第27話 それぞれの思い
彼女の部屋に戻ってからはお互い、良い時間を過ごすことが出来た。
勿論男子が憧れるような行為は一切なかった。
付き合っている男女なら…と考えている人もいるかも知れない。
だがそんな事をして、自分の人生を破滅させたくはない。
ましてや責任が取れる年でもない。
下手なことが起きて大変な事態に発展したら面倒くさいことになるのが目に見えている。
他人から見たら付き合っている男女で、仲睦まじいように見えるのかもしれない。
でも細かいところまで他人は知っていない。
例えば俺と彼女の事をすべて知っている人がいるだろうか?
それぞれの両親であれば確かに多くのことを知っているだろう。
例えば俺の両親の場合であれば、俺が今までにしてきた事を始めとして様々なことを知っている。
関心がない場合にはそれも例外になってしまうものの、うちの家族にその問題は当てはまらない。
そしてそれは彼女の両親にも同じことが言えるはずだ。
聞いた話しでは、彼女の両親は共働きらしくあまり子どもとの時間を取れていないそうだ。
それでも、今まで顔を合わせない日はなかったという。
彼女の両親が子供に興味がないと言うわけでもなく、むしろちゃんと愛情があるから仕事が辛くても毎日毎日時間を作っているのだろう。
俺がそのことについて何かを言えるわけでもないけど…
彼女は彼女で苦しんでいたのかもしれない。彼女はもっと両親との時間が欲しいのではないか?と俺は心のなかで考えながら、過ごしていた。
今、彼女はどんな思いで俺の隣にいるのだろうか?
後悔?焦燥?それとも…辛苦?
彼女の心の内を全て理解できるわけがない。
でもとても気になる。
彼女にとって俺はどういう立ち位置になっているのだろうか?
彼女が抱えている感情が『後悔』であるならそれでいい。
彼女は自分のしたことを後悔しているのだろう。
嘘告をしたことによって彼女は俺と付き合えている。
いつかその重圧に負けて俺にそのことを吐露してくるかもしれない。
そうなったら…俺は彼女のことを切り捨てればいいだけだ。
それはもう自然な流れだろう。
俺自身の目的であった『惚れさせてから振る』というのは未達成となるが、だとしても彼女には後悔を残すことが出来る。
そして彼女が抱えている感情が『焦燥』であればそれも良い。
彼女が、もし俺に嘘告の事がどうしよう…と悩んで、常日頃から精神をすり減らしていたら…いつか限界がやってくるだろう。
その時に同じ末路へと誘導するだけだ。
最終的に目的が果たせなくても…それで彼女が後悔してくれればそれで良い。
時間が過ぎるのは早く、いつの間にか17時を回ろうとしていた。
内心、そろそろ帰りたいと考えていたが付き合っている彼女の手前下手にそんなことを言えなかった。
「ふぅ…もう5時になっちゃったね。ちょっと親に連絡してきてもいいかな?」
「勿論良いよ‼あ〜でも学校もあるもんね。どうする?まだうちにいる?それとも家に帰る?」
「そうだなぁ…18時になったら家に帰ろうかな。でも夕飯もあるしなぁ…」
俺は少し迷いながらも、彼女から帰ることの提案をしてくれたことで俺も帰れるようになった。
彼女の提案を飲むというのはどこか気に食わなかったが、これもしょうがないことなのだ。
というより両親との取り決めで、夜遅くまで遊ぶ場合には事前に許可を取らなければいけない決まりとなっている。
しかし今回は事前に連絡をしていない。
勿論彼女の家に行くことは伝えてあるが、それ以上のことは伝えていない。だから夜遅くまで外を出歩いているわけにはいかないのだ。
「う〜ん…申し訳ないんだけど、そろそろ家に帰ることにするよ。あんまり遅いと、親に叱られちゃうから…それに、一度注意されるとなかなか同じことを頼んでも許してくれなくてね…だから、ごめんね?」
「いいよ。私の両親だって変わらないもん。和真くんの両親の気持ちも、分かるよ。」
「ありがとう。それじゃあ帰るね。」
「うん‼後でメッセージ送るから、ちゃんと返信してね‼」
「…分かった。」
俺は急に違う話題になったことに一瞬驚きながらも、彼女の頼みを承諾した。
そして俺は荷物を持って部屋を出た。
彼女は俺が部屋を出るのと同時に、俺の後をついてきた。
「別についてこなくても良いんだよ?」
「良いの。私がついていきたいと思ったから、ついていくだけ。貴方は気にしないで。」
「…ありがとう。」
「ふふ‼どういたしまして。」
俺は玄関先で、彼女に見送られながら帰路についた。
両親には怒られずに済んだので内心ホッとしていた。
そしてそんな時…彼女からメールが届いた。
作者の聖羅です!!
27話目をお読みくださりありがとうございます!!
次の投稿は明日の24:15となります。
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