第4話 別①


そんな楽しい学校生活の中、突然、彼女とのお別れが来た。




彼女は親の仕事の都合で地方に引っ越さないといけなくなったのだ。

あともう少しで卒業って時に。


一緒に卒業して、卒業後も旧図書館じゃない別の場所で同じような関係が続くと思っていた。


あまりにも唐突だった。


悲しい気持ちに浸る余裕はなく、彼女はクラスの人気者且つ先生のお墨付きの生徒ということもあり、クラスの皆でお見送りを兼ねてクラス会をしようとなった。



先生がクラスの為にフードデリバリーを頼んだり、皆で歌ったり、踊ったり、クラスのバカ代表たちが彼女の為にコントを披露したり。


お見送り会とは程遠いような、クラスは楽しげなムードが漂っている。




但し、俺を除いて。



俺は教室の隅にひとりでポツンといる。


クラスメイトも最後なんだし話しかけてきなよと俺を彼女の元へ行かせようとしたが、俺は頑なに彼女の元へ行こうとしなかった。


自分でもどうしてこの時、彼女の元へ行こうとしなかったのかよく分からない。

ただ、現実を受け入れたくないと思ったからかもしれない。



彼女も俺に何か言いたげそうだったが、躊躇して最初は話しかけに来なかった。

だけど、もう少しでクラス会がお開きになるという時に、彼女は「兎黒くん」と話しかけてきた。


「今日で最後、だよ?最後なんだから最後くらいいつもみたいに話そうよ」といつもと変わらないふにゃふにゃした感じで俺に話す。


なんだよ、いつもみたいに話すって……最後だからこそ、いつもみたいに話せるわけないじゃんと俺は心の中で呟く。



「……私、いなくなるけど……寂しくなる?」

「……別に」

本人の前ではそっけない態度を取っているが、実際はめちゃくちゃに寂しい。

寂しいって本当は言いたい。

でもそんなことを言ったら、彼女のことだからじゃあここに残るなんて言い兼ねない。


「…フフ、兎黒くんらしい返答」

彼女は今日で最後だというのにやはりいつも通りの反応。

俺は彼女のいつもの態度に少しイラつきを覚えた。


「あのね、兎黒くん。……今聞くことじゃないかもしれないけど、最後だし聞いても良いかな?」

と彼女はまっすぐな目で見てくる。


「……なんだよ」

「兎黒くんが友達作らない理由、少し前に秋吉くんから聞いたよ」

「………」



俺が友達を作らない理由。

忘れもしない、あの真っ黒な思い出。


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