第38話 何気ない日常の中に
「おはよお姉ちゃん。って…どうしたの!?随分とやつれてるみたいだけど…」
「ん?そんなことないよ。安心して。それよりも…お母さんたちは?もう出かけてるの?」
「そうみたい。お母さんはもう仕事に行っちゃってるみたいだから、お姉ちゃんこれ温めてから食べてね‼」
妹が指差す方向を見ると、ラップをされたお皿が複数置かれていた。
私は妹の言葉にうなずき、ラップを取り外した後一部を温めた。
「そういえばお姉ちゃん。最近目の隈もひどいよ?何かあったの?私で良ければ力になるよ?」
妹がそう私に言葉をかけてくれたが、私は内心穏やかではなかった。
つい先日の発言が私の心を揺さぶり余計に不安にしているのだ。でもそれは決して声に出したり表情に出したりはしない。
妹が悪いわけではないことがわかっているからこそたちが悪いのだ。
付き合っていることを妹にも明かしたとはいえ、妹が私のしたことを知ればわたしのことを責めるだろう。
今までのようにお姉ちゃんと慕ってくれることはなくなるだろうし、自分自身や両親も含めた家族に大きく迷惑をかける事になる。
お父さんとお母さんはあんな事をしたわたしのことを、どう思うだろうか?
私のせいで、今のこの家の環境が変わってしまうかもしれない。
今のように比較的平和で豊かな生活が一変するかもしれない。
それも私のせいで…私が悪いことはわかっている。
「目の隈?あぁ…そうね…ちょっと最近は勉強しないといけないことが多くて困ってるのよ。勉強の内容は難しくなっていくばかりなのに、時間は同じだから困るわ。」
「お姉ちゃんも勉強困ってるんだ…実は私もなの。私なんてまだ中学生の内容なのに、こんなだから高校生になってからの生活が心配だよ。」
「別に心配しなくても大丈夫よ。中学生の内容はたしかに重要だし、これからすることの基礎的な部分よ。でも、全てを完璧にする必要はないわ。私だって中学校の時にテストで百点…まぁ満点を取ったことはないわよ。」
「そうだっけ?」
私はお母さんが作ってくれた朝食を頬張りながら、テレビのニュースを聞き流していた。
妹と会話している間も常に何かをしながらになっていて、我ながら行儀が悪いと思ってしまった。
「まぁまだまだ時間はあるし、挽回できるわよ。高校生になって中学校の内容ができないっていうのは少し困るけど、それだって勉強すれば自然と身につくわ。」
「お姉ちゃんみたく私も勉強頑張らないとな〜でもやる気が起きないんだよね。」
この日常がずっと続いてほしかった。でももしかしたら…私のせいでこれが最後になってしまうかもしれない。
「…ごちそうさま。お姉ちゃん食べ終わったら台所の所に入れておいて。出来たら水で浸しておいてくれると嬉しいな。」
「わかってるわよ。いつもやってることだからなにも言わなくてもいいじゃない。」
「わかってても言ったほうが良いかな〜って思って‼お姉ちゃんはいつもと同じくらいに出るの?」
私は少し考えた。今日は特段連絡を取っていないし、一緒に行く約束もしていない。
今から連絡をとっても、連絡がつかない可能性の方が高いだろう。
そう考えれば普通に登校した方が良いだろう。
「今日はいつもよりも少し早く出ようかな。だからいつもみたいに食器を洗えないんだけど…今度私が変わるからお願いしてもいいかな?」
「別に大丈夫だよ?私は、家事するの好きだし‼私は登校までに時間かけても大丈夫だからね〜やっぱり家事してるときが一番楽しいかも‼」
「うん…そうかな?そうかも…」
私は家事が余り得意ではないし、妹みたいに沢山の家事を同時にこなすことも出来ない。それに家事だって好きでやってるわけじゃない。
「そういう風に思えるのは良いと思うよ。私は真似できそうにないけど…」
「お姉ちゃんだって料理できるじゃん‼十分すごいと思うよ‼私はりょうりはあまりできないしなぁ…今度お母さんから料理を習おうかな?」
「その時は私も一緒に習おうかな〜私ももっと料理を勉強したいし。」
そうは言ったもののどうなるかなんてわからない。
今日がその運命の分かれ道となるのかもしれない。
「さて…と。それじゃあ私は学校に行こうかな。気をつけてね。」
「わかってるって‼お姉ちゃんこそ、車とかに気をつけてね?車とかに轢かれちゃったりしたら大変だよ?」
「轢かれないわよ…まぁ忠告はちゃんと聞いておくわ。ありがとうね。」
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