右手の親指どんと左手の親指どん

あるところに、右手の親指どんと左手の親指どんがおりました。


ある日、右手の親指どんはいいました。


「おい、左手の親指どん、どうだい今日はいっちょ力比べをやってみないか?」


左手の親指どんは答えました。


「いいともよ、右手の親指どん。」


右手の親指どんは、軽がると重い荷物を運びます。


「ほらほら、左手の親指どんみておくれ。わしは赤いレンガを三つも持つことが出来るぞ」


左手の親指どんはいいました。


「うーむ、うーーーむ。こりゃ重いのぅ。わしゃ一つしか運べないぞ。」


それを見た右手の親指どんは大満足しました。


「やっぱり、力比べなら、わしのほうが上じゃのぅ」


次の日、左手の親指どんがいいました。


「おい、右手の親指どん、どうだい今日はどっちが上手に絵を書けるか試してみないか?」


右手の親指どんは答えました。


「いいともよ、左手の親指どん」


二人はテーブルの上の花瓶のお花の絵を描く事にしました。

左手の親指どんはスラスラスイスイ上手に花の絵を描いていきます。


「ほらほら、右手の親指どんみておくれ。わしの描く花はまるで本物みたいじゃ」


右手の親指どんはいいました。


「うーむ、うーーーむ。こりゃ難しい!わしは一体何の絵か分からなくなってしまったぞ」


それを見た左手の親指どんは大満足しました。


「やっぱり、絵のうまさなら、わしのほうが上じゃのぅ」


そしてまた次の日、二人は話し合いをしました。


「右手の親指どん、わしは思うんだが、二人で家を作ってみないか?」

「左手の親指どん、わしも家を一緒に作ってみたいと思っておったよ」


左手の親指どんは朝顔のようににっこりして言いました。


「これは名案だ!」


右手の親指どんもひまわりのようににっこりして言いました。


「きっと名案だ!」


 二人は早速家作りに取り掛かりました。

 まず、左手の親指どんは、大きな画用紙に素敵な家の絵を描きました。


「右手の親指どん。わしはこんな家がいいとおもうんだがね」


右手の親指どんはうんうんうなずくといいました。


「左手の親指どんはとってもじょうずだのぅ。わしゃこの家の絵はとってもいいと思うよ」


右手の親指どんは左手の親指どんが描いた絵を持つと林に行って木を切り始めました。この木で家を作るのです。


「よいしょ、よいしょ」


 右手の親指どんはどんどん木を切って運びます。

 それを見た左手の親指どんはいいました。


「さすが右手の親指どんは力持ちだのぅ。わしゃこんなによう運ばんよ」


 右手の親指どんが運んできた木を、こんどは左手の親指どんが余計な枝を取り、カンナをかけてきれいな柱にします。

 そうして出来上がった柱を右手の親指どんが、地面にうちつけ家を組み立てていきます。

 左手の親指どんは、窓をつけたり、扉をつけたり、どろぼうが入らないようにカギもきちんと取り付けました。


 ふたりは幾日か頑張って、素敵な家がとうとう完成しました。


「やあやあ!これは本当にすばらしい家ができたよ!」

「やあやあ!これは本当にすばらしい家ができたね!」


 そのとき、雲の上からあたたかい光が二人の上に降り注ぎました。どこからともなく、やさしい声が聞こえてきました。


「ふたりとも、よくがんばったわね。ひとりではできないことも、一緒に頑張れば最後までできるのよ。みんな得意な事はちがうの。力が強い人、絵が上手な人。みんなで得意な事を出し合って 力をあわせれば何だってできるわ。これからも仲良くね」


 二人はなんだかうれしくて泣きそうになりました。


 右手の親指どんはいいました。


「左手の親指どん、これからも仲良くしておくれ」


 左手の親指どんはいいました。


「右手の親指どん、これからも仲良くしておくれ」


二人はお互いうんうんうなずきあい、

今までよりも仲良く楽しく暮らしましたとさ。


= おしまい =

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