第17話 アメリナはクールな男は好きではないだと!~ルドルフ視点~

アメリナとどう接していいのか分からないまま、3ヶ月が過ぎようとしていた。少しでもアメリナの傍にいたくて、アメリナのグループに割って入っているものの、当のアメリナは迷惑そうな顔をしている。


その上、クレア嬢までもが、図々しく俺の横を陣取り、ギャーギャー騒いているのだ。あの女が来ると、嬉しそうにすっと場所を開けるアメリナ。そこまで俺の事が嫌なのか?いっその事、昔の様にアメリナへの愛情を爆発させてしまいたい!アメリナを抱きしめ、毎日のように大好きだと伝え、他の令息たちが近づかない様に威嚇していたあの頃の様に、自分が思うがまま行動したい。


でも、そんな事をすれば、増々アメリナに嫌われてしまうかもしれない。そう思ったら、どうしても行動に移せないのだ。


今日もあの女がギャーギャー騒いでいるのを無視し、そっとアメリナを見つめる。その時だった。


1人の令息が急に


「サーラ嬢とアメリナ嬢は、どんな男性がタイプなんだい?」


そんな事を言い出したのだ。アメリナはクールであまり自分の意見を言わない男が好きなんだぞ!そう思いつつも、耳を澄ます。すると


「私ですか?私は、いつも笑顔の男性が好きです。優しくて相手の事を思いやれて、それでいて私を心から愛してくれて。愛情表現もしっかり表してくれて、いつも私に寄り添ってくれるような人が…でも、そんな人、中々いませんけれどね」


悲しそうにアメリナが呟いたのだ。


一体どういう事だ?アメリナはクールな男が好きではなかったのか?意味が分からない。それじゃあ、今の俺とは全くの正反対の男性ではないか?


いてもたってもいられなくて


「アメリナは、クールで物静かな男性が好きなのではなかったのかい?確か以前令嬢の誕生日で、そう言っていただろう?」


そう聞き返した。そうだ、あの時確かにそう言っていた。ただ当のアメリナは一体何を言っているのだろう、そう言わんばかりに、考え込んでいる。すると、何かを思い出した様で…


「そういえば、そんな事を言ったような記憶がありますわ。あの頃は、他の令嬢たちに話しを合わせただけです。私は物静かな男性は苦手ですわ。何を考えているかわからないし、一緒にいてもつまらないですもの…」


アメリナが戸惑いながらそう答えた。


「確かにそうよね。第一、クールっていい言い方だけれど、ただの感じの悪い人だったりするものね。何を考えているか分からない男よりも、しっかりと意思表示してくださる方の方が、ずっとずっと魅力的よね」


笑顔でサーラ嬢がアメリナの意見に同意する。


そんな…


それじゃあ、俺はずっとアメリナの苦手とする男を演じていた訳か。だからアメリナは、俺を避ける様になったのか?


そんな…


あまりのショックに、スッと立ち上がると


「ちょっと体調が思わしくないから、俺はこれで…」


フラフラとその場を去ろうとした時だった。


「まあ、大丈夫ですか?私が医務室までお供いたしますわ。私はクールなルドルフ様、素敵だと思いますわよ」


笑顔で俺について来ようとするのは、クレア嬢だ。


「悪いが今は1人にしてくれ…それでは、失礼する」


クレア嬢を振り払い、急ぎ足でその場を後にすると、侯爵家の馬車へと乗り込んだ。


「坊ちゃま、どうされたのですか?まだお昼ですよ。それにしても、顔色がよろしくない。体調がすぐれないのですか?」


「ああ…ショックで倒れそうだ…悪いが今日は、早退させてもらう。先生には、そう伝えてきてくれるかい?」


「かしこまりました、しばらくお待ちください」


急いで執事が、先生に伝えに行った。


「まさか、アメリナの好きなタイプが、クールな男ではなかっただなんて…アメリナにとって、俺はまさに嫌いな男だったという訳か…それなのに俺は…」


一気に涙が溢れ出す。俺は子供の頃から、アメリナが大好きだった。好きで好きでたまらなかった。だからこそ、少しでもアメリナの理想の男性に近づきたい、その一心で必死に演じて来たのに…


アメリナは素のままの俺の姿が、一番の理想だっただなんて…


思い返してみれば、昔のアメリナは本当に幸せそうだった。俺が大好きだ、アメリナと結婚したいと言えば“私もルドルフ様が大好き、ずっと一緒にいたいですわ”そう笑顔で答えてくれた。そんなアメリナが可愛くて可愛くて…


アメリナのあの頃の俺が好きだったんだ。それなのに俺は…


アメリナにしてみたら、今まで大好きだと言われ続けていたのに、急に冷たくあしらわれたら、嫌われたと思っても不思議ではないだろう。それでも必死に俺に話しかけてくれていたアメリナ。


もしかしたら、昔の俺に戻ってくれるかもしれないと、淡い期待をしていたのかもしれない。でもきっと、いつまでたっても冷たくし続ける俺に、ついに嫌気がさしたのだろう。


そうとも知らずに俺は…

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