MOUMO

 さて、不満の多いTAROSだが、やはり乗り換えることにした。二年目に右サイドを、三年目に左サイドを大きくこすったのだ。何故かというと、私的には、TAROSでついたカメラ認識による動作の危険回避機能によって、私が野生の感を鈍らされたからである。

 説明しよう。「後方検知しました!」と不必要な範囲で騒がれると、だんだん馬鹿になるのだ。後方検知しても、まだいけるというか進まなければならない領域があるので、調整して、もう少し奥に進む。そして、このカメラによる認識は実は、前後だけなのだ。よって、横に何かがあっても何も言わない。

 その結果、二年目に右サイドを破損、30万円、三年目の左サイドの破損、ほぼ同等の金額だ。二回続くとさすがにこれは普通の自損ではない。

盛剰さん

「そりゃ、カメラは前後しかついてないですしね。」

 しかし、これは、単なる技術者都合の言い訳をそのまましているだけである。私にとって、この危険回避機能はオオカミ少年にしかなっていない。しかも、本当に必要な時は無言なのだ。中途半端すぎる機能である。

盛剰さん

「じゃあ、機能、止めましょうか。」

 切れるのかよ。最初から、文句言っていただろうがよ。


「いや、いいわ。乗り換える。これ、ローンだしね。それで、次の車で、その機能を止めてくれ。そのほうが、事前に絶対小さい事故で済む。前後を少々こするくらいでな。」

 私は母が何故、今まで短期間で車を何台も乗り換えたか、その時分かった。こういうことか。サービスがいいのではなくて、むしろ悪いからだ。


 本当は、私だけであれば、多分軽トラック一台あったらそれで充分なのだろうが、全盲の母を軽トラの助手席に乗せるのは難しい。仕方がないので、もう少し、父酔他の車に乗ることになる。

「あ、MOUMOはローンじゃなくて、即金で払いたい。」

盛剰さん

「いや、それはその」

ごにょごにょと歯切れが悪い。

「ああ、もしかして、携帯の端末の乗り換えみたいな感じ?」

盛剰さん、表情が明るくなる。

「そうです、そうです。今回のようなケースも多いですし。」

多いのかよ。今回のようなケース=途中で車に不満を持って手放すということですが。

 そこで、最初の数年微々たる金額で最後に大きくなる金額のローンを組むことにした。昔あった怪しい布団屋のセールスを思い出す。どうしても、ローンを組ませたいやつ。途中の旨味とかがあるのだろう。私に金銭的な被害がないことだけ、とりあえず確かめた。

 さて、前回同様に、車の仕様決定並びに金額選定は盛剰さんがタブレット画面に出ているメニューを読み上げて、どういうものか説明し、選択肢の中から決定していった。この時、洗浄のシャンプーと撥水材に関する項目がないかと、虎視眈々と聞いていたのだが、一向に出てこなかった。最初からの基本項目のようだ。


 1月納車ということで、もし前回と同じように、次のが来たら、今度はハーバリウムと革鞄については、その場でぶった切ってやると待ち構えていた。

 が、納車自体の見通しが立たなくなってしまった。盛剰さんはこんなときだけ電話が早い。


 TAROSがまだ乗れる状態だからいいものの。サービスの方向間違っていたら、顧客は離れるけどね。その日、どのチャネルも同じ会見をニュースで流しているテレビを見ながら、私は思った。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KU。RU。MA。 若阿夢 @nyaam

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ