第23話 諦めたくないのに…~ルドルフ視点~
「坊ちゃま、アメリナ様の為に坊ちゃまが一生懸命デザインしたドレス、完成いたしましたよ。きっとアメリナ様も、お喜びになりますね」
メイドが嬉しそうにドレスを持って俺の元にやって来た。でも…
「そのドレス、もう必要なくなったんだ。悪いが処分しておいてくれるかい?」
「処分だなんて…これは坊ちゃまが何日もかかってデザインしたドレスですのに…」
「だからもう、そのドレスは必要なくなったのだって言っているだろう!」
そう叫び、急いで自室に戻ってきた。今日、勇気を出してアメリナを来月の夜会に誘ったが、あっさり断られてしまった。分かっていた、今まで俺はずっと、アメリナに冷たくしてきたのだ。
アメリナが俺に愛想をつかし、他の令息になびくのも当然だ。俺は本当に何をしているのだろう…
「坊ちゃま、今度はどうされたのですか?あんなに一生懸命デザインしたドレスを、捨ててくれだなんて。メイドたちが困惑しておりましたよ」
俺の元にやって来た執事がため息をついている。
「今日アメリナに、来月の夜会のパートナーにならせてくれないかとお願いしたんだ。でも…あっさり断られたよ。きっとグリーズ殿と夜会には参加するんだ。あの2人、本当に仲良しなんだ。きっともう、アメリナは…」
ポロポロと溢れる涙を、堪える事が出来ない。俺は誰よりもアメリナを愛している。あんな男よりもずっと。でも、俺がクールな男なんて演じているうちに、いつの間にかアメリナをあの男にかっさらわれてしまった。
「ファンタム侯爵家のグリーズ殿ですか。彼は穏やかで優しい方とお伺いしております。でも坊ちゃま、アメリナ様に昔の様に接しているのではないのですか?」
昔の様にか…
「俺は長年クールな男を演じていたせいか、いつの間にか自分の感情を出すのが苦手になってしまったんだ。だから、アメリナとどう接していいのか分からないんだよ。アメリナに対する気持ちは誰よりも大きいのに…それにアメリナに話し掛けようとすると、決まってあの女が邪魔をする。その上アメリナが、どうやら俺とあの女が恋人同士だと勘違いしている様なんだ。俺はあんな女、大嫌いなのに…」
「あの女とは、クレア様でございますか?彼女はお上品で穏やかな性格と存じておりますが…」
「あの女がお上品で穏やかだって?いつも俺の前でギャーギャー騒いで、うるさくて品がなくて俺は大嫌いなんだ!俺は付きまとわれているだけなのに、なぜか周りがあの女と俺が仲良しだと思っている。本当に迷惑しているのだよ!」
「それならそうと、はっきりおっしゃればよろしいのではないですか?」
「言っているけれど、聞かないのだよ…俺はあの女と結婚するくらいなら、一生独身でも構わない。というよりも、アメリナと結婚できないなら、俺は一生独身を貫くよ。侯爵家には誰か養子を迎えようと思っている」
俺はアメリナ以外と結婚するつもりはない。アメリナが他の男と結婚するなら、俺は…
「何をバカな事をおっしゃっているのですか?とにかくまだ、アメリナ様とグリーズ殿が正式に婚約した訳ではないのです。まだアメリナ様が婚約を結べるようになるまで、3ヶ月あるのです。やれるだけの事をやってください。それでもダメなら、その時考えましょう」
執事はそうって俺を励ましてくれている。でも…
あの2人の仲睦まじい姿を見たらもう…
今日はもう寝よう。嫌な事があった時は、寝るのが一番だ。そう思い、今日は食事もとらずに眠りについたのだが…
“ルドルフ様、ごめんなさい。私、グリーズ様を心から愛しておりますの。どうかあなた様は、クレア様とお幸せに”
にっこり笑ったアメリナは、グリーズ殿に寄り添い、俺の傍を去っていく。
“待ってくれ、アメリナ。俺は誰よりも君を愛している。頼む、行かないでくれ!!”
必死に叫び追いかけようとする。でも…
“ルドルフ様!愛しておりますわ”
なぜかあの女が俺に抱き着き離れないのだ。
“放せ、俺はアメリナが好きなんだ。頼む、アメリナ、待ってくれ。アメリナ!!”
パチリと目を開けると、見覚えのある天井が。
今のは夢だったのか?
なんて恐ろしい夢なんだ。体中酷い汗をかいているうえ、恐怖で体が震える。
どうしてこんな夢を見るんだ。もしかしたらこの夢は、未来の俺の姿なのか…
嫌だ!俺は絶対にアメリナを諦めたくはない。アメリナと結婚できないなら俺は…
翌日から、俺は少しでもアメリナに振り向いて欲しくて、猛アプローチを掛けようとしたのだが…なぜか俺の顔を見ると逃げていくアメリナ。さらに友人のサーラ嬢や、アメリナを奪おうとしているにっくき男、グリーズ殿が俺からアメリナを守ろうとしているのだ。
その上、相変わらずあの女が邪魔をする。どうしてだ…どうして皆、俺の邪魔をするのだい?
毎日アメリナと話が出来ないうえ、夜にはあの恐ろしい夢を見るのだ。俺は次第に、眠る事が怖くなっていった。それと同時に、これはきっとそう遠くない未来の出来事なのだろう。そう思い始めたのだ。
※次回、アメリナ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
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