第8話 他の殿方たちとも仲良くなりました
午前中の授業が終わり、お昼だ。いつもならサーラを連れて真っ先にルドルフ様の元に向かうところだが、もちろんそんな事はしない。
「アメリナ、今日は天気もいいし、中庭で食べましょう」
サーラが話しかけてきてくれる。
「ええ、そうしましょう。せっかくだから、殿方も誘いましょうよ。グリーズ様、一緒にお昼を食べましょう」
殿方数人と一緒にいたグリーズ様に声をかける。
「ちょっと、アメリナ…」
「あら、いいじゃない。今日の朝少しグリーズ様とお話ししたのだけれど、とても優しい殿方だったのよ。それにグリーズ様経由で、素敵な殿方に出会えるかもしれないし」
戸惑っているサーラに、そう笑顔で答えた。
「アメリナ嬢、僕たちも混ざってもいいのかい?それじゃあ、皆でお昼にしよう」
嬉しそうにグリーズ様が、友達を連れてやってきた。皆優しそうな殿方たちばかりだ。実は私、入学してからこの3ヶ月、ずっとルドルフ様を追っていた為、全くと言っていいほどクラスの殿方とお話をしたことがなかったのだ。せっかくなので、この機会に仲良くなろうと思っている。
もちろん、グリーズ様とサーラの恋の行方を見守りながらではあるが。
早速皆で中庭に向かおうとした時だった。
「アメリナ」
ん?この声は…
声の方を振り向くと、そこにはルドルフ様が立っていた。一気に体が凍り付く。そんな私に気が付いたサーラが、とっさに私の手をギュッと握った。
「あら、ルドルフ様、一体どうされたのですか?アメリナに何か御用でも?」
「イヤ…その…ずっと体調を崩していたと聞いた。君は辛い事や嫌な事があると、体調を崩すことがあるから。何かあったのかと…別に心配している訳ではない!ただ…」
「心配していないのでしたら、わざわざ話しかけないで下さい。それでは失礼いたします」
サーラが私を連れて歩き出した。
「あっ、待って…」
「ルドルフ様、一緒に昼食を頂きましょう!あら?今日はアメリナ様はご一緒ではないのですね?あの人、ずっとルドルフ様に付きまとっていましたものね。やっと静かにゆっくりと食事が出来ますわ」
クレア様の声が聞こえた。そうか、私、やっぱりお2人の邪魔をしていたのね。その現実が分かった瞬間、涙が込みあげてきた。ダメよ、皆がいる前で泣く訳にはいかない。
そんな私に気が付いたサーラが
「グリーズ様、それに皆さま、ごめんなさい。アメリナの体調が思わしくないので、今日は2人で食事をとりますわ」
そう言いだしたのだ。
私、一体何をしているのかしら?せっかく前に進むと決めたのに!
「サーラ、ありがとう。でも私は大丈夫よ。さあ、皆で中庭で食事にしましょう」
いつも通りの笑顔を皆に向ける。
「でも…」
「サーラ、ありがとう。でも本当に大丈夫よ。それに私の為に、ルドルフ様に意見してくれて、とても嬉しかったわ。あなたは私の最高の親友よ」
そう伝え、サーラをギュッと抱き着いた。本当に私の最高の親友。だからこそ、サーラにも幸せになって欲しい。
「もう、アメリナったら」
そんな私たちのやり取りを見ていた令息の1人が
「アメリナ嬢とサーラ嬢、本当に仲が良いのだな。その…なんて言っていいか分からないけれど…あの…」
きっと私とルドルフ様の間に、何かあった事に感づいているのだろう。
「皆様にもお見苦しいところをお見せしてごめんなさい。私、ずっとルドルフ様が好きだったのですが、先日フラれてしまって。それで、落ち込んでいたのです。ですが、もう大丈夫ですわ。これからは色々な殿方とお話できたらと思っております。どうか仲良くしてくださいね」
笑顔で彼らに伝えた。
「そうだったんだね。でも、男はルドルフ殿だけではないよ」
「そうだよ、アメリナ嬢。君は明るいし可愛いから、すぐにいい男が現れるよ。現に目の前に、いい男たちが沢山いるぞ」
「おい、お前、ちょっと図々しいぞ。でも、皆いいやつばかりだから…その、これからも仲良くしてくれると嬉しいな。もちろん、その…サーラ嬢も…」
少し恥ずかしそうに、グリーズ様が呟く。
「わ…私も今まで殿方とは全然お話ししたことがなかったので、仲良くしてくださるとうれしいです。どうぞよろしくお願いします」
サーラも少し恥ずかしそうに頭を下げている。
「さあ、こんなところで話をしていないで、中庭に行こうぜ。俺、もう腹ペコだ」
「俺もだ。せっかくこんなに美しい令嬢が2人も一緒に食べてくれるって言っているんだからな。1分でも無駄には出来ないな」
そう言って笑っている殿方たち。今まではルドルフ様以外の殿方なんて、全く興味がなかった。でも、こうやって話してみると、皆素敵な方ばかりね。
もっと彼らと仲良くなりたい。素直にそう思ったのだった。
※次回、ルドルフ視点です。
よろしくお願いします。
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