第9話 目標の達成のため…我慢!!

夏休みが終わり、また前期と同様の生活が始まった。

教師から出される課題をこなし、休日は自分の趣味に没頭する生活になる…そう思っていた。


「…電話?だれからだ?」


俺は画面をみてから一人ため息を付いた。

休日は勿論家から出ない。外はまだ暑く、とても外で活動することなんてできないからだ。


電話は藤沢美奈からである。

おそらく友達から『電話してこい‼』とでも言われたのだろう。

一応は付き合っているので、電話に無視することはあまり良くない…誤解を招いてしまう。


「出なかったら何かと言われるだろうし、電話に出るか。」


俺は何の話をするのか気になりつつも、電話に出ることにした。


「はいもしもし。」

『おはよ〜‼今日は休日だね‼』

「うんそうだね。休日だね。」

『夏休みにも誘ったとおりなんだけど、一緒に何処か遊びに行かない?』

「あ〜そう言えばそんなこと言ってたね。」


内心すごく断りたかった。それでも『目標達成のためにはこういった機会も必要だ。』と考え、他の考えを強引に捨てた。


「分かった。それでどこに行きたいとか要望有る?要望があれば、基本的にはそこにしようと思うんだけど。」

『う〜ん…正直遊びに行こうとは言ったけど、そういうのはないんだよね。』

「なるほど。どちらにせよ、ここにはそんなに遊べる場所はないからなぁ…あっいいところ思い出した。」


数年前の夏、母と父に誘われて行った場所がある。

とは言えあれは家族だから簡単に行けたのであって、唐突に行けるものではない。

事前準備が必要な上、行った場所の都合上休みになることだって有る。

というか今もやってるのかさえ分からない。


『えっどこかいい場所有るの?』

「まぁ…あるには有るよ。でも美奈…行けるかな?」

『どこ?』

「俺の家の最寄りの駅から数駅行った所に、キャンプ場があるんだ。昔そこでキャンプをした記憶があるんだ。そこなら…って思ったんだけど、虫とかもいるからさ。」

『私、虫は大丈夫だよ〜』

「そうなの?」

『うん。』


しかし俺個人が持っている用具はない。

必要なら事前に父親や母親に言わないといけない。

俺の父親と母親は事前に連絡せず、直前に何かをお願いするということを嫌っている。

つまりキャンプは必然的に不可能なのだ。


「誘っといて悪いんだけど、そう言うのは事前に親に連絡をしないといけないからさ。冬にでもどう?そこでなら行けると思うんだけど…」

『そっか〜残念だけど、冬に行こうね‼』

「…遊べる場所。何なら東京行く?」

『う〜ん…そうしよっか‼じゃあ明日待ち合わせて行こうね‼』


そう言うと藤沢美奈は電話を切ってしまった。

もし行くのであればもう少し決めないと…それに金もかかるだろうから、準備しておかないと…


バタバタと準備を始めた俺だったが、そう言えば外用の服をあまり持っていないことに気づいた。

今までは外に出る機会なんてほとんどなかったから、必要なかったけど私服が必要になるとは思ってもなかった…


「…やばい。予想よりも外用の服がない。」


俺はとりあえず外に出ても問題なさそうな格好に着替えて、直近の洋服店に向かった。

洋服店に入り、試着室で何着か試した。

服装は他人の印象に強く影響するから、ここで手を抜くことはできない。

どちらにせよ外用の服は今後必要になるはずだ。必要になるのであればある程度良いものを買いたい。


「これとこれは…なかなかにいい感じだな。これなら外でも着れそうだ。」


俺は数着購入し、支払いを終えた。

貯金は吹き飛んだが、必要経費だと考えれば何も惜しくはない。


「はぁ…予想よりも貯金がやばいな。これ足りるか?」


幸いにも電車費はちゃんと別途のお金で支払うことが出来るため、問題ない。

とはいえ東京でどれだけお金を落とすことになるのかわからない。


「妹に借りるってのはな…流石にやばいだろ。何考えてるんだ俺。」


折角話しをすることが出来るようになり、最近も交流するようになったのに『金を貸してくれ』というのは流石に無いな。というかそんな事をすれば『話をするようになったのは、金を借りるきっかけを作るためか‼』と言われかねない。


「ふぅ…覚悟を決めるか。」


俺は残っている貯金3万円の内、最大で2万円を支出することを覚悟した。


「くそぅ…あんまり大きく支出しないことを祈るしかないか。」


ここで俺はとある話を思い出した。

『お金や労力を費やした相手に対して、その分の成果を得たいと考えて手放すのがもったいなくなる』という心理だ。


これは友達の中に必ず一人はいるであろう『自称恋愛マスター』もとい、やたらと恋愛に詳しかった中学校の友達から聞いた話だ。

試してみる価値は…有るかもしれない。

遊びに行くという都合上、相手も支出せざるをえないはずだ。効果はあるかもしれない。


ここで一気に落とすことは勿論不可能だろう。

ちゃんと積み重ねるしかない。そして…最後には全力で振ってやる‼








作者の聖羅です!!

9話目をお読みくださりありがとうございます!!

次の投稿は本日の12:15になります‼

是非見に来てくださいね‼


夏休みは全部断ったもんね。仕方ない!!

それにこういう回もあって良いよね!!関係は大きく進んでいきます!!

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