第10話 祭り
研修をなんとか乗り越え、用意された晩御飯を食べ終えた俺と愛莉は祭りの会場へと向かっていた。
「さっき聞いたんだけど、やっぱり今日の祭り会場で浴衣のレンタルやってるらしいよ!」
「そっか、俺たちラッキーだな」
「うん!」
そうか。
浴衣のレンタルやっているのか。あまり浴衣を着たことがないから俺に似合うのかどうか不安になりそうだ。でも、愛莉が喜んでくれるなら俺は躊躇なく着るよ。
周りを見渡してみると、そこには俺たちと同じく祭り会場に向かったいるであろう人たちが多くいた。もちろん、カップルで来ている人たちもいるみたいだった。
「良い匂いがしてきたよ〜」
「本当だ。そろそろ祭り会場に着くかな」
宿泊施設を出てから10分も掛からないうちに祭り会場に辿り着いた。
祭り会場には、たくさんの屋台が並んでいた。
「愛莉、行きたいところある?」
「うーん、りんご飴食べたい」
「さっき晩御飯済ませたばっかりだけど大丈夫?」
「甘いものは別腹!」
「オーケー、それじゃりんご飴買おうか」
俺たちはりんご飴を販売している屋台に並んだ。
「りんご飴を1つください」
「はいよ、300円ね。おっと、もしかしてお2人さんはカップルかい? おまけでもう1つ付けとくよ。2人で仲良く食べな」
「あ、ありがとうございます」
屋台の人は俺たちを見てカップルだと思ったらしく、りんご飴を1つ無料でつけてくれた。
りんご飴を購入し、1つを愛理に渡すと目をキラキラと輝かせながらそれを受け取った。
「もしかして、りんご飴食べるの初めて?」
「うん! 前から食べてみたいとは思ってたけど、中々食べれる機会がなくて」
「そっか、それじゃ念願のりんご飴食べてみて」
愛莉はりんご飴を舐めたり、かじったりした。
「ん〜、あま〜い!」
「愛莉の好きな味だった?」
「うん、甘くて美味しい!」
「それは良かった。あ、それと、そろそろ浴衣のレンタルした方がいいんじゃない?」
「そうだった! 悠くん急いで行くよ!」
俺は愛莉に連れられ、浴衣をレンタルしている場所へと向かった。
浴衣をレンタルしている店の人に手伝ってもらいながら紺色の浴衣を着た。
俺はすぐに浴衣を着ることができたのだが、愛莉はもう少し時間が掛かるようだった。女の子の浴衣は着るだけでも大変だと聞いたことがある。
この待つだけの時間でも、愛莉がどのような浴衣を選んでどのような姿ででてくるのか考えるだけであっという間に時間は過ぎていく。100パーセント似合っているんだろうけど。
「お待たせ〜」
濃いピンク色の浴衣を着た愛莉が店から出てきたのを見た俺は見惚れてしまってその場から動けなくなってしまった。
この会場にいる誰よりも浴衣が似合っているのは愛莉だろう、俺はそう思った。
「悠くん、大丈夫?」
「愛莉、綺麗だ」
「へぇっ!?!?」
俺は無意識に思ったことをそのまま口に出してしまっていた。そのため、俺の一言を聞いた愛莉は顔を真っ赤にしていた。恥ずかしさからか耳まで真っ赤にしている。
「あ、ごめん、つい思ったことを口に出しちゃってた」
「てことは、今のは本音ってことだよね?」
「まあ、うん、そうだね」
「似合ってるってこと?」
「うん、この会場にいる誰よりも似合っているよ」
「それは言い過ぎだよ〜、悠くんも似合ってるよ」
「ありがとう」
別に言い過ぎじゃなくて、事実だと思うんだけどなぁ。俺の浴衣姿も愛莉に好評のようで良かった。
俺たちはその後、花火が始まるまでの間、色々な屋台を回って楽しむことにした。
りんご飴は食べたし、かと言って焼きそばとかは流石に食べれないし、どうしようかな。
そんなことを考えていると、近くに射的の店を出しているところがあった。
「あれ、やってみる?」
「うん!」
まずは愛莉が射的に挑戦する。
クマのぬいぐるみを狙っているみたいだけど、なかなか当たらない。当たったとしても、下の方に当たってしまうとそのクマのぬいぐるみは落ちず、景品獲得とはならない。
5発以内に落とさないといけないが、愛莉はすぐに5発を撃きってしまった。
「これ、難しすぎる〜」
「俺もやってみようかな。愛莉が欲しいのはあのぬいぐるみだよね?」
「うん」
俺はクマのぬいぐるみの頭に照準を合わせて撃つ。
すると、ぬいぐるみが少し後ろにズレる。その後もずっと頭を狙い続けて、最後の1発で――
「よっしゃ!」
「悠くん、凄い!」
「はい、これは愛莉にあげるよ」
「いいの?」
「うん、もちろん」
射的を終えると、会場内に5分後には花火を打ち上げるというアナウンスがされた。
愛莉にカッコいいところも見せれたし、花火を見に行こうかな。
「行こうか」
「うん!」
俺は愛莉と離れないように手を握って花火がよく見える位置に向かった。
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