第37話 この部屋は一体…

私達が婚約を結んで早1週間。大好きなルドルフ様は、相変わらず全力で私を愛してくれる。サーラやグリーズ様達、友人との時間も大切にしている。


毎日が本当に充実していて、幸せでたまらない。ちなみに私達は1年後、貴族学院を卒院と同時に結婚する事が決まっているのだ。その為今後は、結婚の準備も始めないといけないが、それも楽しみの1つでもある。


そして今日は、何年かぶりにルドルフ様のお家に遊びに来ている。


「ルドルフ様のお家、あの頃と全く変わっていませんわね。昔はよく、遊びに来たものですわ」


「そうだね、毎日の様に遊びに来ていたね。アメリナ、この家はいずれ君の家にもなるんだよ。今俺たちの新居も建設中だ。早くアメリナと一緒に暮らしたいな」


嬉しそうに呟くルドルフ様。私もルドルフ様と、早く一緒に暮らしたい。


「そうだですわ、せっかくなので、ルドルフ様のお部屋に行きたいのですが」


子供の頃、よくルドルフ様のお部屋で、2人で遊んでいたのだ。久しぶりにルドルフ様のお部屋に行きたくなったのだ。


「ああ、構わないよ。おいで」


ルドルフ様に連れられ、お部屋へと向かった。


「久しぶりにルドルフ様のお部屋に来ましたが、あの頃とあまり変わっておりませんね」


「そうだね、この部屋はあまり変わっていないかな」


あの頃と変わらずシンプルなお部屋だ。ただ、あちらこちらに、私とルドルフ様の思い出の品が飾ってある。ルドルフ様ったら…私もクローゼットの奥にしまってある思い出の品を出さないと。あの時捨てなくてよかった。早速帰ったら出そう。


そんな事を考えていると…


「アメリナ、ちょっと席を外すけれど、この部屋でいい子に待っていてね」


「ええ、分かりましたわ」


ルドルフ様が笑顔で部屋から出て行ったのだ。


そういえばルドルフ様のお部屋には、隠し部屋があるのよね。子供の頃は、秘密基地みたいな隠し部屋がなんだか楽しくて、よくあそこで遊んでいたのだ。


せっかくならあの部屋にも行ってみたい。でも、勝手に行ったら怒られるかしら?う~ん…


悩んだ末、行く事にした。きっと今のルドルフ様なら、許してくれるだろう。早速本棚を動かし、隠し部屋へと向かった。扉を開けた瞬間…


「えっ?」


部屋の光景を見て、私は固まってしまった。部屋中私の似顔絵が貼ってある。よく見ると小さい時から今の姿まで、全部そろっているのだ。


さらにいくつかモニターがある。ほとんど映像は映っていないが、映っているものもある。こっちの映像は…この部屋の様子が映されているの?


いいえ、違うわ。これは私が今見ている景色が映っているのだわ。一体どういう事?


これは私が子供の頃に好んで着ていたドレスだわ。こっちは私がルドルフ様の家で使っていたスプーンやストロー。


待って、この奥の部屋は一体何なの?立派な鎖がある。


「勝手にこの部屋に来るだなんて、アメリナはいけない子だね」


急に声が聞こえ、びくりと肩を震わせる。ゆっくり振り向くとそこには、不敵な笑みを浮かべたルドルフ様の姿が…



「ルドルフ様、勝手に隠し部屋に入ってごめんなさい。それよりも…あの…この部屋、随分と雰囲気が変わりましたね。なんだか私が沢山いる様ですが…それにこのモニターは…こっちの鎖も一体…」


恐る恐るルドルフ様に話しかけた。


「どうだい、素敵な部屋だろう。アメリナが俺を避け、さらにグリーズ殿と恋仲ではないかと疑っていた時、この部屋を作ったんだ。アメリナの似顔絵を見ていると、不思議と心が落ち着いた。だから、ありったけの似顔絵を描かせたんだよ。それからアメリナが使っていた物や、アメリナがくれたプレゼントの数々。全てが俺の宝物なんだ…それから…」


ゆっくりとモニターに近づくルドルフ様。


「このモニターは、君が今付けているブローチの映像。こっちがピアスの映像だよ。他にも君に付けさせた護衛やテディベアからの映像もあるよ。こっちの部屋はね、君を監禁するための部屋だったのだよ…」


「私を監禁ですか?どうしてそんな事を…」


「君がグリーズ殿の元に行ってしまうのではないかと、ずっと不安だったんだ。もし君が俺を捨てて別の男の元に行ったら…その時の為に準備した部屋なんだ」


ゾクリとするほど美しい笑みを浮かべ、少しずつ私に近づいてくるルドルフ様。無意識に後ずさってしまう。


「アメリナ、どうして俺から逃げるのだい?そんなに怯えなくても大丈夫だよ。君は俺を選んでくれた。もうこの部屋を使う事は無くなったから。でも…もし万が一、君がまた俺を捨てて他の男の元に向かおうとしたら、その時は…」


「私は何があってもルドルフ様を裏切ったりしませんわ!それにもう、正式に婚約したではありませんか。とにかく、この部屋を出ましょう」


ルドルフ様の手を掴み、急いで隠し部屋から出た。すると、ルドルフ様に後ろからギュッと抱きしめられたのだ。

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