特務隊対執行部隊(1)
「接近中のタンカーに告げる!これは最終警告だ! これ以上の接近は」
「構わん、撃て! 」
「っ、主砲打ち方始め! 」
ルクレール作戦の支援の為に展開していた王国海軍艦隊だったが、コンビナート爆発の報を受けて、支援に向かっていた。
だが、その道すがら、付近を航行していた民間タンカーが進路を変更して、艦隊の方へ突っ込んできたのだ。
トラブルか攻撃か、判断に難しい所だが、艦隊司令はそれを共和国の攻撃だと断定し、迎撃を命じた。
だが、今度は別の報告が上がる。
「共和国領土から飛翔体の発射を検知!
恐らく、
方角NW 距離32マイル、数は24!? 」
「ええい、タンカーの迎撃は右舷のヴォルタ、ウーファハイで行え、我が艦を含めたそれ以外は防空戦闘を開始! 」
「対空戦闘用意! 対空戦闘用意!
ゲッコー、攻撃はじめ! 」
怒号のような指示が飛び、あらゆる警報やベルが鳴り響く。
艦隊司令は苦虫をすりつぶしたような顔を見せる。
(勝ち戦のはずが!
共和国め、なりふり構わずの反撃のつもりか……! )
「!? ソナーに感あり!
敵潜水艦、いや、これは魚雷です!
数2つ、方位NE、距離800mと1000m! 」
「待ち伏せされていた!?
ソナー員は何を見ていた!? 」
「爆雷、デゴイ投下、回避行動!
各員、衝撃に備えろ! 」
艦長が叫び、艦橋の全員が一斉に頭を隠して防御態勢を取った。
しかし、それから数秒経っても、何も起きなかった。
艦隊司令は肩を撫でおろし、頭を上げた。
だが、艦橋の外に見えた光景を目にして、半狂乱で叫んだ。
「
「ハークラー、イグアスが通信途絶、魚雷の直撃を受けた模様!
敵対艦ミサイル、接近、距離10マイル!
一次迎撃をすり抜けて来た数12!」
「敵潜水艦らしき検知、移動を開始した模様! 」
砲撃も受けながらもゆっくりと近づいて来るタンカー、迫りくる対艦ミサイル、虎視眈々とチャンスを伺う潜水艦。
状況は明らかに不利だった。
「艦隊、180度転回、この場を離脱する! 」
「ミサイルきます! 」
「主砲、CIWS撃ち方始め! 」
最後のゴールキーパーである120mm主砲と、30mmCIWSが弾幕を張るが、数発のミサイルはそれをすり抜け、幾つかの艦に命中した。
「ヴォルタ、ウーファハイ被弾! 火災発生!
艦隊の防空能力、最低レベルに低下!」
「レーダーコンタクト、方角E、距離30マイル、共和国領土上空、敵攻撃機編隊とみられる!
数は……反応が消えた、渓谷の中に入られた! 」
「くそぉ! 」
艦隊司令はコンソールに拳を叩きつけた。
ここまで艦隊がボロボロになってしまえば、渓谷から接近して対艦攻撃しかけてくるのを防ぐ術はなかった。
しかし、此処でようやく希望の報告が入った。
「艦隊司令、艦長、友軍戦闘機が接近中!
特務隊所属の部隊の様です! 」
「特務隊? 以前、渓谷での迎撃を成功させた連中か!
よし、直ちに援護の要請を!
渓谷から接近する敵を叩き落としてくれ! 」
◇
「……とのことです、オスカー」
「ふっ、承知した」
艦隊からの援護要請を受けたのは、オスカー、ケッペル、パーシーらだった。
特にオスカーはPMCパイレーツの拠点攻撃と、敵のゲリラ発見・殲滅を成功させたとして、生死不明のクーパーに代わって、王国の英雄という名声を得ていた。
「渓谷での迎撃か。
ジョン・クーパーには出来たが、私にも出来るかな? 」
「当然です。
あの男に出来て、オスカーに出来ないわけが」
「ケッペル、貴様は余計なことをしたな?
彼の機体に細工をしたのは、貴様だろう? 」
「私は幼少期から正義感が強くて、間違ったことを赦せないのです。
……我が国のこの美しい空を汚い
ですが、ご心配なく、私目が奴の代わりになりましょう」
「まぁ。役目を果たせれば良いさ。
王国の未来の為、私には実力のある同志が必要なのだ」
◇
共和国山岳地帯上空。
<雄猫より執行3-1へ通達。
レーダコンタクト、DU-27系統3機。5000ft、南東から接近中>
<雄猫、了解。
執行3-1より各機。
作戦に変更はない。
共和国艦隊が網にかかった。
これより、作戦計画通りルートPAFを使用し、対艦攻撃を開始する>
N/A-18Eを編隊長とし、AG-6が6機程連なる編隊が、一番機から順に怖気ることなく渓谷に飛び込んでいく。
小柄なAG-6の翼には、不相応にも見える大型対艦ミサイルハープンが搭載されていた。
優秀な共和国兵とPMCパイレーツの出向人員から編成される共和国空軍特殊部隊"執行隊”は、王国軍の蛮行に対する報復として艦隊殲滅の任務を背負っていた。
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