第14話 思春期Ⅴ



うちは貧乏だから私立の高校にはいけない。

都立一本で落ちたら働けと言われていた。

先生には工業高校しか行けないと言われていた。

週1回だけ塾に通わせてくれることになった。

同じ学校の子がいたらイヤだったからわざわざ隣駅の塾に通った。

私を担当してくれたのは大学生の鈴木先生。

好きになるのに時間はかからなかった。

だからと言って恋が実ったりはしなかったけど

受験生の私にとって合格して鈴木先生に報告したいという気持ちで

頑張れた気がする。


何かあったら電話してきていいよと連絡先をくれたけど

まだ携帯を持っていなかった私は連絡することはなかった。

怒ったふりをして残れと言われて残っていたら

みんなを帰らせた後、お喋りをして楽しい時間を作ってくれたり。

一緒に学校見学にも行ってくれた。

塾がない日に待ち合わせをして一緒に電車乗ってるのが特別な気がして

嬉しかった。



結局私は無理して普通科の学校に受験した。

無くなってしまう学校だったから同じ中学校から行く人がいないだろうと

思ったのとギャルが多くて校則が厳しくなさそうだったから。

そして無事合格し、やっと小さな世界から解放されると思った。

合格したから携帯も買ってもらった。


本当はすぐにでも髪を染めて化粧もしたいけど

目をつけられたらいやだったから入学式に行って周りを見てから決めようと我慢した。

高校生活が始まったら、知ってる人も少ないし住んでるところも

近い人ばかりじゃないから気持ちが楽で。

貧乏な家を見られることもない中学生までの私の情報を知ってる人はほぼいない。

1人だけ男子で同じ高校に受かった人がいるけど関わりなかったから問題ない。

本当に本当に楽しみだった。






そして今でも思う。

出会ってくれてありがとう。私を私にしてくれてありがとう。

そんな出来事がたくさんあった。

まぎれもなく私の青春時代だった。





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