第2話 恋は盲目、優しさが身に染みる

「ねぇねぇお兄ちゃん。そう言えば詳しい話を聞けてなかったから、お話を聞きたいな〜どうして急に美容室の話をしてきたの?」

「…それを話すと長くなるぞ?」

「別に良いよ。私はお兄ちゃんの話が聞きたいなぁ〜」


俺はあの時の事を思い出しながら、少しずつ佳奈に打ち明けていった。

佳奈は普段は俺の話なんて聞き流すのに、今日は聞き流さないで真面目に聞いてくれた。


「ひっど…その女最低だね。ネットにさらしても怒られないレベルじゃない?」

「そんな事をしたら同じレベルになっちゃうだろ?確かにそういう事をしたくなるのは分かるけど、それをしたらこっちが痛い目を見るかもしれない。」

「でもお兄ちゃん…このまま退こうとか考えてるわけじゃないんでしょ?」

「当たり前だ。俺だって良いようにされたままってのは気に食わない。」


俺はそう言って佳奈との話を切り上げようとした。

佳奈は『そうはさせまい‼』と言うかのように俺の前に立ちふさがると、更に話を聞かせてくれとねだってきた。


「お兄ちゃん。私ね、もっとお兄ちゃんの話を聞きたいの。」

「はぁ…俺の話を聞いても特に意味はないと思うけど。」

「良いから‼まずはその女について教えて?」

「分かった。名前は藤沢美奈だったはずだ。常に笑顔を絶やさず、周囲にも優しくしているから、彼女の味方は多いだろうな。」


そう…彼女の周囲にいる人物もまた一癖、二癖ある人物だ。

その人達を掻い潜った上で彼女を…いや、あの女に鉄槌を下さなければいけない。


「ふ〜ん。その女の人は周囲に優しい人っていう印象付けをしてるみたいだね。」

「まぁそうだろうな。実際、彼女の本性を知っている人は少ないと思う。今回気づけていなかったら…俺も騙され続けていただろうな。」


あの場面を目撃することができたから俺は気づくことができたが、あんな場面に遭遇することができるのは極めて稀だろう。


「お兄ちゃんも騙されそうになってたの?」

「そうだな。俺も危うく騙されるところだった。まぁ彼女に好感をもっている男は多いだろうな。なんだっけ…『恋は盲目』だっけ?」

「うんうん。恋は怖いよね…私も一時期なりかけたもん。」

「佳奈が?」

「そうだよ?私だってもう中学生だよ?恋の1つや2つはするよ。」


佳奈に好きな人ができたなんて知らなかった。まぁ問題はそこじゃない。これからどうするかが問題だ。


「とは言えこれからどうしようか…髪を整えては見たものの、これじゃあほとんど変わっていないような気がするんだが…」

「お兄ちゃん…何を言ってるの?随分と変わったよ?一回鏡を見てきなよ。」

「えっそうなのか?」

「うん。今までは言い方悪いけど、ザ・陰キャって感じがしてたけど今のお兄ちゃんはかっこいいと思うよ。」


妹が辛辣だ…とは言えオシャレ好きな妹がそういうのであれば、俺も少しは変われたのだろうか…


「正直な所、お兄ちゃんのスペック良いと思うよ。例えば、スタイルかな。お兄ちゃんは自覚ないかもしれないけど、結構引き締まってる感じがしてすごく私は好みだよ。」

「そうなのか?」

「そりゃそうだよ。というか女の子は、基本的に引き締まっててかっこいい人が好みだよ。アイドルとかを見ればわかりやすいんじゃないかな?」


確かにクラスの女子が話していた好みのタイプの男子には、よくテレビなどでと称されるようなアイドルの名前が挙げられていた。そう考えればそれも間違いじゃないのかもしれない。


「それにね〜今のお兄ちゃんからは今まで感じなかった覇気があるというか…とにかく鏡を見てきなよ‼」

「本当?」

「もうさっきっからそう言ってるじゃん‼早く早く‼」


俺は佳奈に背中を押されて洗面所に向かった。洗面所には大きめな鏡があるからだ。

妹は俺を鏡の前に立たせると、自慢げそうにつぶやいた。


「やっぱり朱奈さんに頼んで正解だった‼お兄ちゃん自分の顔見て‼恥ずかしそうにそっぽ向かない‼」

「いや…自分の顔を見るのはやっぱり恥ずかしいと言うか…」

「お兄ちゃんは男なんだからくよくよしないで‼というか毎日自分で髪整えてるでしょ‼恥ずかしいもないじゃない‼」


妹にそう言われては俺も引けない。俺は恐る恐る鏡を覗き込んだ。鏡には黒髪でかっこいいアイドルのような人が写っていた。


「えっこれが俺?」

「そうだよ。いや〜朱奈さんやっぱすごいや‼」


俺は思わず自分の顔を覗き込んだ。なんというか…まるで自分が自分じゃないみたいだ。


「ねぇねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんはこれからどうするの?今日こうやって変わろうとしたのにはやっぱり理由があるんでしょ?」

「あぁ。さっきも言った通り、あの女とは別れようと思う。でも簡単に別れたら意味がないだろ?」

「お兄ちゃんはどうするつもりなの?」

「そうだな…あの女は告白した以上、俺のことを好きだという風に振る舞わなきゃいけないわけだろ?まぁそういう所から始めるかな…」


でも俺の中で最も効果があると思うのは…


「惚れさせて振る。これが一番あの女にとって効くだろ。今まで見下して嫌いだった男が急にかっこよくなってて、惚れたら振られるって…一番おもしろくないか?」

「おぉ…お兄ちゃんも悪だね。」

「はは。まぁそうだな。とは言え、嘘告してくるやつのほうがよっぽどやばいけどな。」

「それはそうだね。じゃあこれからもっとお兄ちゃんはかっこよくならないとね‼」

「うん?ああ確かにそうだな。かっこよくなる分には何も問題はない…ないよな?」

「そうと決まれば私に任せて‼お兄ちゃんの事超絶かっこよくしてあげるから‼」


俺は佳奈に振り回されながらも今日一日ひたすらに付き合わされた。

久しぶりに妹とこんなに長く話しをしていた気がする。

きっかけはどうであれ、妹とこんなに長く話しをすることができて俺は嬉しい。







作者の聖羅です!!

2話目をお読みくださりありがとうございます!!

今回の作品はどうでしたか?皆さんの貴重な意見を頂けると嬉しいです!!

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次の投稿は明日の7:15になります‼

是非見に来てくださいね‼

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