第3話 変

──時は、高校三年の秋。


彼女と出会って一年半経つ。

また俺らは同じクラスなのに旧図書館で話し合う仲は相変わらずだ。



でも変わったものが五つほどある。


それは──

クラスメイトに少しだけだが、自分から話しかけるようになったこと。

元々友人だった秋吉あきよしともまたつるむようになったこと。

茉白の友人、佐那さなが俺の存在を知り、俺を毛嫌いしていること。

時々寝てしまうこともあるが、真面目に授業を受けるようになったこと。


そして、進路に迷う必要はないと思っていた俺が、彼女から後押しされて医学部がある大学を受けようとしていること。



学校や友人なんてどうでもいいと思っていた俺が、彼女と出会っただけでこんなにも変われると思わなかった。

一体、誰がこんな未来を想像できた?


それに学校は嫌いであったが、勉強はそこまで嫌いではなかった。

授業中寝ていてもテストの成績は、自分でも言うのは恥ずかしいがそこそこ良い。


学年順位では大体十位以内に入る事がほとんどだった。

しかも、最近は真面目に授業を受けているので学年順位はメキメキ上がり、三位以内をキープするようになった。



ただ将来について考えたことなかった。

そんな時、彼女が不意に「私ね、思うんだ。兎黒くんがお医者さんになればみんな兎黒くんが良い人、信頼できる人だってもっと理解してくれるのにな~」と言う。

続けて「病院ってさ、みんな行きたくなくて行くわけないじゃん?しょうがないから行くしかないけど兎黒くんがお医者さんだったらこんな先生なら病院行きたい!って思う人増えると思うんだよね!」と屈託のない笑顔で俺の将来像について話す。


「……何だそれ」

終始何言っているか分からなかったけど、その言葉は素直に嬉しかった。


俺のことをここまで考えてくれるなんて。


親には未だ見放されているのに、赤の他人が俺の将来を考えてくれる彼女の優しさには救われた。


単純だけどこの彼女の言葉をきっかけに俺の将来が決まったのだ。

彼女の為とかじゃなく、本当は心の奥底にあったものが彼女の一押しで見つけたような感じだった。



彼女には感謝してもしきれない。




つまらない高校生活だと思っていた俺を楽しいと思える環境を作ってくれたのは紛れもない彼女なのだ。


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