第2話 また明日
「「ごちそうさまでした」」
愛莉の作る料理はハンバーグはもちろん、サラダまで美味しかった。サラダってここまで美味しく作れるものなのか。
「やっぱり愛莉の料理は全部美味しかったなぁ」
「本当? 喜んでもらえたみたいで良かった」
「うん。レストランのシェフが作ったのかと思ったよ」
「そんなことないよ~。でも、悠くんがそこまで言ってくれるってことは隠し味が入ってるからかな」
なるほど。
愛莉は今日の料理に隠し味に何か入れたんだな。料理が上手な人は隠し味を使うって言うからな。
「隠し味に何を入れたんだ?」
「それはね……愛情だよ」
愛莉は両手でハートを作りながらニコリと笑った。
予想外の答えに俺はドキッとした。
どうしよう、可愛すぎるんだけど。
これが胃袋を掴まれるってことなのか。
「どう? ドキッとした?」
「しないほうがおかしいと思う」
「えへへ。悠くんって、本当に正直に思ったこと言うよね」
愛莉がそれを言う?! と、心の中で1人でツッコミを入れた。
この空間の俺たちの会話は端から見たら完全にカップルだろう。だけど、こう見えて俺たちはまだ付き合っていない。
そのうち、俺から愛莉に気持ちを伝えようとは思っている。
良く愛莉の言動に照れたりしてしまっているからもしかすると既に俺の気持ちは本人にバレているかもしれないが。
晩御飯を食べ終え、外も暗くなってきていたので愛莉を家まで送ることにした。
「もう暗くなってるし、家まで送るよ」
「やーだ! ここに泊まる!」
愛莉が子供みたいに駄々をこねている姿につい「わかったよ」と言ってしまいそうになるが、着替えも持ってきてないだろうし、明日も学校があるしさすがに今日は帰そう。
本当は俺も泊ってほしいけど。
「さすがに今日は無理だよ。着替えも持ってきてないでしょ? それに明日も学校があるし」
「持ってきてないけどさ……」
愛莉が不満そうな目で俺のことを見つめている。どんなに見つめられても無理なものは無理だよ?
だけど、愛莉の今にも泣きそうな目を見た俺は、さすがにただ帰すのは気が引けたので、1つの提案をしてみることにした。
「じゃあ、金曜日なら次の日学校もないし泊りに来てもいいよ」
「本当に!? いいの?」
「お、おう」
愛莉は目をキラキラと輝かせた。
俺の家に泊まれるだけで喜んでくれると、こっちまで嬉しくなる。
金曜日も晩御飯を作ってくれるのだろうか? 今のうちからすでに楽しみだ。実際は愛莉よりも俺の方が喜んでいるのではないだろうか。
「学校終わった後に家に着替えを取りに行くのも面倒くさいから、学校に着替え持っていくね!」
「そうだね、その方が楽かもね。よし、それじゃ金曜日の予定も決まったことだし家まで送るよ」
「うんっ!」
俺の家から愛莉の家までの道は街灯が少ない。なので、愛莉には出来る限り俺から離れないようにしてもらおう。
「愛莉、夜道は暗いからできるだけ俺から離れないようにね」
「うん。じゃあ、こうするね」
「えっ!」
愛莉は俺の手を握ってきた。
少しくっ付いてくるとかならあるかもしれないと思っていたが、まさか手を握ってくるとは思わなかった。
自分の顔が熱くなっているのがわかる。もし、夜じゃなかったら愛莉に気づかれていたかもしれない。
手を握っているから俺の鼓動が早くなっていることには気づかれていないことを願おう。
愛莉の家に着くと、愛莉は俺の手を離した。
離すタイミングは間違っていないけど、なんだか寂しい気持ちになる。
明日もまた会えるというのに寂しくて仕方がない。
俺、愛莉のこと好きすぎだろ。
「じゃあまた明日」
「うん、また明日ね」
また明日……。
その言葉を聞けただけで少し心が落ち着いた気がする。そうだよ、明日も会えるんだよ。
元々そんなことわかっていたのだけれど、言葉にしてもらうだけでここまで安心感が違うんだな。
そんなことを考え、月明かりに照らされながら家路についた。
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