魔物と無自覚魔法

 お辞儀をされても……納得はいかないが、ようやく魔法が使える世界に来たのだから喜ぶ以外に何がある。

 周りは「なんで、私がこんな目に遭わないといけないのー」と悲しんでいる者や「はぁーーー!!」と怒っている者もいた。

 そんな反応を見せたあと、こっちをジッと見てきた。

「何で、俺が悪いみたいになってるんだよー!!」怒鳴ってみたものの反応は悪いようだ。

「あんたが、変な物を描いたからでしょうがー!!」とまた怒鳴られた。ぐうの音が出ない……変な物とは心外だなぁ。

『おやおや、仲間割れかな?』俺たちの会話を聞いていたのか、王様が問いかけてきた。

『その森には、魔物がうじゃうじゃといる。その魔物らを倒して。分からなかったら、目の前にある物で確認するように。では』

 プツッと王様は消えた。

 おいおいおい、待てよ!王様、俺らは異世界に召喚されて数分しか経ってないんやで。何が魔物を退治しろだ!!

「うわぁーーー」と周りが騒がしい。

 何が起きた!?それは、地獄でも見ているかのような残酷な一面そのものだ。

 何人かクラスメイトが噛みつかれ、血を垂らして、倒れている者。

 あとは、恐怖に怯えている者。

「グワァーーー」と獣の鳴き声が一帯に轟く。

 もう、魔物が来たのかよー

 てか、ぬしと思えるほどの大きい虎の魔物なのかよー

 どうしろって言うつもりだよー!

「ピコン」と目の前の画面に、パソコンのカーソルみたいな矢印が現れた。ここを触ってくれと言わんばかりに示してくる。

 そんなことをやられては、試しにやってみるか。

「ポチッ」と魔法とスキル欄を押してみた。

 目の前に火の球が浮かんだ。

 何で出てきた!?魔法もスキルも使えないはずじゃ……

 鳥の卵でも投げ出す勢いで、敵に向かって飛んでいった。

「ぐわぁー……」

 ドンと大きな倒れる音とともに、亡くなった。

 他の人たちはどうしているだろうか?また、辺りを見渡すか。

 見渡す青葱静あおぎせい。悲劇を目撃するである。

「マジかよ……38人召喚されていたのに、もう、俺を含めて10人も居ないぐらいだ」と言葉にしたいが、言葉に出来ない。恐怖がだんだん増してくるからだ。

『魔物を倒してくれたようだね。あらら……何人か倒れているね』王は、ニコッと知らないふりをして言った。

 これは、あんたのせいやで。

『こっちが召喚してしまったから、お詫びと言っていいのか分からないけど……復活してあげる』と先ほどとは違う空気感で伝わってくる。

 細くて野太い声で反省しているようだ。

 王様が魔法陣を浮かべさせた。その光は、先ほど倒れたクラスメイトの体を包めた。

絶回命ルークシュライク

 包めた光は消えて、倒れたはずのクラスメイトの傷を癒した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る