第11話

 圧倒的な力量の差を見せつけて、黒髪の男を消滅させたイェン。

姿が消えた事を確認したイェンは振り返り、僕の元へときた。


「無事だったか?フラン。」


「うん!フランは大丈夫!」


「そうか、ならよかった。」


と、イェンは安堵の表情を見せる。


「そして十全、何故お前の魔力を一切を感じない?」


「あはは…それは話せば長くなるんだけど…」


さっきとは打って変わり、怪訝な表情のイェンに僕は恐る恐る事情の説明をした。


「ふん…なるほどそう言う事だったのか…」


「あぁ、他の誰かにバフをかけた事なかったから消費される魔力量はかけられた側に依存するって知らなかったんだよ。」


「つまり俺にバフをかけたのは良いが、俺の方が魔力が多くて魔力切れを起こした、そしてお前の体質が出てしまった、と言う訳だな。」


「ま、そう言う事だな…」


事情を理解したイェンはやれやれ、といった仕草をして少し考えた。


「そうだフラン、パパ喉が乾いちゃったな!悪いが水を汲んで来て貰えるか?」


「うん、わかった!ジューゼンさんも要る?」


「あっ、うん!せっかくだし貰おうかな!」


「わかった!ちょっと待っててね!」


そう言ってフランちゃんは、井戸の方へと向かっていった。


「さて十全、お前に聞きたい事がもう一つある。」


「あぁ、うん、なんとなくわかってた。」


そよ風が吹き、イェンの赤い髪は炎のように輝いている。


「そうか、ならば単刀直入に聞こう。」


「うん。」


「何故お前からクローネの魔力が出ている?」


「正直僕もフランちゃんの話を聞かなかったら気付かなかったんだけど…」


僕はクローネとの出来事をイェンに話始めた。


 戦地に派遣された僕達クローネ部隊は連日の戦いで敵陣の7割を殲滅した所で、罠にかかり半数が負傷し危機を迎えていた。


「十全!まだ戦えるか?」


「あぁ、なんとか…」


「よし、私が先頭を切り開くからお前は魔法で穴を広げろ!できるだけドデカいのが良い!」


「10秒だけで良いから耐えてくれよな」


「はっ、100秒だって1000秒だって稼いでやるからお前の一番自身あるヤツを見せろ!」


そして、宣言通りクローネは単身で時間稼ぎをして僕の魔法で敵陣を一掃、敵は退陣を余儀なくされた。


「ごほごほっ、中々良いのを見せてもらったよ十全。」


「クローネ!身体中ボロボロじゃないか!」


[治癒魔法(高速)]


「ははっ、お前回治癒魔法も使えるのか。」


「喋らなくて良い!今は回復に専念して!」


「ごほっ、無駄だ十全。」


「無駄って何が!」


「お前の治癒魔法、後付けだろ?それじゃ重傷者は治せない。」


「そ、そんな…じゃあ急いで医療班に!」


僕はクローネの肩を持った。


「ははっ、医療班も何もあいつらは私達派遣部隊を置いて撤退して行ったよ。」


「はっ?」


「私は治癒魔法を使う時に治す相手に微量の魔力を混ぜるんだよ、一定の範囲内なら離れてても回復させられるからな。」


「凄いな…」


「まぁ範囲内から離れたら感知出来るから、一斉に大量の接続が切れたらそりゃな…」


「なるほどわかった、けどお前を見殺しにする事も出来ない。」


「ははっ、私も死ぬつもりなんてないさ。」


「じゃどうやって…」


「私の残りの魔力をお前に全部やる、それで私を治せ。」


「はっ?」


「ごほっ、悪いけどもう余裕がないんだ。」


そう言ってクローネは僕に魔力を渡した後、長い眠りについた。


「まさか全部って言うのが魔力源ごとだとは思わなくて…」


「ふっ、クローネならやりそうな事だ。」


一通りの話を聞いたイェンは笑った言った。


「つまりクローネはもう…」


「パパ!ジューゼンさん!お待たせ!」


と、タイミングが悪くフランちゃんが戻って来てしまった。


「おぉフラン、ありがとう。」


「ありがとう、フランちゃん!」


「えへへ…」


フランちゃんは屈託のない笑顔で笑っている。


「はぁ…イェン、夜になったらここに来てくれ。」


「ん?なんだこれは。」


と、イェンにある場所の地図を渡した。


「じゃ、僕は帰るよ。」


「えぇっ!?ジューゼンさん帰っちゃうの!?」


「うん、また来るよフランちゃん!」


僕はそう言ってその場を後にしようとした。

が、


「そうだ、魔力が…」


と、チラッとイェンの方を見た。


「ふん…、言いたい事は分かった。」


「ありがとう、助かるよイェン。」


「だが条件がある。」


「ん?僕に出来る事なら任せてよ。」


「俺達をお前の家に住まわせろ。」


「はっ?」


「なんだ?俺達に外で寝ろって言うのか?」


そう言ってイェンはフランちゃんを抱き抱えて親指で後ろの元住居を差した。


「あぁ…、はぁ…、わかったよ。」


「よし!流石十全だ、行くぞフラン!」


「え?どこに?」


「十全の家だ。」


「えっ!?ジューゼンさんのおうちに?良いの!?」


「あはは…いいよ、おいでフランちゃん。」


そして流れるように僕達は3人で僕の家へと向かうのだった。

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