第8話 不満と苛立ち
『え〜これから校長先生のお話があります。全員心して聞いて下さいね。くれぐれも寝たりしないでください。』
俺は少しの眠気と戦いながら放送を聞いていた。
この学校は数年前から放送での始業式や終業式といった作者の聖羅です!!
学校名物である『校長先生の話が長い』はここでも健在で、ここの校長先生の話はとにかく長い。
学生を殺す気なのか?と問い詰めたいくらいの時間話すので、全ての生徒から若干嫌われている。
とはいえ、放送になった事はとても感謝している。
体育館などで昔は話をしていたらしいが、当時の話では体育館の冷たい床に長時間座り続けなければならず、とてつもないストレスだったらしい。
しかし今ではある程度座り慣れている椅子で、授業を受けるのと同じように聞いているだけでいい。そう考えれば随分と楽になったのかもしれない。
当時の辛さを知らないので変な事は言えないけど…おそらく随分と楽になったのだと思う。
『え〜皆さんおはようございます。夏休みも終わり皆さん如何お過ごしでしょうか?私は…』
校長先生は話だした。今日は担任がいないせいか、クラス中に不満の声を漏らしている人が多くいた。
「あ〜校長先生の話長いんだよな。さっさと次の校長に変わってくれないかな?」
「いやいや〜もしかしたら次の校長の方が長いかもよ?」
「そんな訳ないだろ〜」
「いやいや。意外とあるかもしれないぞ?」
「というか暇だよな。なんかしない?」
「構わないけど…一体なにするのさ。」
彼らはスマホを取り出して、ゲームをやりだした。
しかも彼らは無音でやっているわけではなく、そこそこ大きい音量でゲームを始めたのだ。
周囲の人も彼らが遊びだしたのを見て、各々の活動を始めた。
ある人は同様にスマホを取り出して音楽を聞き出したり、本を取り出して読書を始める人も居た。彼ら彼女らは先生が来るかもしれないということを理解していないのだろうか…
十分ほど経った。今まで耐えてきたが流石に苛立ちを覚えてきた。
前までは注意なんてできなかったけど、今日は勇気を出して注意をすることにした。
それに周囲の人も迷惑そうに彼らの事を見ていた。
全員が全員彼らのように遊んだりしているわけではなく、中には彼らに対して厳しい視線を向けている人も居た。
俺は内心ビクビクしながらも彼らに話しかけた。
「なあ。今は校長の話を聞く時間だろ?確かに校長先生の話は長いよ。俺だってそう感じるからね。でもさ、だからといってスマホでゲームをするのは違うんじゃないかな?」
「はぁ?別に俺達の勝手だろ。」
「その通りだ。君たちの勝手だ。だがな、迷惑そうに君たちの事を見ている彼らに気づかなかったか?周囲に迷惑をかけるのは辞めてくれ。」
俺がそう言うと彼らは周囲に視線を向けた。
彼らに向けられている視線は、俺の意見への同調や共感のようで少し居心地悪そうにしていた。
「…わかったよ。ゲームは辞める。」
「良かった。ゲームなんていつでも出来るでしょ?今やれなくたって大丈夫なはずさ。確かに大切かもしれないけどね。」
「あぁ。」
「それに先生が居ないからゲームをしていたわけでしょ?つまり先生が居たらこんな行動をしていなかったはずだ。人によって態度を変えることはあまり良くないと思うよ。」
俺は人によって態度を露骨に変える人が嫌いだ。
裏でなにか言っているかもしれないという懸念は有るが、特に思うことはない。その点で言えば、藤沢美奈は素晴らしのかもしれない。まぁ裏があったわけだが…
俺は席に戻り、再び話を聞いた。
同じような内容を何度も話されると流石に『イラッ』ときたが、想像しているよりかは早く終わったため意外とストレスなく終えることができた。
「ふぅ…」
「和真君お疲れ様。急に立ち上がった時はどうしたのかな?って思っちゃったけど、注意をしてくれたんだね。本当にありがとう‼」
「いや、当然のことをしただけさ。正直な所、俺も校長先生の話は長いと思ってるよ。それに…こういうのはあれだけど、あんまり面白い話じゃないとも思う。だけど、スマホをされるのはちょっと…ってね?」
「私そろそろ限界だったから、私の代わりに注意をしてくれて本当に嬉しかった。ありがと‼」
彼女はいつもと変わらない表情でそう告げた。
更に彼女は俺が話し始める前に続けてこう言い放った。
「当然の事だって和真くんは言ってるけど、たとえ当然の事だとしてもそれを実行できる人は少ないと思うんだ。その…かっこいいと思う‼」
「…ありがとう。」
彼女の裏の顔を知らなければ…素直に喜べていたかもしれない。
作者の聖羅です!!
8話目をお読みくださりありがとうございます!!
次の投稿は明日の7:15になります‼
是非見に来てくださいね‼
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