第38話 クレア様の言っていた意味が分かりました
「アメリナ、俺が怖いかい?俺はね、ずっと待ちわびていたのだよ。アメリナがもう俺から逃げられなくなる日を…」
ルドルフ様の顔は見えないが、何となく黒いオーラが出ているのを感じる。まさかあの様な部屋を作っていただなんて…
そういえば少し前、クレア様が“あの変態から逃げて”みたいなことを言っていたわね。もしかして…
「ルドルフ様、もしかしてクレア様は、あの部屋を見たのですか?」
クレア様のあの変わりよう。急にルドルフ様を見て怯えたり“変態”呼ばわりしていた事を考えると、もしかしてと思ったのだ。
「ああ、あの女があまりにもしつこいから、この部屋を見せてあげたよ。ごめんね、本当はアメリナ以外に俺の部屋に入って欲しくなったのだが、仕方がなかったのだよ」
やっぱり…
「クレア様の件は気にしておりませんので。ルドルフ様、もう私は逃げませんし、あの隠し部屋、元通りに…」
「あの部屋はずっとあのままにしておくよ。それにあの部屋を見れば、俺がどれだけ君を愛しているか…そして、どれだけ君を失う事に恐怖を抱いているか、アメリナも嫌というほどわかるだろう。もし俺を裏切ったらどうなるかも、覚えておいて欲しいしね。アメリナも、あんな狭い部屋に監禁されるのは嫌だろう?」
大きく目を見開き、ルドルフ様が真っすぐ私を見つめてくる。だから、その顔が怖いんだってば!
「嫌です、絶対に嫌です。分かりましたわ、私は二度とルドルフ様から離れたりしませんから」
必死に訴えた。これ以上ルドルフ様を刺激するのは止めよう、そう思ったのだ。
ただ、そんな私の気持ちとは裏腹に
「そうだ、あの部屋を今後、アメリナのお仕置き部屋にしよう。俺に内緒で誰かと密会した時は、あの部屋で反省してもらう事にするよ。それから、新居にも同じ部屋を作ろう。そうすれば、結婚した後も罰を与える事が出来るからね」
ルドルフ様がニヤリと笑って、そんな恐ろしい事を言い出したのだ。それだけは絶対に嫌よ!
「ルドルフ様、どうかそれだけはお許しを。あんな部屋に入れられたら、気が狂いますわ!それに結婚後は、さすがにもうその様なお部屋は不要ですわ」
沢山の自分に見つめられ、鎖で繋がれるだなんて嫌すぎる。
「そうかな?俺はあの部屋、気に入っているのだけれど…まあ、新居に作るかどうかは、これからのアメリナの行動を見て決めるよ」
私の行動を見て決めるとは、一体どういう事?そもそも私、特に殿方と仲良く何てしていないわよ!
「それから俺の言う事を聞いて、いい子にしている事だね。アメリナ、愛しているよ。もう二度と君を離したりしない」
「私も愛しておりますわ。ですので、どうか心穏やかでいてください」
いつの間にかルドルフ様を追い詰め、病ませてしまった様だ。まさかあんな部屋を作るまで、ルドルフ様は追い詰められていただなんて…
でも、それだけ私の事を大切に思ってくれているという事なのよね。とりあえずルドルフ様の言う事を聞入れていれば、監禁される事もなさそうだし。とにかく、ルドルフ様の言う事をしっかり聞こう。それから、今後はしっかり愛情表現もしないと。
「俺の可愛いアメリナ。何を考えているのだい?俺に心穏やかにいて欲しいのなら、二度と俺の傍を離れない事だね。それから、グリーズ殿とは距離を置く事」
「グリーズ様はサーラの婚約者ですわ。何度も申しますが…んんっっ…」
ルドルフ様に一気に唇を塞がれたのだ。それはどんどん深くなっていく。そしてゆっくりとルドルフ様の唇が離れた。さすがにキャパオーバーだ。
「アメリナ、あの男の名前を口にしないでくれ。早速あの部屋に入ってもらおうかな?」
「それは嫌ですわ。ごめんなさい。そうですわ、私、ルドルフ様の好きな甘さ控えめのクッキーを持ってきたのです。一緒に食べましょう」
「甘さ控えめのクッキーか。それは嬉しいな。それじゃあ、アメリナが食べさせてくれるかい?」
「ええ、もちろんですわ。いくらでも食べさせて差し上げます。ですので、どうか心穏やかに」
話題を変える事が出来た私は、早速ルドルフ様のお部屋でティータイムだ。ルドルフ様のご希望通り、クッキーを彼の口に入れた。
「この味…懐かしいな。そういえばアメリナは、このクッキーをグリーズ殿にもあげていたね。俺の為のクッキーだったのに…君は俺たちの大切な思い出を、グリーズ殿に与えてしまった…」
再び不穏な空気が漂い始めた。ルドルフ様は露骨に不機嫌になったり怒ったりするのではなく、笑顔で迫って来るから尚更怖いのだ。
「あれはその…本当に申し訳ございませんでした。もう二度とこのクッキーを誰かに上げたりはしませんわ。そうですわ、新たに甘さ控えめのお菓子を、ルドルフ様の為に考案します。ですので、どうかお許しを!」
必死にルドルフ様に訴えた。まさかクッキーで機嫌が悪くなるだなんて。どこに地雷が埋まっているか分からない。
「アメリナがそう言うなら、わかったよ。ただ、もう二度と俺たちの大切な思い出のものを、他の男に汚させてはいけないよ。わかったね」
「ええ、分かりましたわ、ごめんなさい」
別にクッキーをグリーズ様に汚されてはいないが、とにかく今は謝っておいた。
その後もルドルフ様の顔色を伺いながら、何とか過ごしたのだった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。