第2話

 窓から射す日差しに顔を焼かれ、僕は目を覚ます。


「あっつ…」


じっとりとした汗を拭い、体を起こす。

歳のせいか、最近魔力の回復が遅い。


「うーん…今日もか…」


僕がジョブマスターになってから、余計なスキルが身についた。

それは一定の範囲内の争いなら、感知出来ると言うものだ。

そして、決して良いものではない。

なぜなら…


「はぁ…騒音で頭がガンガンする…」


通知音がとんでもなくうるさい。

そしてその腹いせは感知した戦場にぶつけられる。


「あーダメだ、ムカついてきた。」


僕は魔力のリミットを外して、バフをかける。


[移動速度上昇][攻撃魔力上昇][攻撃範囲拡大]


「よし、行くか。」


指を鳴らして気合いを入れた。

魔力を放出して、推進力に換え空を飛翔する。


「このあたりか…」


 通知音が最速に達した時、視界に戦地が写った。

また、隣国と争いを起こしているようだ。


「はぁやれやれ…こいつらも飽きないなぁ…」


僕は戦地の真上に立つと人差し指を立てて天を差した。


「一瞬で楽にしてやるよ。」


[落雷魔法(極地)]


刹那、眩い光が戦地を包んだ。

そして、下には死体の山が出来ていた。


[蘇生魔法(範囲)][転送魔法(範囲)]


その場にいる全員に蘇生魔法と転送魔法を同時にかける。

すると、転送先で全員蘇生されるのだ。

しかし魔力消費の多い蘇生魔法と転送魔法の範囲版に加えて、それをさらに範囲拡大しているせいで根こそぎ魔力を持っていかれる。


「はひ〜…なんとかギリギリだったなぁ…」


ガス欠を起こさないように、魔力放出を抑えて空を飛んで自宅に帰る。

これが僕の最近の日常だ。


 ヘトヘトになりながら、僕はベッドに倒れ込んだ。

足りない筋力や俊敏性を全て魔力でカバーしている僕は、魔力切れを起こすと無能になってしまう。


「ダメだ眠すぎる…少しだけ仮眠しよう…」


僕はそのまま微睡の中に入っていった。


 仮眠から目覚めると日は完全に沈んで町は静寂に包まれていた。


「やっちまった…」


自分の愚かさに落胆する、が魔力は回復していたので僕はギルドに向かう事にした。


「どうも〜」


「あら冒険者さん、いらっしゃい。」


冒険者ギルドは依頼をこなして報酬を得る場所、つまり職場のようなものだ。


「やぁチナツさん、今日は調子が良さそうだから依頼を受けに来たよ。」


「あらあらそれはそれは、それではどの依頼にしますか?」


薬草集め、鉱石回収、盗賊捕縛…

さまざまな依頼に目を通していく。

そして、ふとある依頼が目についた。


「ん…?覇龍討伐…?」


「あら、その依頼にしますか?難易度はかなり高いですが報酬はかなり高いですよ!」


「あっ、あー、うん…ちょっと考えるね…」


覇龍、古の龍で軽く一国を滅ぼすほどの力を持った龍だ。


「うん、そうだねこれにしようか。」


「さすがジョブマスターの冒険者さんです!」


「ちょ、ちょっとチナツさん!声が…」


「あらあら、そうでした!うっかりしてました。」


僕はジョブマスターと言う事を内密にしてもらっている。

なぜならとても面倒な事になる事が目に見えてるからだ。


「はぁ…、まぁこの依頼は受けておくよ。」


「はい、かしこまりました!では成功をお祈りしておきますね!」


そして僕はチナツさんに見送られてギルドを後にした。

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