三節:『御大地守』の罪

罪なる初恋(1)

 都立巡逢めぐりあい高等学園。


 親の都合により、僕はここへ転校することになった。


 何やら急に転勤が決まったとからしい。まったく、タイミングが悪い。わざわざ入学式が終わったタイミングで転校するなんて。


 まあ、もう起きてしまったことに文句を言ってもしかたない。


 僕はただ、平穏に学園生活を続けていければ、それでいい。


 ――最初は、そう思っていたけれど。


(……嘘だろ)


 僕は見てしまったのだ――彼女の姿を。


 見間違えやしない。僕は何十回、何百回と想い、見つめてきたのだ。そんな彼女を、僕は見間違うはずがない。


(まさか、同じ学園だなんて)


 彼女――円樹円つぶらき まどかと。




 ◇




 僕の初恋は、写真の中に映る女の子だった。


 こんなことを話すと、みな僕のことを気持ち悪いなどとネガティブな感情を向けるだろうから、誰にも打ち明けたことはない。


 その女の子は目が大きくて、笑顔が素敵で、腰まであるブロンドヘアーが特徴的だったが、それがとても美しかった。


 とにかく、そのきれいな女の子に、僕はひと目で惚れてしまったのだ。


 本を借りようとやってきた父の部屋で、たまたま見つけてしまったその写真を僕はこっそり持ち出してから、当時まだ小学生五年生だった僕は毎日その写真の女の子を眺めていた。


(この子は誰なんだろう?)


 僕は父と二人暮らしで、母はいない。僕がまだ物心つく前に、離婚したそうだ。


 この女の子のことを僕は知らないし、父はなぜこの子の写真を持っていたのだろうと、ずっと疑問に思っていた。


 父は仕事が忙しく、なかなかそれを聞き出せないでいたが……ある日、久しぶりに父と家族団欒していたときに、僕は例の写真について聞き出してみたのだ。


「お父さん、この写真なんだけど……この子、だあれ?」


 あの日見せた父の顔は、今でも鮮明に思い出せる。


 息を飲み、焦りに満ちた表情を。


 父はしばらく悩んでいたが、最終的には教えてくれた――。




 ◇




 神様の悪いイタズラだとしか思えない。

 転校した先で、彼女がいるだなんて。


 円樹円――僕の『姉』が、いるなんて。

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