第2話転校生身バレ

「篠田マロンと言います。最近まで海外で過ごしていたので少しだけ世間知らずなところもあると思いますがよろしくお願いします」

壇上で挨拶をする美少女転校生を目にして僕の心は少しだけ踊っていた。

「じゃあ篠田さんは若菜の隣の席にお願いします」

「若菜…?」

篠田マロンは少しだけ奥歯に物が引っ掛かっているような感じで口を開いた。

僕は何処か思案気にも思えたその表情を確認していた。

篠田マロンが隣の席に腰掛けると僕の全身を見つめるようにして口を開いた。

「あなたが若菜さん?」

「はい。よろしくお願いします」

挨拶を交わして会釈をするが彼女はまだ奇妙なものを見つめるような視線を送ってくる。

「失礼ですけど…夏休み中ずっと筋トレしていました?」

「あ…えっと…わかります?今までは結構太っていたんですよ」

「もしかして…この若菜さんと同一人物ですか?」

篠田マロンはスマホの画面を僕に見せてくる。

そこには僕とネット上の友人だけしか見られないトーク画面が表示されている。

「え…まさか…ですよね?」

「そのまさかです!あの時のMです…!こんな偶然あるんですね!」

「ははは…何か笑えてきました。初めまして若菜涼わかなりょうです。改めてよろしくお願いします」

「こちらこそ。後で沢山お話しましょうっ♡」

「はい。よろこんで」

そうして朝のHRが終わるまで僕の心はドキドキと異常に高鳴っているのであった。

隣に座る篠田マロンにそれを悟られないようにしながら…。



「それで?若菜さんをこっ酷く振ったのってどの娘ですか?」

「えっと…違うクラスなんだけど…」

「ですか…」

そんな会話のやり取りをしていると噂を聞きつけたであろうミカが教室に顔を出した。

「え…!?マジ?あれが若菜なの?」

ミカは女子グループと雑談しているようで僕の話が持ち上がったようだった。

「ちょっと話してくる」

ミカは僕の方へと歩いてきて唐突に口を開いた。

「ちょっとはマシになったじゃない」

何故か高飛車な言葉を投げかけられて僕は苦笑する。

「そう?ありがとう」

「今の若菜なら付き合っても良いよ」

どこまでも上から目線のミカに現在の僕は魅力を感じていなかった。

それは篠田マロンの存在が大きいと思われた。

ネット上で友人となり僕に優しくアドバイスをくれた。

そして今ではリアルでも同じ高校に通うことが出来ている。

僕はミカよりもマロンと仲良くなりたいと心が感じている。

それが理解できたので僕は首を左右に振った。

「ミカちゃんのお陰で筋トレに励めたよ。ありがとうね。でも見た目でしか判断されていない気がして。もう良いかなって思うんだ。僕も自分勝手でごめんね」

「は…?自分から告ってきたくせに…」

「それを振ったのはミカちゃんでしょ?僕は次に進むよ」

「もう知らない!」

ミカはそんな言葉を口にするとプライドが傷つけられたようで顔を赤くして教室を抜けていくのであった。



「良かったんですか?付き合えたのに…付き合いたかったんじゃないんですか?」

マロンは僕を心配するように問いかけてくる。

「良いんだよ。つらい時期を支えてくれたのは…いいや。何でも無い」

「ですか。実は私も夏休みの間ダイエットしていたんです。若菜さんに勇気をもらっていました」

「そっか。じゃあお互い様だね」

「ですね」

僕とマロンは少しずつ心の距離を縮めていく。

まだ物語は始まったばかりなのである。

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