第3話
「はぁ…はぁ…」
夕暮れの森の中を傷だらけで歩く少女が1人。
(お腹すいたぁ…喉乾いたぁ…)
視界は霞み、重い足でフラフラとしながらも歩く。
その時
ザッ!
「…え」
突然、地面が崩れる。
少女は空腹と、喉の乾きから思考が回らず、そのまま斜面を転がり落ちていく。
ドンッ
「クッ!」
下まで転げ落ち、木に勢いよく背中をぶつけた少女は、あまりの痛みに声が出る。
「…痛いなぁ。」
少女はそう呟きながら立ち上がる。
そして、また歩き始める。
目的地もなく、ただ歩く。
◆
「ふぅ…疲れたぁ…」
テントの中で寝っ転がるリヨリア。
「あの後に、村の子達と遊ぶことになるなんて…」
腕で目を隠す。
(体力落ちたかなぁ…)
「…はぁ…」
ため息をつく。
(…ちょっと寝よ。)
そうして、リヨリアは眠りにつこうと身体の力を抜く。
その時
くぅー…
突然、お腹が鳴る。
「…無理…お腹減って眠れない。」
そう起き上がり、近くに放り投げたポーチを手に取り、中から今日買ったサンドイッチの詰め合わせを取り出す。
透明な包みを開ける。
「いただきます。」
3個あるうちの1個を手に取り、1口食べる。
「…美味しい。」
具材はハムとレタスといったシンプルなもので、パンの内側にはマヨネーズが縫ってある。
「具材はシンプルだけど…マヨネーズのコクのあるクリーミーな味が、2つの具材の味を際立たせてる。それに何より…この食パンが美味しい。ほのかな甘みがあって、このシンプルさにこの食パンの甘みでもっと美味しい…て、なんで食レポしてるんだろう?1人なのに。」
少し寂しい顔を浮かべるリヨリア。
(そういえば…前世もほとんどひとりぼっちだったなぁ…教室の隅っこでラノベ読んでたっけ…)
前世の記憶を振り返る。
(…確か、そんなボクでも話しかけてくれる者好きがいたなぁ…)
「大丈夫かなぁ…」
ふとその言葉を呟く。
「…流石にボクの心配はしないか。」
と我に返り、サンドイッチを食べ進める。
(結局こっちでも1人…)
「…慣れたはずなんだけどなぁ」
と自分の気持ちに蓋をするように、笑顔を取り繕い、サンドイッチを食べる。
そして、数分後
「ごちそうさまでした。」
と、食後のあいさつをし、ゴミ袋にサンドイッチのゴミを投げ入れる。
「うーん、寝ようと思ったけど、食べてるうちに眠くなくなっちゃったなぁ…どうしよう…」
と、することを考える。
「…あ、そうだ!迷宮行こう。」
迷宮のことを思い出し、腰のベルトにポーチと拳銃が納められてるホルダーをつけて、迷宮探索用のカバンを持ち、狙撃銃を持ち、テントの外に出る。
「…暗いし急ごう。」
そう言って、迷宮へ向かって走り出す。
◆
「…ここか。」
村の入口で立ち止まる青年。
「…とりあえず、今日は宿探して休もう。」
青年は村に入る。
すると、直ぐに村の人であろう人物を見つける。
茶髪黒目の少年。背中には弓を背負っていた。
「あのぉ、ちょっといいかなあ…」
「ん?」
少年は青年に話しかけられたことに振り返る。
「なんだ…見たことねえ顔だな。」
「あ、俺はこういうものなんだけど…」
と、内ポケットから何かを取り出し、その少年に見せる。
「学生手帳…学園のやつか。」
「そうだよ…」
と、学生手帳をしまう。
「んで、なんの用?」
「いやぁ、この村付近で調査をしに来たんだけど、聞き込みのために村によったんだ…」
「聞き込み?俺に話せることならいいけど…」
「あ、違う違う。」
「え?」
「今日はもう休もうと思って、宿がどこかを聞きたくて…」
「宿…それならこっから真っ直ぐいって、広場に出るからそこを右に行けば、ベッドが描かれてる看板がある建物があんだけど、それが宿だ。1階は飲み屋になってるけど、そのカウンターで宿の受付もやってる。」
「あ、そうなんだ…ありがとう。」
「役に立てたならよかったよ。あ、あとどうでもいいと思うけど、この村の近くに迷宮あるから行く余裕があったら行ってみてもいいと思うぜ。」
「迷宮…協力感謝するよ。それじゃあ。」
「ん、じゃあな。」
青年は宿に向かって歩き出す。
(なんか、随分暗い子だったなぁ…)
「…にしても迷宮か…宿の手続したら行ってみよかな。」
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