第8話
フランちゃんから衣類を借りた僕は一先ずイェンの家にお邪魔する事にした。
「まさかこんな小さな女の子と服のサイズが同じなんて…」
「ジューゼンさん、似合ってるよ!」
「あはは、ありがとう…」
朝から色々ありすぎて、精神が崩壊しそうになる。
「あのね!フランね!ジューゼンさんからママみたいな魔力を感じるの!」
「うーん?それって僕の姿がこの状態だからじゃなくて?」
「ううん、最初にジューゼンさんを見た時からだよ!パパもそう言ってた!」
「ママねぇ…」
と、頭を巡らせた時。
ふと一人の人物が思い浮かんだ。
「あのさ、フランちゃんのママって回復魔法が得意?」
「うん!どんな傷でもすぐに治しちゃうんだ!」
「なるほど…それと、めちゃくちゃ喧嘩好きだったりする?」
「ええっ!?凄い凄い、ジューゼンさんなんでわかるの!?」
「あ〜…あはは…そっかぁ…」
僕の記憶の中に一人、条件に当てはまる人がいる。
「そっかそっか…あの人覇龍だったのか…」
「ジューゼンさん、ママにあった事あるの!?」
「う、うん…かなり前にね…」
おそらくフランちゃんの母はクローネだろう。
僕が戦士として戦地に派遣された時に、臨時パーティーを組んだ僧侶、それがクローネ。
クローネは戦うのが大好きで単体で精鋭たち2000人を瞬殺、そして傷付いた味方の兵士達全員を瞬時に治療。
戦地の女神の二つ名をもつ僧侶だ。
しかし、そのクローネはとんでもない性格をしていた。
強者を好み、気に入った相手を気のすむまで殴り合いを強要して、傷付けば治療また殴り合い。
僕もその被害者の一人である。
「フランちゃんはあんな風にならないでね?」
「うん!フラン、喧嘩は好きじゃないから…」
と、フランちゃんは頬を膨らませて怒っているように見えた。
「パパはママの事が好きだからママに勝つ為に身体を鍛えてるんだって、でもママは弱い奴に興味はないって出ていっちゃった。」
「そっか…」
「ママ、本当は優しいんだよ?だけど覇龍のちが争いを求めるんだって、でもフランはそうはならない!」
そう言ってフランちゃんは僕の手を握った。
「よしよし、僕と一緒にがんばろうね!」
「うん!フラン、ジューゼンさんと一緒に頑張る!」
「あっ、そうだ!ジューゼンさん一緒にお菓子食べよう!」
そう言って、フランちゃんはキッチンへと向かった。
「あはは、フランちゃんは元気だなぁ…」
「はい、これ!フランが作ったんだよ!」
と、フランちゃんはクッキーを持ってきた。
「おぉ!すごいね!それじゃあ貰おうかな!」
そしてクッキーを1枚口に運んだ。
「初めて作ったから…うまく出来たかわからないけど…」
口に広がる塩の味、なんて典型的なミスだろうか。
「う、うん!運動した後に食べたもっとおいしいかなぁ…」
「運動…?わかった!ジューゼンさん、遊びに行こう!」
「えっ」
僕はフランちゃんに腕をひっぱられて外に出た。
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