第15話 はっきり言って迷惑なのですが…

「アメリナ、大丈夫?急に帰りたいと言い出したから、心配したのよ。やっぱりまだ、ルドルフ様の姿を見るのは辛いわよね。それにしても、あの男は一体何を考えているのかしら?わざわざ乗り込んでくるだなんて…」


解散後、心配して私の馬車に乗り込んできてくれたのは、サーラだ。


「サーラ、いつも気にかけてくれてありがとう。今日久しぶりにルドルフ様の姿を間近で見た時、あまりにも無表情すぎて、どうしてこんな人を好きだったのだろうって、一気に冷めちゃって…あんなにも好きだった人なのに…でも、私が好きだったルドルフ様は、いつも笑顔でずっと傍にいて下さる昔のルドルフ様なの。でも…もうそのルドルフ様はいないのよね…」


「そうだったの。確かにあの人、何を考えているかよくわからないわよね。アメリナはずっと、昔の優しかったルドルフ様に恋をしていたのね。そして今さっき、すっかり変わってしまったルドルフ様の姿に気が付き、その恋から冷めた。ある意味よかったじゃない」


「そうね…よかったのかもしれないわ。でも、せっかく皆でのティータイムだったのに、私の我が儘のせいで…」


「あら、あんな微妙な空気の中、誰もお茶なんて飲みたくなかったと思うわ。令息たちも顔が引きつっていたし。私も実はとても居心地が悪かったの。だから、アメリナが切り上げてくれて、本当に助かったのだから」


「サーラは優しいのね。ありがとう。でも、皆には申し訳ない事をしてしまったから、明日また料理長に頼んで、お菓子を沢山焼いてもらってくるわ。今度こそ、楽しいティータイムにしましょう」


「それは本当?アメリナの家のお菓子、本当に美味しいのよね。それじゃあ、明日こそ楽しいティータイムね。あれだけ微妙な空気が流れていたのだから、きっともうルドルフ様も来ないだろうし」


そう言ってサーラが笑った。そうよね、明日はもうルドルフ様は来ないわよね。そう思っていたのだが…


「僕も一緒にお茶を頂いてもいいかな?」


何を思ったのか、翌日もルドルフ様がやって来たのだ。それも、大量のお菓子を持って。その上…


「ルドルフ様、こちらにいらしたのですね。まあ、お茶会ですか?私もぜひ参加させてください」


なぜか美しい微笑を浮かべたクレア様までやって来たのだ。何なの…このおかしな組み合わせは…そもそも、ルドルフ様とクレア様は愛し合っているのよね。それなら、2人で勝手にやって欲しいし、何より私たちを巻き込まないで欲しい。


そんな私たちの気持ちとは裏腹に


「ルドルフ様、このお菓子、美味しいですね。はい、ルドルフ様もどうぞ」


何を思ったのか、ルドルフ様にお菓子を進めたのだ。ダメよ、ルドルフ様はあまり甘いものがお好きではないのよ。昔からそうだったわ。そう言いたいが、私が言うべきことではない。


「悪いが僕は、お菓子の様な甘いものは好きではない。それから、あまりくっ付かないでくれ。迷惑だ!」


ギロリとクレア様を睨みつけると、冷たくあしらったのだ。なんて酷い事を言うの?クレア様、大丈夫かしら?心配して彼女の方を見ると


「まあ、ルドルフ様ったら、照れちゃって可愛い」


そう言ってほほ笑んでいる。凄い…すごいわ、この人のメンタル!


この人たちの事は、もう放っておこう。そう思い


「皆様、このお菓子、とても美味しいのですよ。ぜひ食べて下さい」


スッと席を立ち、皆にお菓子を配った。


「実は僕もあまり甘いものが好きじゃなくて…」


そう呟くのは、グリーズ様だ。


「それでしたら、こちらのクッキーが甘さ控えめで食べやすいですよ。はい、どうぞ」


早速クッキーを進める。恐る恐るグリーズ様が口に含むと


「このクッキーは紅茶の味がするんだね。確かに甘さ控えめで、茶葉の香りがとてもして美味しいよ」


そう言って笑顔を見せてくれた。このクッキーは、甘いものが苦手なルドルフ様にも食べて欲しくて、昔料理長に頼んで考案してもらったものだ。他の令息たちも、甘さ控えめなクッキーを喜んで食べてくれた。


ルドルフ様達にも差し上げた方がいいかしら?そう思ったが、完全に2人の世界に入っている為、そっとしておく事にした。


その後もあの2人の事はそっとしておいて、残りのメンバーでティータイムを楽しんだのだった。



※次回、ルドルフ視点です。

よろしくお願いします。

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