめりこんだのも、中学生から高校生にかけてである。客観的にみてもオタクだったと思う。少しばかり霊感があって幽霊を目撃したことがある、というのも、他人の目には中二病だと映ったことだろう。


 思い出しても、赤面の至りである。振り返りたくもないが、なりゆきなので仕方がない。しばらくすると、そんな僕にでも一緒に遊ぶ仲間ができた。コミックを貸し合ったり、草野球に興じたりもした。モブキャラの仲間が多かったが、次第に他のグループとも交流するようになった。


 集団で行動して、悪ふざけをするのは楽しかった。おかしなもので、文化祭や運動会などのイベントになると、自然な形で個性を発揮できるようになっていく。当時の僕は、〈サブカルチャーに詳しいオタク〉とか、〈ちょっと変わった奴〉という位置づけだったと思う。


 その流れで不気味なものを目撃しており、その一件は実話怪談として書き上げた。

 タイトルは『地獄からの呼び声』である。

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