第3話
上空から目撃情報があった場所を散策する。
「うーん、龍の気配どころか魔力の流れすら感じないけど…」
僕は魔力の一部をチナツさんに繋いだ。
『あー、もしもしチナツさん?僕だけど。』
『あら冒険者さん、どうされました?』
『目撃地点に来たんだけど、なんの痕跡も見当たらなくて…』
『あら、もうですか!相変わらず早いですね!』
『あはは…それはどうも…そんな事より!情報って間違ってたりしません?』
『ふむ…そうですねぇ、間違ってはないと思いますが…痕跡が見当たらないとなると虚偽の可能性も考えられますね…』
『まぁ、もう少し周りを調べてみるから何かわかったら連絡してよ。』
そう言って僕は魔力の流れを元に戻した。
「仕方ない、少し歩くか…」
山岳地帯は凄く足場が悪い。
歩くのが億劫な僕からしたら最悪の立地だ。
「うーん、低級モンスターの魔力しかないな…」
しばらくした後…
『冒険者さん冒険者さん!新しい情報が出ました!』
『わぁ!?びっくりした…どうでしたか、チナツさん。』
『はい、それがこの依頼の覇龍…どうやら魔力の気配を消せるらしいんです!』
『えっ、それって覇龍の中でも災悪の類じゃ…』
『はい、ですのでいくら冒険者さんでも単体での討伐は難しいと思われます!ですので早期帰還をおすすめします!』
と、チナツさんから指示が出た時。
その場の空気が変わった。
『うーん、その情報もっと早く欲しかったなぁ…』
『あらぁ…もしかして…』
『まぁ、今日は調子が良いし大丈夫!絶対生きて帰るよ。』
『すみません、冒険者さん!戻ってきたらいつもの奢りますからどうかご無事で!』
『うん、約束ね。』
濃い魔力が漂い、それが圧縮されていくと空間を割って覇龍が現れた。
「ふん…また一人、愚かな餌が現れたか…」
深紅の鱗が溶岩のように輝く。
「いやぁ…あはは、おじゃましてます…?」
「口を開くな、下級生物が!」
覇龍の咆哮が響き、大気をビリビリと揺るがす。
「流石災悪レベル、咆哮だけでこの圧か…」
「ほぅ?龍圧に臆する事なくまだ立ちはだかるか…面白い、少し踊って見せろ!」
そう言うと覇龍は爪を振りおろした。
「うぉっ!?」
衝撃で空に投げ出されたが、魔力の足場を作り体勢を整える。
「ふぃ〜すごいパワーだなぁ…あれをモロに食らったら致死じゃ済まないな…」
「ふん…一撃交わしたくらいで休んで良いのか?」
覇龍のその言葉と共に背後から火球が飛んで来る。
「おいおい…勘弁してよ…」
[移動速度上昇(極地)]
咄嗟にバフをかけて移動したが、長期戦は分が悪そうだ。
[筋力上昇][攻撃力上昇]
「これならどうだ?[龍爪]!」
「ぬぅ!?」
ドンッと、覇龍に攻撃を当てた反動を感じる。
「くははっ!面白い!ただの下級生物かと侮っていたが中々やるではないか!」
「あちゃぁ…全然効いてないや…」
「さっき、攻撃の一瞬だがお前から同じ覇龍の気配を感じた、こんな奴は出会った事がない!」
「あはは…そりゃどうも…」
バフをかけている間は徐々に魔力を奪われていく。
あまり長いをしている余裕がない、というか帰りたい。
「お前、名前はなんという?」
「十全、冒険者だ。」
「十全か、俺の名前はイェンだ。」
「これはこれはご丁寧にどうも…でもなんで名前を…」
「十全、お前を殺してしまうには惜しい!もっと俺を楽しませてくれ!」
「あぁ…そう言う感じか…」
どうやらこのイェンと言う覇龍は戦闘狂みたいだ。
「一方的な力は俺の好みじゃない、お前に姿を合わせよう。」
そう言ってイェンは龍の姿から人の姿へと変化した。
「さぁ!思う存分戦おう、十全!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます