第15話 嫉妬と決心

3時間目になり、自習の時間になった。

「それでは皆さん。自習を始めてください。」


教壇に立った教頭がそう言って、教壇から降りた。

更に先生は教室から外に出て行ってしまった。

俺は、先生が自習の監督をすると言っていたのにすぐに教室から出ていってしまったことに少しの疑問を覚えた。そして…すぐにクラスがざわめき始めた。皆勉強をするわけでは無く、川田先生の話をしているようだ。


「やっぱり川田先生いないと寂しいよな〜」

「それな‼俺もめっちゃ川田先生に教えてもらいたいし‼」


どうやら多くの生徒が川田先生を心配しているようだ。まぁあの先生が突然高熱を出して欠席したとなれば、心配になるのも当然だろう。

俺は予習を進めるために、再びノートに目線を戻した。


そう思った俺は川田先生の授業分の予習を終えてから、明日の分も進めておくことにした。


「ねぇ?ちょっといいかな?」


俺がノートを見ながら明日の予習をしていると、クラスメイトの一人が話しかけてきた。


「ねぇねぇ和真君。1つ聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

「どうしたの?分からないところでもあるの?」


俺はそう答えながら話しかけてきたクラスメイトのことを見た。

俺に話しかけてきたのは、ほとんど関係の無い女子生徒だった。


彼女の名前は確か…鈴谷茜とかいった気がする。

彼女が話しかけてきた理由は不明だが、聞きたいことという以上、何か分からないところでもあるのだろうか?


「和真君って物理得意じゃん?私、物理苦手だから教えてほしいんだ。」

「それは別に良いけど…俺は物理がすごく出来るってわけじゃないよ?」

「それでもいいの‼分からないところを教えてくれるだけで十分だからさ‼」


鈴谷はそう答えながら俺の席の隣までやってきた。そしてすぐにノートを開いて、分からないところを指さしてきた。


その問題を見ると、一番最初の方の単元の問題だった。

この単元からだとは…先が思いやられる。俺はそう思いながらも、一つ一つ丁寧に説明していった。

彼女は俺の説明を聞いて大きくなずいていた。


「なるほど……和真君はそんな考え方で解いてたんだ。」

「まぁね。俺としてはそっちの方が効率的かな?って思っただけだよ?」

「本当に凄いね‼私なんてただ暗記するだけで、全然理解してないからさ‼」


彼女はそう言いながら、俺が説明をしたノートをまじまじと見ていた。

そして俺は彼女に話しかけた。


「確かに暗記も大切だけど、理解しないと公式の意味も分からないから、そこもちゃんと理解してね?」

「うん。ありがとうね!!私、もっと頑張ってみるよ!!」


彼女はそう言った後、俺にお礼を言った。

彼女の中で分からないものが解消されたのなら良かった。

自分の得意科目である物理を人に教えたことで、自分の理解が少し深まったことを実感していた。

そして俺は再びノートに目線を落とした。しかし…俺の目線はすぐにまた教壇の方に戻って行った。


なぜなら教頭先生がすぐに帰ってきたからである。

途端に教室中が静かになり、再び静寂に包まれた。勉強道具以外のものを取り出している生徒もいたが、すぐに片付けたようだ。


なにしろこの学校は基本的にスマホの使用は禁止だ。

使用している所を見つかった場合、一度目の場合では先生との面談だけで済む。二度目からは親に通知が行き、三回目には解約をしてくれと勧告される。


スマホを利用して学習することを否定するわけでもない。

それに俺個人が言えることではない。他人に注意をすることくらいしかできない。


そんなことよりも自分のことに集中しなければ…

中間テストも迫ってきている。夏休みが明けて約1ヶ月後に行われると事前に連絡されていたから、ある程度は準備していたけど…量が多い。


中間テストまでの日数は後18日…二週間と少しだ。

必死に勉強をして今回は良い点をとらなければ…


そう。これも目標達成に近づくために必要な事だ。

あの女の気持ちになって考えてみれば簡単だ。まず今まで見てきたことから推測するに、頭の良いやつは大抵好かれる。


好かれ方は様々だし、それが一概に好意につながるかというとそうではない。

ただ周囲の人間からは尊敬されるし、自然とお互いに優しくするようになる。


そして…既に付き合っている場合、付き合っている相手からすれば【自分よりも彼は頭が良い】というのは必ず頭の何処かに刻まれると思う。


彼女の意識から変えることで、着々と準備を整えることが出来るだろう。


確か三ヶ月…それが俺と付き合う期間のはずだ。

夏休みを含めないと考えれば、残りは1ヶ月くらいだ。


この残りの1ヶ月で彼女の心を完全に掴まなければ…

俺はそう決心して、再びノートに目線を落とし、勉強を続けた。








作者の聖羅です!!

15話目をお読みくださりありがとうございます!!

次の投稿は今日の12:15になります‼

是非見に来てくださいね‼


深夜に投稿するのは理由があり、ちょっとした調査を兼ねていますのでご容赦ください。


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