第5話 2人の日常
「ん、うぅ……」
体の上に何やら重みを感じる。
まだ少し眠たい気もするが、2度寝をしてしまったら午後になってしまうので俺は起きることにした。
重い瞼を開くと、隣には俺に抱きついている愛莉の姿があった。
「……え!?」
一瞬理解が追い付かなかったが、状況が理解できてからすぐに起き上がろうとしたが抱きつかれているため起き上がることができない。
愛莉の肩を揺らして起こそうとした俺だったが、気持ちよさそうに寝ている愛莉の口から寝言が聞こえてくる。
「ん~、悠くん……」
夢に俺が出てきているのだろうか。なんだか嬉しい気分になる。
気持ちよさそうに寝ている愛莉を起こすのは少し申し訳ない気もするが、このままでは俺が起き上がれなくなってしまうので愛莉の肩をゆすりながら起こすことにした。
「愛莉、もう朝だよ。起きて」
「ん~、後5分だけ……」
全然起きようとしないな。
気持ちはわかる。2度寝が1番気持ち良いからな。
でも、今日はさすがに起きてもらわないと困る。抱きつかれたままじゃ俺の精神が大変なことになってしまう。
どうやって起こそうか考えた結果、俺は愛莉に悪戯を仕掛けることにした。まあ、この悪戯は自分にもダメージがくるんだけどな。
俺は自分の顔を愛莉に近づけ、耳元でイケボ風な声色で「愛莉、起きて」と、囁いてみた。
「ひゃいっ!?」
愛莉が驚きのあまり声が裏返ってしまっていた。
それでも起きてくれて本当に良かった。
「おはよう」
「悠くん、おはよう。って、私なんで悠くんに抱きついているの?! あれは夢の中だったはずなのに!」
「夢の中でも俺に抱きついてたの?」
「え、あ、うん。まさか現実でも抱きついているとは思ってなかったけどね、ははは……」
そこは普通なら本当のことであっても無理やり誤魔化すところだと思うが、愛莉はやっぱり正直だなぁ。誤魔化そうとせずに、言ってくれるのだから。
というか、夢の中でも俺に抱きついてたって。嬉しすぎるんだが。そもそも、どんな夢を見ていたらそんな状況になるんだ?
恐らく聞けば愛莉は心優しく答えてくれるだろうが、その答えが俺を照れさせるような感じな気がするため俺は夢の内容を聞くという行為には及ばなかった。
「それじゃ、愛莉も起きたことだし朝食にしようか」
「うん、そうだね。何食べる?」
「朝食だし軽い感じのもので良いんじゃない?」
「ベーコンエッグトーストとかどうかな?」
「お、いいね! それにしよう」
俺たち2人は眠たい目を擦りながら食卓へと向かった。
愛莉が作る晩御飯などは俺は手伝うことすらできないのだが、ベーコンエッグトーストなら俺も作ったことがあったので手伝うことにした。
何もかも任せっぱなしは良くないからな。
俺と愛莉はキッチンに2人で並んで立ち、それぞれの役割を決めてからベーコンエッグトーストを作り始めた。とは言っても、俺はベーコンを焼いてパンの上に載せるだけだが。
それより2人で並んで朝食作っている光景って新婚家庭みたいじゃない? ……って、何考えてるんだ俺。
そんなことを考えながらも俺は自分の役割をしっかりとやり遂げた。
ベーコンエッグトーストは、目玉焼きを乗せる派と、スクランブルエッグを乗せる派がいるが、愛莉はスクランブルエッグ派のようだった。
俺だってスクランブルエッグは作ったことあるけど、なにこれ。愛莉の作ったスクランブルエッグ、俺が作ったことあるやつと全然違う。
作り方は同じはずなのに作る人でこんなにも見た目が変わるのか。愛莉が作ったやつの方が食欲をそそる見た目をしていて美味しそうに見える。
「よし、できたね」
「うん! 食べようか」
「「いただきます」」
2人で作ったベーコンエッグトーストは完璧な仕上がりだった。まあ、大部分は愛莉の作ったスクランブルエッグのお陰と言えなくもないが。
俺と愛莉は朝食を食べ終わると、色々支度を始めた。
昨日の夜、実は愛莉からショッピングに行こうと誘われていたのだ。
今日は天気も快晴のようだし、ショッピングには完璧だろう。
俺たちは洗顔をし、歯を磨き、着ていく服に着替えて家を出る。
愛莉も楽しみにしてくれていたようで満面の笑顔を見せてくれる。
「それじゃあ、レッツゴー!」
こうして俺と愛莉は近くのショッピングモールへと足を運んだ。
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