第13話 ありのまま一緒に……


交流会が終わり、家にスケボーを取りに戻ると、昼食も取らずに急いで家を出た。公園に着く頃には、彼女は既に待っていた。


「涼華……待ってた?」


彼女は麗嬢高校の制服を身に纏っていた。


「いや、待ってないよ。一時間早く来ちゃっただけ」


てへっとウインクを決めると、サラッととんでもない事を告げた。


「それを長時間待ってるって言うんだろ…」


そう呆れている俺を見ながら、彼女はマスクとキャップを取った。隠されていた髪がフワッと広がり、学校で見た涼華が現れた。


「今まで気付けなかったのは、マジでごめん!」


男だと錯覚するとは……。俺の目は腐ってるのだろうか。どうも居たたまれない気持ちになってしまう。


「うん、めっちゃ酷かったw」


予想通りの返答。しかし、涼華の方は既に許しているような、そんな柔らかい雰囲気を感じ取った。


「本当にすまんな……」


それでも俺は非を感じている。なので謝罪の言葉を付け加えた。しかし、涼華はそこまでの謝罪を求めてはいなかったようだ。すぐに話題を切り替えようとした。


「いや、もういいよ。こっちも騙す気は無かったことも理解して欲しい。それよりさ、女の子だと分かって何か印象変わった?」


纏っていた楽しげな雰囲気は少し変わり、真剣なものへと変化した。涼華は心の底まで見通すような視線を向けた。まるで嘘は許しませんとでも言わんばかりの態度。しかし、俺としても変に着飾る必要性を感じず、率直に思った事を伝える。


「うーん、特に大きく変わったことはない。——でもしいて言うなら、『王子様』みたいだなーって思った。」


『王子様』。今日も周囲の女子から沢山かけられていた言葉よな。確かに誰もが憧れるような存在感。そのカッコよさに他に表す言葉はない。


「…そ、そうなんだね……。やっぱそう思うよね……」


その返答に狼狽える涼華。急に子犬みたいにテンションが縮こまっていた。『王子様』という言葉に弱いのだろうか?まあ、俺が使いたい『王子様』の用法はちょっと違うけど。


「うん、俺が『王子様』みたいだなって。」


アイアムキングボーイ。リョウカの普段のオフな姿も見ているため、本人が『王子様』な部分もあればただの身勝手ポンコツみたいな属性も兼ね備えている部分も知っている。だからこそ、完全に涼華が『王子様』と表現されるのはなんか違う気がする。それでも全体的に見てカッコいいのはズルいけど。


「え?えぇ?!」


素っ頓狂な声で驚くリョウカ。


「だってそうだろ。お転婆な涼華姫様を俺が何やかんや初めからスケボーを指導した。そうやって頑張って支えた結果、ここまで仲良くなったんだから。俺カッコいいだろ?王子様を名乗るのに最適だ。」


ということで、レイジョウ女子学校からの普段の涼華に対しての評価を真っ向から俺は否定した。言い過ぎた点もあったなと段々と不安感も積が……。自分の意見を淡々と述べただけだ。涼華がたとえ怒っても仕方ない、それも甘んじて受け止めよう。


「………ふふふ、冗談が大好きなんだね。」


しかし、涼華の方は否定するわけでもなく、ずっと嬉しそうな表情をこちらに向けていた。


「俺は冗談を言い合える仲が一番居心地が良い。ダサい所もカッコいい所も共有できるのが最高の友達ってもんだ。」


言いたいことが思うように言葉に出てくる。


「うん、ケイト君。カッコいいよ。これまで生きてきた中でここまでカッコいい人は初めて見た。これからも仲良くしようね。」


心がグッと温まる言葉をかけられて、一瞬変な気持ちになった。


「冗談もほどほどにしろよ~。ダサい奴に何を言っても美味いものなんて出ないんだからな。」


勿論、俺は本質的にダサいポジションである。異論は認めない。


「すぐ否定的にならないでよ『王子様』?本当にカッコいいと思ってる。」


「そ、そうか。ありがとう。」


「ふふふ( *´艸`)」


真正面から『カッコいい』と言われて少し狼狽えてしまった。俺は顔をパタパタと仰ぐ。熱いな、もう夏だからか。顔が赤いのも夏の日差しのせいだ、うん。決して、人生で常に『ダサい』としか言われ続けておらず、初めて『カッコいい』と言われて嬉しんでいるわけではない!そうではないのだ!


「あとさ、ケイト君」


「……ん?急にまた改まってどうしたんだ?」


『カッコいい』の余韻に使っていたところ、名前を呼ばれ不意に我に返った。そしてリョウカの顔を見つめる。すると、それは何ともこそばゆく言い難いような表情をしている彼女と目を合わせることになる。リョウカは言いたいことを口に出す決心が着くと、瞬き一つ置いて話をつづけた。


「文化祭。夏休み明けにあるんだ。来てくれないかな?」




「それは嬉しい誘いだな。楽しませてもらうぜ」




その後は、流れで公園のベンチに座り、涼華と会話を続けた。時折、笑い声が混じり合い、互いの間に少しずつ距離が縮まっていくのを感じた。スケボーはできなかったけど、心に残るような最高な日だった。












~~~作者より~~~


こんな日は~君と~二人で歩こう~♪byこんな日は

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