第14話 なぜ私に絡んでくるのですか?
しばらく泣いた後、今日はサーラと2人で昼食を食べた。
「グリーズ様達には、申し訳ない事をしたわね。今日も皆で昼食をとる予定だったのに…」
「そんな事は心配しなくてもいいのよ。それよりもアメリナ。無理して殿方と交流を持たなくてもいいのよ。あなた、最近殿方と交流と持とうと必死になっていない?私はアメリナの心の傷が癒えたら、ゆっくりと殿方たちと交流を持ってもいいと思っているのよ」
サーラはいつも、私の事を考えてくれている。きっと今も、私が無理をしてグリーズ様達と接していると思っているのだろう。
「ありがとう、サーラ。でも、私はグリーズ様達と過ごす時間も、とても楽しいのよ。今まで話した事のない殿方たちと話すことで、気持ちも紛れるし。もちろん、サーラと一緒にいる時間も、私にとっては幸せな時間だけれどね。だから、これからもグリーズ様達とも一緒にすごしましょう。せっかく仲良くなったのだから。ね、サーラ」
「アメリナがそう言うなら…私はこれ以上何も言わないわ」
サーラが優しく微笑んでくれる。本当にサーラは、素敵な令嬢だ。グリーズ様が惚れるのもうなずける。
「さあ、そろそろ教室に戻りましょうか。午後の授業が始まるわ」
「そうね、そうしましょう」
サーラと手を繋いで教室へと戻ってきた。すると
「アメリナ嬢、大丈夫だったかい?その…中庭に戻って来なかったから、心配していたんだよ」
グリーズ様達が私たちの元へとやってきてくれたのだ。
「心配をかけてごめんなさい。でも、大丈夫です。そうだわ、お昼一緒にすごせなかったので、放課後皆で、お茶でもしませんか?実は私、美味しいお菓子を持ってきましたの」
「それはいいね。それじゃあ、皆でお茶をしよう。サーラ嬢も…その…いいよね」
相変わらずサーラの前だと、緊張してしまうクリーズ様。
「ええ、もちろんですわ。それでは放課後、皆でティータイムにしましょう」
そして午後の授業を終え、皆で中庭へとやって来た。放課後殿方を交えてティータイムだなんて、昔の私には考えられなかった事だ。
まだまだ心の傷は癒えそうにないけれど、こうやって前を向けているのだ。きっといつか、笑ってルドルフ様とクレア様を祝福できる日が来るはず。
そんな事を考えながら、皆でティータイムを楽しもうとしている時だった。
「僕も混ぜてもらってもいいかな?」
えっ?この声は…
ゆっくり声の方を向くと、そこにはなぜかルドルフ様が立っていたのだ。なぜルドルフ様がここにいるのだろう、ここにいる全員がそう思った事だろう。皆固まっている。そんな私たちを気にすることなく、あろう事かルドルフ様が私の隣に座ったのだ。
この人は一体、何を考えているの?
「ルドルフ様、申し訳ございませんが、今日は昼食を一緒に食べている方たちとのティータイムです。ですから、どうか…」
「僕も同じクラスメイトなのに、僕だけ仲間外れにするつもりかい?それは酷い話だと思うけれど。別に僕がいてもいいだろう」
サーラが言いにくい事を言ってくれたが、ルドルフ様にそう言われては、さすがのサーラも何も言い返せないだろう。
何やら気まずい空気のなか、お茶を飲む。
「えっと…ルドルフ殿はいつもとてもクールだね。何か趣味とかはあるのかい?」
気を使った令息の1人が、ルドルフ様に声をかけた。
「趣味か…そうだな、乗馬が好きだ。後は剣を振るもの」
淡々と話すルドルフ様。
それにしてもこの人、顔色一つ変えないのね。いつからこんな無表情な人になってしまったのだろう。
私が大好きだったルドルフ様は、いつも笑顔でどんな時も私に寄り添い、意地悪な令息には全力で抗議してくれる、まさに絵本に出てくる王子様の様な方だったのだ。今のルドルフ様には、かつての面影は微塵もない。
私、ルドルフ様のどこが好きだったのだろう…私の好きだったルドルフ様は、明るくて優しい方だったのに…
なんだか一気に心がスッと冷めていくのを感じる。
私の大好きだったルドルフ様は、もういないのだ。いつも無表情で、一体何を考えているか分からない彼と、万が一婚約できたとしても、きっと辛い思いをしていただけだろう…
と言っても、既に嫌われている私が、彼と婚約する事なんて絶対ないのだが…
そんな思いでルドルフ様を見つめていると、不意に目があった。
その瞬間、スッと視線を逸らした。これ以上、ルドルフ様と一緒にいたくない。そんな思いで
「皆様、申し訳ございません。急用を思い出しましたの。私はこれで失礼いたしますわ」
自分から誘っておいてちょっと我が儘だとも思ったが、これ以上この何とも言えない空気の中にいたくはないのだ。
「アメリナが帰るのなら、私も帰るわ」
「それじゃあ、俺たちも帰ろうか」
なぜか皆も帰る様だ。せっかくのティータイムだったのに、本当に申し訳ない。
「私の為に、本当に申し訳ございません。また後日、埋め合わせをいたしますわ」
そう伝え、この日は解散したのだった。
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