門番・フェルスと再び

 チェマクと名乗る魔聖獣と共に過ごしている毎日。

 ある日は、魔獣まじゅうと呼ばれるけものを倒して、その肉を食って過ごした。

 また、ある日は、チェマクと共に魔法の特訓をして過ごした。

 そんな日が続くと思っていた、ある人が来るまでは。

「ハァハァ……青葱静あおぎせい……さま……」

 急いで俺を探しに来たのだろと思うばかりに息切れ状態をしている人が目の前にいる。

「なんだ!!何のようだ!!」

 フェルスや王様を見ていると、激怒してしまう。

 こいつは、門番・フェルス。目の前にいるやつだ。

「青葱さま……あなたに……用事があって……ここに来ました……」

 長距離走でも走った後ぐらいに、まだ息切れ状態が続いている。

「ガルルルルル……ガルルルルル!!」

 隣で威嚇をしているチェマク。

 俺1人で居る時は喋りかけてくれるが、他人が来たら喋らないようにしているらしい。

 魔聖獣だと、バレたらいけないようだ。この世界には、チェマクを含めて10体しか存在しないらしい。

「ふぅーはぁーふぅー」

 荒かった息を整えていた。

「なぜ、あんたがここにいる!!」

「久しぶりだな!青葱さま!なぜあの時、逃げたのですか?」

 あの時とは、ここに来る前に王に呼ばれた時のこと。

「謁見の間に行こうとしたが、嫌になって行かなかった」

 反抗期の子供みたいな答えだ。自分で言ったのだがな……。

「理由なんてどうでもいいので、今度こそは王様に会ってもらう!!」

 フェルスの怒る姿を初めて見たかもしれない。

金縛コンス!」

 フェルスは俺に手のひらを向けてそう叫んだ。

 動かない。いや、動かせない!?

「フェルス、お前は俺に何をした!!」

「動かないようにした。今度こそは会ってもらうからな!!」

「ガルルルルル……ガルルルルル!!」

 隣でチェマクは牙を出して怒ってくれている。

「何だ、その犬は」

 犬のことが気になるようだ。

「さあな、俺も分からん」

 ここは嘘をついた方がチェマクのためになるかもしれない。

「とりあえず、来い!!」

 警察が罪人を警察署に連れて行くような感じで、王の元へ向かった。

 暴れても捕まるのだから、大人しく従うのが正解なのかもしれない。


「先輩、お疲れ様です」目の前の門番がフェルスのことを見てこうべを下げてあいさつをした。

「おや?前に通った子ではないか」

 覚えていたのか……この門番。

 来い!と言わんばかりに、腕を引っ張ってくる。痛い痛い……

「では、失礼します。先輩」こうべを下げて自分の持ち場に行った後輩の門番。

「ああ、またな」後輩を見送って、俺を連れて謁見の間に再び向かった。





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