第2話 錬金術

「――――とりあえず僕の家はこんな感じです。見ての通り転生ガチャ大当たりのボンボンってやつですね」


 無事感動かつドゥラァマティィックな再会を果たした僕達は、魔王様に僕の住む屋敷を案内していた。


 自分で大当たりと言って差し支えない豪邸屋敷。日本を代表する大財閥の七条家本家は、東京ドームが5つは入る敷地と、プールやテニスコートといった金持ち定番のアイテムを兼ね備えた豪邸だ。


 そしてこの敷地の中心に建つ馬鹿みたいに大きな邸宅――ではなく、そこから少し離れた僕個人の邸宅の客室、そのふわふわ高級ソファーに僕達は並んで座っていた。


「腹心――いや、司。なんというか……お前しゅごいな……」

「ありがとナス! まあ僕自身が凄いんじゃないんですけどね。マオマオのお家はどんな感じなんですか?」

「ま、マオマオ……?」


 マオマオの顔が驚きからジト目に変わっていく。だけどそれに構わず、それを分かった上で敢えてスルーすることにした。


「マオマオは平凡な家に転生したって言ってましたけど、スマホは最新だったし着ている服や小物もブランド物。髪の毛の手入れもバッチリだし、香りからしてシャンプーとトリートメントはシャネルですよね? おまけにうんちスコップもカーボン製の高そうな物だったし、あまり平凡な家とは思えませんけど」

「…………え、なにそれこわい」


 マオマオの顔が引き攣っている。嬉しい。


「それで? 僕が学んだ平均的な庶民の少女とは少し乖離した身だしなみをされてる理由を教えてもらっても? まさかとは思いますが、その愛らしく美しい容姿とお身体を下賎な者達に触らせたとか? もしやそれだけじゃなくそれ以上のことを……」


「こわいこわい落ち着け司。いや落ち着いてください。私はそんなことしていないしする気もない。これらの経緯は言いたくないが、別にやましいことをして手に入れたわけじゃない」


 その言葉に安堵の息が漏れる。もしそうだったら七条家の総力を使い、マオマオに手を出した人間を全て社会的・物理的に滅ぼすところだった。


「ほっ……それは良かった。詳しくは聞きませんが、今後欲しい物があれば全て僕が用意します。あ、なんならこの敷地にマオマオ専用の別荘でも建てさせましょうか?」

「なにお前ほんとこわい」

「それと話は少しだけ変わりますが、マオマオの美しい髪の毛を3本ほど僕にくださいませんか?」

「少しどころかまったく別次元で心から恐怖を感じる提案に私は泣きそうだ。もちろん断るが、念の為に使い道を聞いてもいいか?」


 残念極まりない。いや、だけど使い道を言えばマオマオも感動してこの卑しい僕に髪の毛をくれるかもしれない。


「1本目は食用。僕が食べるためです。2本目は鑑賞用。毎日電子顕微鏡で覗きながら祈りを捧げます。3本目はクローン用。食用の1本がなくなっても無限に増やせば無問題です」

「お前頭おかしいよ」

「えへへぇ、照れますねぇ」

「ニチャるなキショい」

 

(あれ? なんか引かれてる? いや、逆に惹かれてる? つまりもう一押しかな?)


「……だったらこれでどうでしょう?」


 そう言いながら懐から取り出したのは便利アイテム『札束』。こんな物でマオマオが靡くはずはないが、大抵の使用人はこれでどんなワガママも聞いてくれるのだ。


「バリカンを用意しろ司!」

「チョロ過ぎて草ァァ‼︎」


P.S 髪の毛3本と百万円を等価交換した。

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