冒険者ギルド

 俺たちは、寝具などを片付けながら何をしようか悩んでいた。

「どうする、チェマク」

「どうするとは?」

 首をかしげるチェマクが可愛いのだか。

「この後のことだ!」

「知らん」

 おい、知らんって何!!

「街に戻ろうと思う。いいか?」

「ああ、構わぬ」

 俺たちは片付けを終え、街に向かった。


「街で何をするのだ?」

「ある場所に行きたくてな」

「ある場所?」

「行ってのお楽しみだ!ってやつだな」

 ふーんと言いたそうな顔でこちらを睨んでくる。


 門番たちに会釈をして、チェマクと共に宿屋を目指しながら街を歩いている。

「おいおい、勇者様が魔聖獣といるぜ」

「だよな」

 門番たちは俺たちのことを噂しているようだ。

 俺たちには聞こえないように言っているつもりなのだろうが、聞こえてしまう。

 それは、彼らだけではないようだ。周りにいる一般市民、ならぬ街の人たちも俺たちのことが気になるようだ。

「あれが勇者様!?」

「あれが勇者なわけないじゃないか」

「……そうだよな……」

「あれは、絶対に勇者だって!!!!」

 少年が大人たちよりも2、3倍大きな声で発した。

 それを止めるように、大人たちは少年の口を抑えて、俺たちの方を見て、苦笑いを浮かべた。

 あんたたちにとっては、勇者おれたちは何だと言うのだ。ヒーローとかではないのか!!

 どんな原理なのかはわからないが、頭の中にチェマクの声が流れる。心が読めますけど、みたいな超能力なのか?

「おい!!何だ、その顔は!!」

「……えっ!?」

「なんだ『えっ!?』って」

「声が頭の中に流れるから……お、お、思わず驚いた……だけ……だ」

 知らないとかおかしすぎるだろうと言いたげな顔をむけてきた。

 話を変えよう。

「……もう、帰るぞ……」

 嫌な顔なのは気になるが、納得はしてくれたようだ。


 俺たちは集団の声を聴きながら、冒険者ギルド前へやってきた。

 やってきた頃には、茜色の空になっていた。

 ドアノブが付いているが、開かないのだ。押しても、引いても。何かの細工が施されているのかと思うぐらいだ。

 ドアに関して悩んでいると、後ろから受付嬢と思うほどの美しい女性が来たのである。

「これは、こうするだよ。魔物使いさん」

 その人は、俺たちにやり方を教えてくれた。

 見事な手捌きだ。と思いたいのだが、すんなりと開いてしまった。

 魔法陣を展開させて、呪文を唱えた。

「私は仕事があるので失礼します」

 ドアの向こうに走っていってしまった。

 彼女は魔法でドアを開けていた。

 ドアを開けるための専用魔法でもあるのだろうか?

 ドアノブはただの飾りなのかもしれない。

 さて、ドアの向こうの世界に入るとするか。


 夕方にもかかわらず、酒をおっさん同士が飲んでいる。それを運ぶ受付嬢。パーティーでもしているかと思うぐらいの盛り上がり。

 俺が入ってきたら、空気がシーンと静まる。

 やはり、チェマクがいるからなのだろう。チェマクに視線がいっているような気がする。それを気にせず歩いていると、俺は受付に辿り着いた。

 まだ、視線が気になってしかたがない。

「この用紙に記入事項を書いていただき、提出をしていただきます」

 その記入欄には、

 名前


 ステイタス


 スキル


 魔法


 その他


 が書かれていた。

 俺は分かる範囲、記入した。


 名前・青葱静あおぎせい


 ステイタス・レベル60、剣1000、魔力9060、防御3000


 スキル・不明


 魔法・無自覚


 その他・なし


「あなた、お強いのですね。少々、お待ちください」

 紙を持って、奥に進んでいた。

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