第10話 アメリナの様子がおかしい~ルドルフ視点~

貴族学院に入学して早3ヶ月。相変わらず物凄くしつこいクレア嬢に、俺のイライラは今にも爆発しそうになっていた。ただ、俺はアメリナに好かれるために、クールな男性を演じている。


もちろん友人の前でもだ。その為、どんなにイライラしても、怒鳴りたい衝動に駆られても、必死に冷静さを装っていた。


そんなある日、友人たちと一緒に、放課後中庭で過ごす。中庭にいればきっと、アメリナが俺を探しにくるだろう。でも、あの女に見つかったら面倒だな。アメリナはなぜかあの女を見ると、気を遣う節がある。まあ、アメリナは伯爵令嬢、あの女は侯爵令嬢、身分の関係であの女に遠慮しているのだろう。


アメリナの為にも、一刻も早く何とかしないと!


アメリナ、まだかな?そう思い、辺りを見渡す。すると


「ルドルフ、誰かを探しているのか?もしかして、クレア嬢か?」


友人の1人がそんなふざけたことを言い出したのだ。


「なぜ僕が、クレア嬢を探さないといけないのだい?」


「なぜって…ルドルフとクレア嬢、とても仲良しじゃないか。いずれクレア嬢とルドルフは婚約をするのではないのかい?」


こいつ、一体何を言っているのだ?俺とあの女が婚約だと!ふざけるのも大概にしろ。


「俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。何をどうしたら、俺とあの女が婚約する話になるんだ!あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!」


あまりにもふざけたことを言うものだから、つい感情的に怒鳴ってしまった。いけない、俺はいつでも冷静でクールな男を演じないといけないのに。俺が急に怒鳴ったからか、友人たちもびっくりして


「悪かったよ。でも、よく一緒にいるから、仲が良いのだと思って…」


そう呟いていた。


「大きな声を出してすまなかった。ただ…僕はあの女に付きまとわれているだけだ。はっきり言って、迷惑以外なにものでもない」


そう吐き捨てた。


「そうだったんだな。あまり表情に出さないから分からなかったよ。そう言えばアメリナ嬢も、ルドルフによく付きまとっているよね」


「付きまとっているなんて、変な言い方をしないでくれ。アメリナと俺は、愛し合って…いいや、何でもない」


クールな男は、好きな令嬢の話をする事はない。ついうっかりと話してしまうところだった。


「モテる男も大変だな。それよりも今日は、アメリナ嬢もクレア嬢も来ないね」


「あの女は来なくていい。むしろ永遠に来て欲しくないくらいだ」


ただ…いつも来るはずのアメリナまで来ないだなんて。もしかして、何かあったのだろうか?


気になって仕方がない。もしかして何か事件にでも巻き込まれたのか?急に心配になった俺は、友人たちに断りを入れてその場を後にする。教室に向かったが、アメリナの姿はない。もしかして、もう帰ったのだろうか?


そう思い、校門を目指すと…


「ルドルフ様!こちらにいらしたのですね」


あの女が嬉しそうにこっちにやって来たのだ。何なんだ、この女は。


「悪いが僕は、今から帰るつもりなんだ。それじゃあ」


「あっ、待って…」


後ろであの女が何か叫んでいたが、無視してさっさと馬車に乗り込んだ。しまった、あの女から逃げる為に、とっさに馬車に乗り込んでしまった。


ふと周りを見渡すと、アメリナの家の馬車がない事に気が付いた。どうやら今日はもう帰った様だ。もしかして体調でも悪かったかな?アメリナが俺のところに来ずにそのまま帰るだなんて…


アメリナが心配でたまらない。本来ならすぐにでもアメリナの家に向かい、アメリナの様子を確認したいが、俺はクールな男で通っている。用もないのに令嬢に会いに行くなんて、きっとアメリナは求めていないだろう。


ものすごく気になるが、とにかくこの日は家で過ごすことにした。翌日、いつもより早く学院に向かった俺は、アメリナが来るのを待つ。早くアメリナの顔が見たい!そんな思いで待っていたのだが、待てど暮らせど、アメリナは来なかった。


先生の話では、アメリナは体調を崩し、熱で学院をお休みするとの事だ。アメリナは普段熱何て出さないが、嫌な事や辛い事があると、熱を出す。もしかして昨日、アメリナの身に何かあったのか?気になって仕方がない。


とにかく今日は、アメリナの家に行こう。そう思い、授業が終わると同時に馬車に乗り込み、アメリナの家へと向かった。でも、かなりの高熱と頭痛に襲われている様で、会う事は叶わなかった。夫人の話では、昨日学院で辛い事があった様だと教えてくれた。


やっぱり昨日、学院で何かがあったんだ。一体誰が俺の可愛いアメリナを傷つけたんだ?


もしかして、クレア嬢。あの女なら、アメリナにあることない事言って、傷つけてもおかしくはない。一度あの女を問い詰めるか?いや、クールな男は、そんな事で女を問い詰めたりしないだろう。クソ…アメリナの理想の男でいるというのも、辛いものだ。


とにかくまた明日、見舞いに行ってみよう。

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