第6話 メッセージは繋がらず
夏休みを迎えた私は、友達からの指示を受けて和真君に連絡を取ることになっていた。
「はぁ…どこか遊びに誘えって言われてもなぁ…」
私は友達や家族とくらいしか一緒に遊びに行ったことがない。
小学生、中学生と基本的に女子としか関わりを持ってこなかった私にとって、男子を遊びに誘うというのはとてつもないハードルだ。
「う〜ん…ここの近くに遊ぶことが出来る場所ってあったかな?」
スマホで周囲のスポットを探ってみたが、この周辺にはやっぱりない。
つまり遠出をしなければいけないということだ。
「遠出はしたくないなぁ…遠出するとなるとお金もかかるし、移動にも時間が掛かるし大変だしな…」
そう…ここはなんといっても都会とも田舎とも言えないなんとも不思議な地域なのだ。
都会へのアクセスも悪くはないし、なんならそう高い金額を出さなくても遠出することは出来る。
ただ、心象的に面倒くさいというのが勝ってしまうのだ。
「でも一応は付き合うことになったわけだし、遊びに誘わないというのは問題よね。和真君だって心の中では遊びたいって思ってるだろうし…誘ってみようかな。」
そして気づけば私は、メッセージアプリを開いて遊びの誘いの連絡をいれていた。
「あ〜送っちゃった‼すぐに返信返ってくるかな?それとも時間かかるのかな?」
私は頭が混乱していた。というか女の子の方から遊びの誘いが来たら、流石に気づくよね?
メッセージを送った時間帯としては昼。つまりスマホを常日頃から見ている彼は、よっぽどのことがない限り、私からのメッセージに十分気づいている時間のはずだ。
「なっのにぃ…なんで既読にならないの!?このスマホ何処か壊れてるんじゃないの!?」
私はスマホをまじまじと眺めてそうつぶやいた。
メッセージを送ってからはや一時間…たとえ寝ていたりして、起きていなかったとしてもそろそろ気づいているはずだ。
「うぅ…これじゃあ意味ないじゃない。連絡しとかなきゃ…」
私はメッセージを送ると、友達に伝えて以降何も連絡をしていなかったので連絡を取ることにした。
『ねぇ杏〜既読にならないんだけど!!』
『急に送ってきたからなにかと思ったら…既読にならないの?』
『そうなの‼信じらんない‼』
『まぁまぁそういうものだって思いなよ。というかそれ私じゃなくて、志保に言ってよ〜志保のほうがそういうの分かると思うよ。』
私が最初に連絡を取ったのは鈴谷杏という茶髪の女の子だ。
小動物みたいな感じがあって私から見てもとてもかわいい。男子からの人気も高いし、なんなら他校の生徒にも名前を知られているくらいだ。
でも私は彼女の裏の顔を知っている。
この高校に入って、彼女と接するようになったが驚くことに彼女は大学生と付き合っているらしい。まぁ…正直驚いたけどそこまでだ。
そして彼女が相談相手としてオススメしてくれたのは高木志保というおさげの女の子だ。
彼女は黒髪の『ザ・清楚』という感じの女の子で不意に見せる笑顔で男子のことを虜にしている。
彼女は勉強にも強い。数学や物理などの理系科目は常にトップで、なんなら先生すら一部叶わないところがあるくらいだ。
文系科目だって常にトップ10以内には入っているすごい子だ。
私を含め、彼女に勉強を教えてもらってる人も少なくはない。
そんな彼女は小学生、中学生と以外にも男子と付き合っていたらしい。
でも中学、高校に入る時にそれぞれ別れてきたらしい。男子とも何度も遊びに行ったことがあるらしい。
『前にも言った通り、志保なら穴場とか知ってるんじゃない?後は普通に遊べる場所も知ってると思うよ。』
『分かった‼少し連絡取ってみる‼』
『頑張って〜まぁ私に出来ることがあったら言ってよ。出来る限り手伝うからさ‼』
「はぁ…滅茶苦茶言ってくれるなぁ。」
私は志保に連絡をしてみた。
しかし、志保はすぐに連絡できるような状況ではないらしく家に帰ってから返事をするとのことだ。
「返事も返ってこないし…って思ったら返ってきた!?」
私はとても驚き、スマホを落としそうになる。
スマホをしっかりと握り直し、和真君からの返事を確認した。
彼から返ってきた返事は…『NO』だった。
正確にはこう書いてあった。
『少しやらなければいけないことを見つけたので、それをしてきます。私も本当は一緒に遊びに行きたかったのですが、どうしてもしないといけないことがあるので…』
「もう…何なのよッ!!」
私はスマホの電源を落としてうなだれた。
こっちから連絡をして、わざわざ時間を作るつもりだったのに…
「はぁ…もういい!!私知らない!!」
私はそれからも夏休み中に何度か連絡をしたが、全て用事があると言って片付けられてしまった。
これが普通の彼氏彼女の関係だったら、確実に別れるだろう。というか夏休み中ずっと用事があるってなにがあるのよ!!
そして友達との約束が果たせないまま、夏休みが終わってしまった。
彼女たちにもちゃんと説明をして、理解してもらえた。
しかし私は夏休みが明けてすぐに驚愕することになった。
なぜなら私の知らないかっこいいイケメンが彼の椅子に座っているからだ。
話しかけると、和真くんだった。
夏休み中に自分を変えるために頑張ってたらしい。
正直本当に彼なのか心配になるくらいだった。というかものすごく私のタイプだなぁ…これ嘘告って事明かさなければ付き合ったままでいられるんじゃ…
夏休み中に遊びに行くことはできなかったけど、誰の目から見ても彼は変わった。
私は彼が夏休み中に誘いを拒否し続けた理由がなんとなく分かった気がした。
きっと彼は夏休み明けで私の事をびっくりさせたかったのだろう。そう信じたい…
作者の聖羅です!!
6話目をお読みくださりありがとうございます!!
次の投稿は明日の7:15になります‼
是非見に来てくださいね‼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます