第37話 自問自答
妹が彼の事を好きといった時、私は心のなかで自問自答していた。
それは今までにも少し感じていた、善意の葛藤とでも言うべき物なのだろうか。
私は今、経緯は別として彼と付き合っている。でもそれは本質的には違う。
私が彼に罰ゲームとして交際を申し出たのだ。それを彼は了承してくれたため、今の私がある。
でも今後どうなるか私は分からない。
もし明日にでも罰ゲームの事を誰かが漏らしたら?他にも彼自身が気づいてしまうなんてこともあるかもしれない。
そうなれば彼は私の事を信用しなくなるだろうし、この関係も終わってしまうだろう。
でもそれは罰ゲームとして告白してしまった私の運命…つまり私自身がどうにかしなければいけないのだ。
まず第一に友達には釘を刺した。もしこれが上手く行けば友達からの密告というパターンはなくなるだろう。だけどこれを確実視してはいけない。
私自身が嘘をついてきたように、彼女たちだって嘘をつく。
嘘をつかない人間なんて居ない。私はその考えに基づいて今後も行動しなければいけないのだ。
彼女たちはもちろん仲の良い友達だ。でも仲の良い友達の中にもそれぞれの事情はある。
今回は私を含め全員が共犯だ。もし彼にバレたら、どういわれるか分からない。
問題が大きく発展すればそれこそ面倒くさいことにも発展する。これは私を含めて数人で解決しなければいけない事案だ。
「はぁ…」
私はため息をつき、頭を抱えた。
妹は本当に彼の事が好きなのだろうか?もしそうなら…私は一体どうすればいいの?
私と彼の関係性を考えれば私が素直に身を退くべきなのかもしれない。いや退くべきなのだろう。でも…頭ではわかっていても心はそれに納得していないのだ。
彼に真実を打ち明けて誠心誠意謝罪をするというのも一つの手かもしれない。それに自ら謝罪をしたほうが露呈して問い詰められた末に謝罪をするよりも、相手に伝わるかもしれない。
でもそれをしたら…さっきも考えた通りの結果になるだろう。
彼は私の事を軽蔑し、その末に私を振るだろう。
私は友達からも距離を置かれ一人で過ごす日々を送ることになる。今まで私に優しくしてくれていたクラスの皆もそんな事をしているとわかれば私に近づいてくることもなくなるだろう。
私はその事を理解して思わず涙がこぼれた。
その場の流れに身を任せて行ってしまった行為が自らの首を重く締め付けていることに今気づいた。
あの時…私が流されずに自分の意思を伝えていればこんなことにはならなかったのかもしれない。
私はこれから…どうすればいいのだろう。
部屋のベッドの上に寝そべり私はひたすら考える。
思考を巡らせてひたすらに考え続けた。でも答えは見えず、それどころか悩みはどんどんと深く大きくなって私の心を締め付ける。
悩みは私の心に根づき、今後も蝕み続けるだろう。悩みは私自身で解決しない限り一生根付き後悔を私に教え続けるだろう。
そして眠気にも襲われていた頃…私は一つ案を思いついた。
簡単なことではないし、むしろ私にとっては大きな困難とも言えるだろう。
今までの『友人たちの口止め』や、『騙し続ける』という考えは到底長続きするとは考えづらい。いづれは綻びが見つかり追求されるだろう。
そうならないようにしつつ、私自身にも極端に大きな被害をもたらさない方法…それはもはや一つしかない。
「私が彼に全てを打ち明ければ…包み隠さずに全て話せば彼は私の事を許してくれるかな?」
私は自分自身に質問するかのようにそうつぶやいた。
答えは返ってくることはなかったが、自分の中で一種の確信のようなものを覚えた。
打ち明ければ今感じている苦痛も、心苦しさも全てなくなる。
ようやく前を向いて正しい関係になれるのだ。もちろん必ずしも上手くいくとは限らない。
でもそれは私への罰…それを乗り越えてこそなはずだ。
今までの口裏を合わせるようにして動くのはいずれ崩壊する。ならばそうなる前に自分から彼に打ち明けてしまえばいい。
私はそう覚悟を決めて、明日に向けて早々に眠りについた。
翌日…私はいつもよりも早く目を覚ました。
昨日はそこまで感じていなかったが、今日になって私はとても緊張していることに気づいた。
両腕が少し震えているし、両足も建てないほどではないが震えている。
体調不良の人みたいにフラフラと歩きながら私はリビングへと向かった。
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