第6話
「はぁ、失敗したなぁ…」
夕暮れの森の中を、迷宮での出来事を悔やみつつトボトボと歩くリヨリア。
(今回はアーサー君が丁度よく来たから良かったけど、もし来てなかったら死んでた、反省しないと…)
「…はぁ、やっぱり生きるって難しいです…師匠。」
空を仰ぎ、一言呟く。
「……ん?」
だが、突然鼻を刺すような臭いがリヨリアの意識を地上に戻す。
「この匂い…血?しかも獣人の女の子の…」
錆っぽい臭いに、一瞬で血液の臭いだと判断するだけでなく、その臭いに混じった臭いで性別、年齢、種族、人だと言うことまでも判断する。
普通だったら出来ないことだが、リヨリアは血液をも食事にする種族『ヴァンパイア族』の一人。血液の匂いでの、人間か否かや、性別、種族などの嗅ぎ分けは造作もない。
(方向はボクの住処の方から、臭いが強い…てことは出血して時間が経ってる。急がないと。)
リヨリアは冷静に状況を分析し、駆け出す。
◆
「はぁ…疲れたぁ。」
トボトボと森の中を歩くアーサー。
「にしても…こんな所にヴァンパイアがいるのは意外だったな。見た目は、12歳…あたりってところか…」
(…しっかりしてたなぁ…やっぱりアレで実年齢100とかだったり…)
「……ないな。100もいってればブラッドミノタウロスなんて余裕だろうし…」
思い浮かんだ考えを自ら否定する。
その時
「…ッ」
アーサーは何かを感じとり、素早く剣を抜く。
カンッ!
何かが当たる音。
その後背後からすぐさま聞こえてくる着地音。
「…危ねぇな。」
アーサーは後ろを向く。
そこにはフード付きのマントのフードを深く被る、小柄な人物が1人。
「…」
小柄な人物は、無言のままナイフを構え続ける。
「お前、暗殺者だよな?俺に何の用だ?」
「…」
「…無言のままか…んじゃ、俺から1つアドバイス。俺を追うなら、まず殺気を完全に消して、心臓を止めることだな。まぁ、殺気上手く消せてたと思うけど少し残ってたし、心臓に関しては止めない限り、心音が聞こえてくるから無理に等しいな。ちなみに、お前が俺が村を出てからつけてたのは知ってる。心音でバレたてたぞガハハ!!」
「…」
「なんか喋れよ。こっちは変な笑い方でボケてやったのに。」
「…」
「…そうですか。無言のままですか。ならもういいです。」
ため息をつき、剣を構え直す。
そんなアーサーに反応し、より深い体勢で構えるフードの人物。
「…無理やりでも話させてやるよ。」
その言葉とともに、アーサーは地を蹴る。
◆
(匂いが濃くなってきた。てことは近い!)
リヨリアは森の中で濃くなる血の匂いに、周囲を見渡す。
(どこ…どこに。)
だが、いくら見渡しても見当たらない。
(見当たらない…こういう時は血の匂いに集中…)
リヨリアは目を瞑り、鼻に意識を集中させる。
先よりも匂いが明確になり、頭の中で匂いが形になったてイメージされる。
「…あっちだ。」
匂いのする場所を特定し、その場所に足早に向かう。
「ここらへんだから……いた!」
リヨリアは倒れてる少女を発見し、駆け寄る。
背中までまで伸びた茶髪、特徴的な狐の耳としっぽの少女。
「大丈夫?!」
少女の身体を少し起こし、声をかける。
「…」
が、少女は目を閉じたまま、苦しそうな表情を浮かべていた。
(…酷い傷…それにこの身体…痩せ細ってる。)
少女の腕を少し持ち上げ確認する。
少し力を入れれば折れそうな程に細い腕。
(これは、栄養失調の可能性もある…とりあえず…)
リヨリアは腰のポーチを探る。
「…あった。」
ポーチから取り出されたのは初級ポーション。
蓋を外し、少女に少しづつ飲ませる。
そうしていると、傷がどんどん治っていく。
「ふぅ、とりあえずある程度は処置完了……」
治療がある程度完了した少女をまじまじと見るリヨリア。
「…連れて帰ろう。」
そう呟き、少女を背負う。
「…よし、帰ろ。」
テントに向かって歩き出す。
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