お前はもういらないと追放された俺、裸土下座でパーティー残留を乞う

不O to night

第1話

────アルカディア王国。大陸全土を統治する国の隅にある村民80人程度の小さな村、アトリ村。


その村唯一のパーティー【銀狼の秘槍】


少しだけ強引な時もあるが皆を導くたよれるパーティーリーダーの槍使いクライド


いつも真面目でやさしく、傷をいやしてくれる僧侶テルシア


酒癖はひどいが一度戦闘となれば無類のつよさを発揮する魔法使いフォリス


そして俺、自慢じゃないがランクの割にはナイスガイ、戦士ナル


これはそんな俺と仲間たちの物語だ



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「……っと、今日はクライドに呼び出されてたんだっけな……」


毎朝のルーチンワークの合間にふと昨日のウルフ討伐の事を思い出した。


昨日、ウルフの討伐依頼を終えたあと、神妙な顔をしたクライドから全員明日ギルドに来るようにと呼び出された。

理由は大体察しがついている。


昨日のウルフ討伐、俺がウルフの注意を引ききれずに詠唱中のフォリスに敵が行ってしまったのだ。


間一髪のところでクライドが倒してくれたが、あと一歩遅かったらあやうく命を落としかねないとても危険な状況だった。


「フォリスは気にしなくていいって言ってたけど……パーティーリーダーとしてはそういうわけには行かないんだろうな……」


仲間の命を失いかねない出来事が起こった以上、いくら田舎のなかよしパーティーと言えど、引き締めるところは引き締めなくては行けないことは理解できる。


「まあたしかに、本当に危ないところだったしな……」


俺自身も銀狼の秘槍の前衛として本当に申し訳ないとも思っているし、どんな叱責の言葉も受け入れるつもりだ。


「フォリスにも謝らないとな」


他の二人も同じくクライドから呼び出されているし、ギルドに行けば会えるだろう

俺はそそくさと出支度をしギルドへと向かった。


ギルドへ向かう道中、酒店が目に入った。この村唯一の酒店で、看板にはアトリ酒店と大きく書かれている。


普段はギルドで提供されている安酒ばかり飲んでいるからか、この狭い村に定住していながらまだ一度も入ったことのない店だ。


「少し値は張るだろうけどちょうどいい。フォリスへの菓子折り代わりに酒でも買って行くとしよう」


酒店の扉を開けると、アトリ酒店には寂れた雰囲気が漂っていた。

年季の入った木製の棚とホコリの匂い。床は古びた板貼りで、足を一歩動かすたびにギシギシと悲鳴を上げだす。


「ずいぶんボロいな……大丈夫かよこの店……」


「ボロくて悪かったね!」


「ヒィッ!」


店の奥からヌッと顔を出した老婆が怒号を発しズンズンとこちらに近づいてきた。


年の頃は80歳に近いだろうか。

腰はほとんど90度近く曲がり、眉間に刻まれた深いシワからは半世紀以上を

生きた力強さを感じる。


顔を見れば分かる。とてつもなく気難しい人なのだろう。気難しそうな顔をしている。

これから起こるであろう危機を脳内でシミュレートし、俺は先手を取ることにした。


「あ!あの!お酒を買いたいんですけど!どういうのがいいですかね!」


「なんだい客かい」

「買いに来たなら最初にそういわんか!」


「ハイ!スイマセン!」


「はぁ……で?あんたは何を飲むんだい?」


「あ、いえ、ぼくじゃなくて、友人への贈り物というか……お詫びの品と言うか……」


「じゃあそいつが何を飲むかいわんか!!」


「ハイ!スイマセン!」

「えっと……確かぶどう酒が好きだと言っていた気がします!」


「ぶどう酒かい……それならここだよ」

「ちゃっちゃっと選びな」


「えっと、おすすめとかは……」


「詫びの品ならこれ一択だね」

老婆は酒棚の一番上に仰々しく飾られた45年物と書かれたボトルを指差す。


「えっと……じゃあそれ一本お願いします……」


「はぁ……」

老婆はため息を付きながら店の奥から持ってきたはしごに登りボトルを取る。

「ラッピングもできるけど、どうする?2000ゴルドね」


「あ、大丈夫です……」


「なんだいケチなやつだね」

「ん、39,800ゴルドね」



たっか!高すぎだろふざけんなよこのババア

こちとらその日暮らしの貧乏戦士だぞ。下手に出てりゃいい気になりやがっていつもでもやったn


「あぁ?なんだいその不満げな顔は」


「イェ……ナンデモナイデス……」


「はいよ」

そう言って老婆はボトルを手渡してきた。

重い。ズシリと腕に伝わる重厚感がこのぶどう酒が40年物39,800ゴルドだと言うことをヒシヒシと感じさせる。

「ありがとうございます……」


「はい、まいどあり」

老婆はニコリと笑い、そのまま店の奥に消えてしまった。


俺はやり場のない思いをそっと胸にしまい39,800円を片手に店を後にした


「これでウルフ20体分かよ……」


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ギルドに着くと呼び出した張本人であるクライドの姿はなくかわりにテルシアとフォリスが所在なさげに長椅子に腰を掛けていた

「よっ、ふたりとも」

「ナルさん……おはようございます……」

「……」

テルシアはおどおどと挨拶をし、フォリスは無言でこちらを一瞥する。


「ところでクライドのやつはまだ来てないのか?」


「あっ……いえ……クライドさんなら今……」


「クライドなら今あっちで手続き中よ」


フォリスが指を指した方向に目をやると、真面目な顔をしたクライドが手続き用の書類にペンを走らせていた。


「手続き?ふ~ん……」

「あ、そうだ!それよりフォリス!ホレ、昨日は悪かったな」


俺は道中で買ったぶどう酒を差し出す。


「……なに?これ」


「酒だよ酒!昨日の詫びにな!」


「高かったんだぜ?39,800ゴルドだぜ39,800ゴルド」


「私ぶどう酒は飲まないのだけど……もらっておくわ」


「あっ……クライドさん……どうでしたか?」


クライドが手続きを終えこちらに近づいてくる。


「ああ、問題ない。無事に通ったよ」


「来てたか、ナル」


「今日はお前に言わなくてはいけないことがある」


「な、なんだよ改まって」


「……ナル、お前は追放だ」


「い、いまなんて」


「聞こえなかったのか?お前にはパーティーを抜けてもらうと言ったんだ」


「もうすでにメンバー解雇の手続きは済ませた」


「はは……冗談がうまいなクライドは……」


「冗談なんかじゃない」


「何度注意しても繰り返す遅刻、いつまでたっても返さない金。俺がお前にいくら貸したか分かっているのか?30万ゴルドだぞ」  


「それに一昨日は酔ってギルドの受付嬢にしつこく言い寄った挙げ句、それをたしなめた他のパーティーの連中を殴ったそうじゃないか」


「い、いや……それは向こうが……」


「はぁ……もういい」


「よくねえよ!大体そんな勝手に……!」


「今まで一緒にやってきただろ!?なあ、ふたりとも!?」


「……」

「……」


「テルシアはそれでいいのかよ!俺が抜けて!」


「あっ……あの……私、ナルさんのこと……ずっと前から生理的に無理で……」


「私も。あんたこの前、私達の着替えを覗こうとしてたでしょ。衛兵に突き出さないだけ感謝してほしいわね」


「話はこれだけだ」

「ま、ま゙……」

「ま゙っ゙でぐれ゙よ゙お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙お゙ぉ゙ぉ゙!゙」



「も゙お゙お゙お゙お゙お゙ね゙が゙い゙だ゙よ゙お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙!!!

ね゙ぇ゙だのむよぉぉお!おれらながよがったじゃんかよぉぉぉ!!」


「だ゙の゙む゙っ゙でえ゙え゙な゙あ゙あ゙あ゙あ゙!

お゙ね゙が゙い゙お゙ね゙が゙い゙お゙ね゙が゙い゙お゙ね゙が゙い゙」


「つーかミノタウロス狩ったのだってほぼ俺のおかげだったじゃん!!

じゃあなに?は?お前らあんときなんかしてた?

おれがひっしこいて戦ってんのにずぅーーっと詠唱!!

ばかじゃねーの?なーにが炎の精霊よ私を導き給えだよ寄生の精霊よ私に楽して金稼がせてだろバカ!!

てか何?お前ら知ってたの?知っててふざけんじゃねえよ

マジでよじゃあ酒返せよバカ、俺の39,800ゴルド返せよバカ!」


「な゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」

「だの゙む゙よ゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」」


「お゙ね゙が゙い゙だ゙よ゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙お゙ぉ゙ぉ゙

み゙ずでな゙い゙で゙ぐれ゙よ゙ぉ゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」


「お゙れ゙ごの゙パ゙ー゙ディ゙ー゙がら゙追゙放゙ざれ゙だら゙お゙家゙な゙ぐな゙っ゙ぢゃ゙ゔがら゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙」


「賃゙貸゙払゙え゙な゙ぐな゙っ゙ぢゃ゙ゔがら゙あ゙あ゙」

「お゙ね゙が゙い゙だ゙っ゙でえ゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙」



「ちょっ、ちょっとナル、みんな見てるから……」

「……ナル……すまないが受け入れてくれ。これからも銀狼の獅子団がうまくやっていくためには必要な決定なんだ」


「い゙や゙だ゙よ゙お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙

や゙だ゙や゙だ゙や゙だ゙や゙だ゙や゙だ゙!゙!゙ぜ゙っ゙だい゙や゙だ゙!゙!゙!゙」


「お゙ね゙が゙い゙だ゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙

お゙れ゙な゙ん゙で゙も゙ずる゙!゙な゙ん゙で゙も゙ずる゙がら゙ぁ゙!゙

ぱ゙ー゙でぃ゙ー゙追゙放゙じな゙い゙で゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!゙!゙!゙」


「きゃっ!ちょっと!やめて!やめてってば!」


「ぼん゙どに゙な゙ん゙で゙も゙ずる゙がら゙ぁ゙!゙!゙」

「靴゙だ゙っ゙で舐゙め゙る゙じお゙願゙い゙だ゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」


「お゙ね゙が゙い゙だ゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」

「土゙下゙座゙ずる゙がら゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!゙

裸゙で゙土゙下゙座゙ずる゙がぁ゙ぁ゙!゙!゙」


「ナル!いい加減にしろ!」


「ぐえっ!」


「……行こう。二人共」




ぐ……ぐそ……くそぉ……こんなことなら……こんなことなら……

こんなことになるんだったらパーティーの資金もっと使い込んどきゃよかった……


               ~fin~

     皆さんは清く正しく、高潔な魂を持って日々を生きましょう。

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