普段クールな隣の席の美少女が俺に対しての好感度だけが異常に高い。
夜兎ましろ
第1話 好感度が高すぎる
「僕と連絡先を交換してください! お願いします!」
「嫌です。あなたの連絡先を知ったところで私になんのメリットもないですから」
俺――
だが、こんな風景も彼女――
俺は知っている。
彼女は素直なだけなのだ。彼女は思ったことを何も隠すことなく、良くも悪くも正直にそのまま伝えてしまう。
そのため、先ほどのように相手の心に傷を負わせることもたまにある。
「愛莉、今日も人気者だな。相手の男子は心に怪我してたみたいだけどな」
「だって、私は悠くんと仲良ければそれでいいんだもん! 他の男子の連絡先なんていらないよ!」
「そ、そうか」
俺は少しドキッとしてしまった。
愛莉は腰まである長い黒髪と整った顔をしていて、この学校ではクールで美人の1年生として有名人なので、愛莉のことを噂を聞いただけだったり、見たことある程度の人たちは愛莉がこのような可愛らしい表情を見せてくれるとは思わないだろう。
自分で言うのも照れるのだが、こんな可愛らしい姿を見せてくれるのは俺と話している時だけなのだ。
俺以外の人と接するときはクールに振舞っている。
まあ、お付き合いしたくて近づいてきた人たちは全員、心に傷を負って帰っていくのだが。先ほどの男子生徒のように……。
*****
学校を終え、部活動をしていない俺は1人で帰路につこうとしていたのだが――
「ちょっと待って! どうして先に帰っちゃうかな~」
「愛莉か。特にすることもないし帰るのは普通じゃない?」
「そうじゃなくて、一緒に帰るんだから少しくらい待ってよ~」
あれ? 一緒に帰る約束なんてしてたっけ?
俺が困惑した表情をしていることに気が付くと、愛莉はぷくーっと頬を膨らませて俺のことを軽く叩いてくる。
「別に約束してなくても私は悠くんと一緒に帰りたいの!」
なるほど、そういうことだったのか。
怒りながら一緒に帰りたいと言う愛莉を見た俺はかわいいと思ってしまった。
「愛莉って本当に思ったこと正直に伝えてくるからこっちの方まで照れちゃうんだよな」
「え、照れてくれたの……?」
「照れてくれたってなんだよ。そんなこと言われたらどんなに鈍感な人でも照れるだろ」
「そ、そっか。そうだよね。ふふっ、嬉しいな」
嬉しそうにニコニコしている愛莉と一緒に俺は帰路についた。
俺の家の方が近づいてきたのでここで愛莉とは別れるのかと思っていたが、何故か俺の家の中まで愛莉は付いてきたのだった。
もし、この状況を他の男子生徒に見られたら俺は学校内で指名手配されてしまうのではないだろうか。
そんな冗談はさておき、愛莉に聞かなければ。
「なんで家の中まで付いてきているのかな?」
「なんでって、私が悠くんに晩御飯を作ってあげるからだけど?」
「え、マジ?」
俺は幼い頃に両親が離婚し父親のもとで育ったのだが、俺が高校に上がった今年、海外赴任していったため、現在は一人暮らしをしている。だから、俺は晩御飯をコンビニ弁当で済ましてしまうことが多いので正直に言うと愛莉が作ってくれるというのは嬉しい。
でも、迷惑じゃないだろうか?
「もしかして私の作る料理、嫌い?」
愛莉は上目づかいで目をうるうるさせながら俺のことを見つめてくる。
「嫌じゃないよ。むしろ嬉しいくらいだよ」
「それならよかった!」
「でも、迷惑じゃない? 愛莉の負担になってない?」
「そんなわけないじゃん! 私が悠くんのために作って一緒に食べたいから作るだけだから、気にしないでいいんだよ」
「そっか、ありがとう」
「うんっ!」
愛莉の花が咲いたような満面の笑みをみると、本当に好きでやろうとしてくれていることがわかってホッとした。
愛莉は手洗いうがいを忘れずにして、キッチンへと向かっていった。
「俺も何か手伝おうか?」
「大丈夫だよ、悠くんはリビングでテレビでも見ながら待ってて」
「そうか、わかった」
手伝うつもりだったのだが、愛莉が1人で作ってくれるようなので俺は言われた通りリビングでテレビを見ながら休むことにした。
普段料理をしない俺が手伝おうとしたところで邪魔にしかならない可能性もあるから結果的に良かったのかもしれない。
10分ほどテレビを見た俺はキッチンの方に視線を向ける。
「(今の私って、新婚の妻みたいじゃない?!)」
本人は小声で言っているつもりのようだが、とんでもない一言が俺の耳に入ってきてしまった。
「できたよ~」
「お、おう」
愛莉の先ほどの一言を聞いてしまったせいで、食卓に料理を並べる愛莉を見て「結婚したらこんな感じになるのかな」なんて考えてしまった。
俺は愛莉のことを少し意識してしまいながらも食卓につき、俺の好物のハンバーグや栄養が偏らないように出されたサラダを見て、愛莉は本当に良く分かっているなと感心した。
好物が目の前にあるせいで俺は目をキラキラと輝かせていた。
「悠くんも早く食べたいみたいだし、食べようか」
「うん」
俺と愛莉は両手を合わせる。
「「いただきます」」
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