第10話

 赤い髪を燃えるように輝かせて突如現れた屈強な男は近づいてくる。


「ふっざけんな!なんなんだよテメェは!」


「ピーピー騒ぐなゴミ虫が、その様子じゃまともには動けんのだろう?」


「ぐっ…!」


男の言う通り、僕は全身に力が入らない。

今声を出せる事に驚いているくらいだ。


「どうやらお前は炎の魔法が得意らしいな、ほら見せてみろよ!魔力くらいは練れるだろ?」


「舐めやがって…!なら望みどおりデカいのをやるよ!」


僕はもっとも大きな炎をイメージする。

それにふつふつと燃える闘志を注ぎ込む。

すると、熱を帯びた魔力の球はみるみるうちに燃え盛る火炎へと変貌する。


「燃え尽きろ!クソボケェ!」


「ふん…」


渾身の火球を男にぶつけた、が

男の表情は涼しかった。


「なら次は俺の番だな。」


「は?」


「本物の炎の魔法というのは、こういう物の事を言うんだよ!」


男は瞬時にとんでもない量の魔力を圧縮して、巨大な火球を作り出した。

それはまさに僕がイメージしたもっとも大きな炎、太陽そのものだった。


「灰燼に帰せ、クズ。」


その火球は煽るようにジリジリと近づいてくる。


「クッソ!クソクソ!僕はこんな所じゃ死なない!死ねないんだよ!」


火球はどんどん僕の身を焦がしていく。


「ああああぁぁぁっっ!!!早くしやがれボケ無能が!!」


僕は必死に叫ぶ。


「残念だが俺は甚振って殺すのが趣味なんだよ。」


男は不敵に笑っている。


「あはははっ!!良い趣味してんねぇ!!」


男は何も言わずにこっちをずっと見ている。


「今回くらいは僕の負けにしておいてやるよ!次あったらぶっ殺す!必ず殺す!ここに居る全員だ!あのガキ共も!」


僕の身体は少しずつ魔力の粒へと変化していく。


「お前の顔と魔力は覚えたからな…、世界の果てまで追いかけて殺してやるよ!」


どんどん意識が遠のいていく。

最後の最後まで男は笑みを浮かべたままだった。


「畜生!畜生ォ!僕はこんな所で死ぬ存在じゃねぇぇっ!」


僕の意識はここで途切れた。


 気付くと僕はいつもの場所に居た。


「ふざけんな…!聞いてないぞあんな化け物が居るなんて!」


「まぁ、言ってないからねぇ」


「あぁ!?なんでこんな大事な事いわねぇんだよ!」


「はぁ…私は言おうとしたけどアンタが聞かずに出て行ったんじゃん。」


「ぐっ…、あとお前!転送させるのがおせぇんだよ!間に合わなくて結局死んだじゃねぇか!」


「うぅっ…だって君の位置、遠かったんだもん…」


「言い訳すんじゃねぇよ!サポートがお前の役割だろうが!」


「うぅっ…」


「おい、お前のミスを他の奴のせいにしてんじゃねぇよ雑魚が」


「あぁっ!?誰が雑魚だって?」


「お前だよお前、実際今一番レベル低いじゃん。」


「それはコイツが見殺しにしたからで…」


「あー、はいはい言い訳は見苦しいから辞めな〜行こ、リスト。」


「う、うん…」


と、二人はそそくさに退室していった。


「クッソが!どいつもこいつも僕の事を嘗めやがって!」


僕は怒りを目の前の木箱にぶつけた。


「殺す殺す…絶対殺す!」


沸々と湧き上がる怒りを激らせ、僕は勢いよく扉をあけて退室した。

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